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【12】日ソついに開戦~8月11日~

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そうした間も戦況はわが方の不利に終った。
夜に入って防空壕で自家発電の灯りを頼りに作戦命令の印刷や壕内長期滞留のための諸施設の整備に当たった。

8月11日、月岡参謀から両角少尉に「本日中に部隊の配備調整」の命があり、同行することになった。

両角少尉は開戦と同時に原隊復帰の不能となった自動車下士官学生を動員して臨時自動車隊を掖河に編成し主として弾薬輸送のため第17野戦兵器廠へ派遣する事になった。

臨時自動車隊の貨物車1台を準備し、先ずは最寄りの愛河第17野戦兵器廠へ ―ここはまだ平常の姿で、唯当面の弾薬の整備、輸送に忙しい。
榊原大尉は眼鏡の奥から眼を輝かせ、長くて黒いあご髭をしごきながら「いざとなったら全部爆破してそれで終わりだ。」と言って豪快に笑っていた。


東へ―四道岺へ。第126師団の戦闘区域だ。
付近一帯は平陽より移動まもない第126師団の師団砲兵部隊がしんがりで、輜重部隊がその右後方に展開し放列を布いたり弾薬の集積に大量に立昇る炊煙の中で裸の兵が右往左往している。

丁度いま、昼食時である。
耳の注意を東に向けると、馬頭石方向遥かに砲声が著しい。
一条の幹線道路を擬装を施した自動貨車が連続疾走する。
乗車の兵はみな裸だ。エンヂンも焼け付くであろう。砂埃が遥か彼方まで続いている。
おそらくムーリン方面へ弾薬を運搬しているのであろう。

われわれの車は右にそれて草原を次第に登って行く。
滻木地帯が入るところで車は頓挫してしまった。
折よく牡丹江の第17野戦自動車の田中曹長運転の戦車が通りかかり、両角少尉と何か打合せしていたが、その試運転戦車に同乗させてもらうことになった -やけに戦車にしがみついて20分程進むうち、滻木は次第に深くなり道らしきものを見失ってしまった。

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