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[ねこのピカ] ピカピカ日記/あとがきのようなもの

8月6日に愛猫ピカを亡くしてから、
Instagramで日課のように
毎日投稿していた「ピカピカ日記」の
更新も出来なくなり
Instagramを開くのも辛く、
でも言葉を綴らずにはいられなかった。

気持ちのやり場もなくリハビリのように
しばらくの間つけていた手記。

自分の為に書き留めておいたものだから
この下書きにずっとあったのだけど、
文章を成仏させるべく、公開しておきます。

8/7(土)
今日はピカのお見舞いに来る予定だった
姉家族が、予定を変えず来てくれた。
2020年の1月以来、1年半以上ぶりに会う姉、義兄、
そして遠慮なくにぎやかな姪っ子甥っ子達に
沈んでいた気持ちも少し明るくなった。

皆、ピカのことを可愛いねとなでてくれて、
でも、生きているピカに会いたかったと
とても残念がっていた。
わたしも生きてるピカに会ってほしかった。
ピカはお花好きだったでしょって、
カラフルな花のアレンジメントを贈ってくれて、
姉と義兄は手紙も書いてきてくれた。
ピカ、良かったね。
姪っ子の塾があるので、1時間ほどいて帰って行った。
それでも来てくれたのは、落ち込んでいるだろうわたしを
心配してのことだろう。ありがたい。

Instagramにピカの訃報を投稿した。
いつもコメントやいいねをしあっている
インスタのお友達が、続々とコメントをくれた。
猫が好きという共通点でつながっている
会ったこともない人がほとんどだけど、
猫が好きという共通点は、強い。
親身なコメントで、いつも応援し励ましてくれる。
投稿をみた友人もすぐにLINEをくれた。
共にピカのことで悲しみ、わたしを気遣ってくれた。
いち早くこうして言葉をかけてくれるのは、
すごく嬉しいし心強いしありがたい。
今日は一日中、泣いて泣き止んで、また泣いて。

そしてピカを冷やしておく為に昨晩から
エアコンの設定温度を18℃にしていて、
室温計も常に20℃以下をキープしている。
とにかく寒い。
ボアのパーカーに長ズボンで
真冬の格好をしているけどくしゃみが出る。
頭がガンガンと痛いのは、
泣きすぎたせいか、寒さのせいか、寝不足のせいか、
もはやわからない。

生きていれば、今日で1歳5ヶ月だった。
明日はピカの葬い。
しっかりお見送りをしたいと思う。

羽毛布団を首まですっぽり被って寝る。
ピカ、おやすみ。


8/8(日)
そんなに早起きしなくていいのに、
四六時中目が離せなかったピカとの生活で
浅い眠りが癖になってしまったのか、
朝5時過ぎに目が覚める。
ピカ、おはよう。
ピカは寝てるね。

朝起きた時は晴れていたけど、
その後またすぐに大雨になる。
台風が来ている。

荼毘の前に、やることがある。
手紙を書くことと、花を買うこと。
荼毘の時に添えられる手紙は
A4一枚分までと言われていたので、
便箋1枚に収める。
もし制限が無かったら、
キリがなくて書き終わらなかっただろうから、
かえってよかった。
でも文章だけじゃ足りなくて、
半分に折った便箋の裏に
思いつきでピカとわたしのイラストを描いた。
抱っこが嫌いなピカは、
わたしの顔を手でグイッと押すんだよね、と
思わず思い出して笑いながら、たのしく描いた。
最初はペンだけのつもりが、色鉛筆で塗り始め、
熱中して描いていた。

近所の花屋さんへ行ってきた。
今の家に住んで最初に見つけた花屋さん。
お店の人が覚えているかはわからないくらいの頻度で
たまに花を買いに行っていた。
この花屋さんには猫がいる。
荼毘の際に添える花は3輪までだけど、
ひとまずはわたしからピカへの花束。
わたしのピカのカラーイメージ、
イエローと水色をベースに選んだ。
猫のための花だと告げて、お店の女性としばしおしゃべり。
お店の看板猫さんも、実は猫エイズで治療していたという。
今は15歳だというから、長生きしていて、よかったね。
看板猫さんは、大きな声で、にゃあ〜と鳴いていた。

姪と甥たちへのお菓子を買って、帰宅。
マンションのある方へ交差点を渡る時、
強風に吹かれて傘が逆さまになって壊れた。

昼を過ぎて、すっかり雨も上がった。
14時ちょっと前に姉たちがマンションに到着。
姪と甥が手紙を書いてきてくれた。
猫が大好きな姪は、イラストたっぷりの手紙。
そして甥っ子は、なんと絵本を書いてきてくれた。
姉家族の家でも猫を飼っているのだけど、
ピカとその猫が一緒に季節をめぐるイベントをして、
冒険するという物語。
挿絵と全部の物語制作を5歳の甥っ子がしたという、
24ページにも及ぶ超大作だ。
ピカに姪っ子の手紙と甥っ子の絵本を読み聞かせてあげた。
5歳児の想像の中では二人が一緒に仲良く楽しんでいた。
一度も会えなかった2匹だけど、
こうして物語の中で出会えたことが、
わたしもすごく嬉しかった。

その後、ピカを霊園に運ぶための準備。
後ろ足をピンと伸ばしたままにしてしまったため、
最初に想定していた箱には入らず、
Amazonの段ボールにピカを入れた。
箱に入るのは好きだったから、
ちょっと運ぶ間だけ、許してね。
準備しているとき、姪っ子に
「ピカの毛切り取らなくていいの?」と聞かれた。
ピカの毛はブラッシングで相当溜まっている。
「いっぱいあるからいいや」と言った。
強いていうなら猫のヒゲは超幸運アイテムらしいけど、
ヒゲも前に拾ってるしな。
ピカのヒゲと眉毛は抗がん剤でほとんど抜けてしまった。
最後に残った左頬の長いヒゲが、
最後まで病気と闘って頑張った証、勲章のようで、
取ってしまうのはピカに申し訳なかった。
なので、結局そのままにした。

出かけるときには、雨は完全に止んでいた。

お寺の一角にある動物霊園は、
竹林に囲まれた静かなとてもいい場所だった。

最初に待合室のような場所に通され、
ピカを用意された籐籠に寝かせた。
待合室と言っても、壁には梵字の額縁がかかり
テーブルには立派な位牌の台が設置されていて
ここで何か儀式ができそうな厳かな部屋だった。
係の方は流れの説明の後に一旦退席し、
家族だけで最後の時を惜しんだ。
写真撮影などもここが最後だという。
みんなで順に線香をあげて、ピカを撫でた。
仏様の前で横たわるピカを前に、
わたしも朝書いたピカへの手紙を、声を出して読んだ。
ピカに聞こえるように。
いい手紙だね、と姉が褒めてくれた。
読み終わったとほぼ同時に、係の人が戻ってきた。
もう移動になるらしい。
花束の中からピカの荼毘に添える花を3輪選んだ。
ひまわり、カーネーション、デルフィニウム。
そして、ピカの好きだったおやつも。
小袋のカリカリのおやつと、煮干しをあげた。
煮干しは特に好きで、喉につかえながら食べてたっけ。
でも、なぜか頭の部分だけは嫌いで、
ペッと吐き出すこともあったな。
その時のピカの顔がワルい顔してて、
なんで出すのーって笑ったっけ。

そこから1分ほどにある荼毘の場所は、
人間のそれとほとんど変わらなかった。
男性が、丁寧に挨拶をしてくれた。
ピカに触れられるのはこれが本当に最後。
頭を撫でたが、いくら撫でても撫で足りなかった。
時間はすぐに来る。
係の男性が、籠に寝ていたピカを、丁重に台に移した。
花と、わたしの手紙と、おやつをピカの頭の右上に並べた。

そして、とうとう本当のお別れだ。

ピカの乗った台車が、火葬場の中に入っていく。

いやだ!!!!

「ピカ、行かないで!」

思わず泣きながら2、3歩駆け寄ったが
係の人は手を止めることなく、
そのままピカは中に入っていった。

言った後すぐに後悔した。
ちゃんと「いってらっしゃい」って
見送ってあげなきゃだめだ。
ピカが心配するから。
そう呟いたわたしに、姉と姪っ子が「そうだね」と言った。
でも、笑顔で見送るなんてやっぱり無理だ。

荼毘にかかる時間は1時間〜1時間半ほどと言われ、
最初の部屋とは別の建物の、広い畳の間に通された。
家族ごとにテーブルと座布団がありスペースが分けられていて
お蕎麦屋さんの座敷みたいな感じ。
コロナ対策でこの部屋への入室は一家族4名までなので、
義兄だけは外で待つことになった。
ここで、改めて住所やペットの名前などを紙に記入し、
骨壺入れと風呂敷の色を選ぶなどした。
骨壷入れの色はシルバーかゴールド、
風呂敷の色は、山吹、赤、ピンク、緑、紫だったか。
なぜかものすごく迷ってしまったが、
シルバーと山吹色にした。
ペットボトルのお水を出されゆっくりとしていると、
姪としゃべっていた甥っ子が、突然泣き出した。
「骨になっちゃうの嫌だって」姪っ子が説明してくれた。
甥っ子は、さっき見送ったピカが、
焼かれて骨になることを理解していなかったのだ。
それをいま知って、「ピカがかわいそう〜」とわんわん泣いた。
泣き止んだ後も、その後何度か思い出してはぶり返し泣いていた。
荼毘が終わり、再び収骨で呼ばれた時も、泣いた。
そうだよね。
分別がついた大人は「仕方ないんだ」と割り切ろうとするけど。
焼かれちゃうなんて、嫌だよね。
わたしだって、嫌だ。
5歳時の素直で純粋な気持ちに触れて、
切ないような、嬉しいような気持ちになった。
荼毘が終わって、台車が引き出されると、
そこには骨だけがあった。
手紙も花もおやつも、その灰すら跡形もなくなっていた。
ピカのふわふわな毛も、丸い目も、肉球も、
何もかも、嘘みたいになくなっていた。
当たり前だけど。
一瞬言葉がなかった。
生前のピカとはあまりにかけ離れていて、
目の前の骨がピカのものだというのが、にわかに信じられなかった。

収骨も、人間と同様、丁寧に行われた。
頭蓋骨と喉仏を避け、二人で箸を使って一つの骨を拾った。
まずは、わたしと姪っ子。
続いて、姉と甥っ子。
そして義兄と甥っ子。
一巡した後は一人ずつ順に繰り返し、最後はわたしが。
そして、係の人が脇によけていた頭蓋骨と喉仏を、
丁寧に遺骨の一番上においた。
残った小さな骨のかけらも、すべて集めて、
骨壷の中に収めてくれた。
収骨が終わって外に出ると、
空には少し日差しがのぞき始めていた。

ピカのお骨をわたしが持ち、係の人に案内されながら、
動物の供養棟へ。
お堂の仏壇の前に置き、全員で順番にお焼香をして、
全ての儀式が終わった。
最後に、先ほどわたしが選んだ山吹色の風呂敷で
骨壺入れを丁寧にスタッフの方が包み、渡してくれた。

霊園のスタッフはとても丁寧に対応してくださり、
最後まで嫌な思いをすることもなく式は終わった。
ここにして良かったと思った。

遺骨を大事に抱え、車に乗り込んだ後、
昔わたしと姉が住んでいた家の辺りが近かったので
せっかくなので少しまわり道して帰ろうということになった。
大人たち3人は「懐かしい!」と盛り上がり、
気づけばピカの遺骨を抱えて1時間ほどドライブしていた。
子供たちが飽きてきた頃、マンションについた。

こういう時でなければ皆で夕飯でも食べに行けたのだろうが、
お菓子とお茶だけ出した。
19時近くまでいて、姉家族は帰って行った。
夜、実家の母から電話があって、無事に終わったことを報告した。

とにかく、無事に追えられてよかった。
何気なくテレビをつけたら、オリンピックは閉会式だった。
ああ、終わっていくんだな、と思った。
ピカと一緒に、開会式を観たなと思い出した。
テレビを観ながらぐったりとベッドに横になり、
気付いたらそのまま眠っていた。


8/9(月)
朝目覚めた時の喪失感。なんだこれ。
昨日までは、目覚めると、ピカがいた。
2度と目を覚まさなくても、ピカの体が確かにそこにあった。
ピカをしっかり見送らなくてはという責任感もあった。
最後まで悔いなくやり終えたという安堵感もあった。
でも、今朝目覚めた時の、この何の気配もない部屋。
急に言いようのない寂しさが襲った。

朝から、ずっと、スマホのピカの写真を見ていた。
見ていたら、そうだ、写真を飾ろうと思い立ち、
いくつか写真を選んでプリントしに行った。
フォトフレームもたくさん買ってきた。

帰って、写真をフレームに入れて、
ピカのお骨の横に飾った。
飾りきれない写真もキャットウォークに並べて置いた。
なんだかすごく満足した。


8/10(火)
朝目覚めて、骨壺を見て、おはよう。
昨日ほどの辛さも感じず、こうして少しずつ、
慣れていくのだろうと思った。

午前中、チャイムが鳴った。
なんか頼んでたっけ?と思いつつインターホンに出ると
「〇〇様にお花のお届けものです」と。
え、誰からだろう?
玄関のドアを開けて花を受け取り伝票を見ると、
なんと通っていた病院からだった。
白と紫を基調にアレンジメントされた花は
とても可愛かった。
なんて思いやりのある病院だろうと、とても嬉しかった。

午後から、ピカの写真を追加でプリントしに行った。
フレームも追加で購入した。
ピカの水飲みのお皿ももっと可愛いのが欲しい、
花を飾る花瓶ももっと違うのないかな、と
相変わらずピカの買い物をしている。

帰宅して昨日と今日で買ってきたフレーム7個を
全部使って写真を飾った。
トイレにも、キッチンにも、ピカの写真を置いた。
たくさんのピカに囲まれている。
でもやっぱり足りない、圧倒的に足りない。


8/11(水)
ピカがいないのに
ただただ時間と日数だけが過ぎていく虚しさ。
気持ちに波があると思った。
昨日はちょっと平気になった気がして、
こうして少しずつ哀しみも寂しさも薄れていくのだと思った。
でも、こんなに心が痛い。とても辛い。
もう5日も経ったのかというのと
まだ5日しか経ってないという感覚。
ピカがいなくなってからの毎日は、長い。
でも、短い。

いつも使っていたグラスを手が滑って落としてしまい割った。
あ、やってしまった、と思うと同時に
でもこんなの割れるくらいのこと、
ピカのことと比べたら…と頭をよぎる。
このコップなら、割れたってまた買えばいい。
でもピカの命はかえってこない。
しばらく割れたグラスの破片をぼーっと眺めながら、
そんなことを思う。

今日になって、違毛を取っておけばよかった、と
すごく後悔した。
ブラッシングした時の丸まった毛じゃなくて。
10円ハゲでごそっと抜けた毛じゃなくて。
大好きなピカの、ふわふわの胸の毛やお腹の毛を、
最後まで頑張ったピカの体にあった毛を、
最後のピカの毛を、
残しておけばよかったと、今更ながらに後悔した。
お骨が残るし、写真も残るからいいと思っていた。
でも、わたしが触れていたピカの痕跡は、
骨でもなければ、温度のない写真でもない。
大好きなピカのふわふわな体だった。
もう戻ってこないピカ。
抱きしめられないピカ。
そう思うと哀しさと虚しさが襲ってきて
どうしようもない。

8/12(木)
今日は、初七日だ。
特に何をするというわけでもなかった。
とにかく、今日は出かけずにずっと家にいた。
ピカと一緒に過ごそうと。

8/13(金)
お盆の初日。
動物だからお線香は不要だと思っていたのだけど、
帰省して実家のお墓参りできない分もあるからそれも兼ねてと、
デパートにお線香を買いに行った。
鳩居堂で買った。
いろんな香りのアソートの線香があって気に入ったけど
店員さん曰く、それは線香ではなく
お香に近いタイプの線香とのことだった。
形だけだから、これでもいいかなと思いつつ、
やっぱりちゃんとしたお線香も買うべきか、と
結局「ちとせ」という名前の線香も買った。

花は、まだあるから買わなかった。

帰宅して、お線香をあげた。
ピカのぶんと、実家のお墓のぶん。
久しぶりのお線香の香りっていいなと
調子に乗って立て続けに3本も線香をあげたら、
部屋が煙たくなって、ちょっと頭が痛かった。

8/14(土)
お盆中日。
ピカは言ってもまだ四十九日前だから、
お盆とは関係なくまだ此処にいる。
新盆は来年。
雨が凄い。
また各地で災害の危険が高まっている。
異常気象というけれど、
地球が変質してるのはもう、否めないだろう。
なんとなく、本当になんとなく、
もう何年も前に全巻買ったまま読まずに本棚に並んでいた
松本大洋のSunnyを読み始める。
児童養護施設の話だったのか。
ひとまず3巻まで。

8/15(日)
朝、ベッドの横にピカの毛が落ちてた。
どこからともなく、出てきたみたいだ。
今までどこに隠れてたんだろう。
なんだか嬉しくなって写真をとった。

とある知人から、
今日電話で話さない?
落ち込んでそうで心配で、というLINEがきた。
そんなこと聞かずに電話くれたらいいのに、
と思った。
「落ち込んでそうで」とか言わずに
今日電話しよう!と言ってくれたら。
むしろただ電話かけてきてくれたら随分助かるか。

だって、聞かれたら、
選択肢を求められたら、うーん、となる。
考える頭のキャパシティがない。
ああ、落ち込んでるから元気づけたいんだろうな、
話したら元気出さなきゃいけないのかな、
とかも考えてしまって。
なんと答えたらいいのかわからず悩んだけど、
また今度にしようと返事をした。
話したい気持ちはあるけど、
落ち込んでるのは確かで、だからごめんねと。
気持ちはありがたいと思って送った。

するとその返信で
「落ちる時はとことん落ちるべし」と
言われて、言葉を失った。
え、それってこういう時に言う言葉?
失恋したとか、仕事で失敗したとかじゃないよ。
家族のように思っていた、
大事な、ペットが亡くなったんだよ。
落ち込んでるの心配してたんじゃないの?
今よりもっと落ちろと…?
と言うのはさすがに卑屈だけど、
でも。
それ、もし亡くなったのが
人間だったとしても言うのかな?
ペットだからと思って言ってるのか、
関係なく端からそういう感覚なのか、
どっちだとしても私とは感覚が合わないかもな。
これって、わたしがおかしいのだろうか?
悶々としてしまった。

猫のいる花屋さんに花を買いに行ったら、
ドアに張り紙があって
今日から火曜までお盆休みだそうだ。
雨だしもうひとつの花屋まで行くのも面倒で
そのまま帰宅した。

Sunnyの続きを読み終えた。
星の子学園のおじいちゃん園長先生が言ってた。
以下引用。

「時間」いうんは、ホンマようできてるてワシは思う…
とどまるゆうことがないさけな。
どんだけ楽しいときも、
どんだけ悲しいときも、
ずっとそのままいうわけにはイカン。
今のママがずっと続くことはないんやな。
これは救いやとワシは思う。

8/16(月)
今日はお盆の送り火。
何もできない分、
お盆の締めくくりにやっばり花が欲しくなり、
もうひとつの花屋へ。
この花屋はいつもラジオがかかっている。
以前行った時にわたしも毎週聴いている
「爆笑問題の日曜サンデー」がかかっていたので、好印象。
今日はスカロケがかかっていた。FMも聴くんですか。
変わった縁取りのある
ピンクと黄色のカーネーションを1輪ずつと、
一見グリーンのような花を買った。
帰宅して水揚げしたあと飾って、お線香をあげた。

それから録画していた爆笑問題のテレビ番組を観ていたら
「ミャウエバー」という商品があることを知って、
思わず調べてしまった。
ネコ型ロボットというかぬいぐるみというか。
発売されたばかりだけど大人気だそうだ。
重さも体温もあって、なでるとゴロゴロいうらしい。
調べると毛色は黒とグレーがあって、グレーは売り切れていた。
あったら買ってしまっていたかもしれない。


8/17(火)
今日も雨。先週からずっと雨。
姉からもらった花を花瓶に生け直した。
ずっと天気も良くないし、
相変わらずのパンデミック。
暗いニュースばかりが続いていて、
いろんな不安要素で気分が沈む。
どん底な気分でもう今夜は寝ようかと思いつつも
結局眠れずいつもの深夜ラジオを聴いていたら
そのトークに心が救われた気がした。
雑多な世間話とあえての軽い笑いが主軸の深夜ラジオの中で、
時折哲学的なことを熱っぽく語るこの人がわたしは好きだ。
今週この話が聞けてよかった。
ピカの名前の由来にもなっている人だ。


8/18(水)
朝、外がとても眩しい。久しぶりの夏の空。
また、ふわふわなピカの毛が床に落ちているのを見つけた。
「ピカ、出てきたの〜」と言いながら拾って、
ピカBOXに入れた。
確か100円ショップかどこかで何気なく買った木箱だ。
他の用途で使うつもりで買ったが大きさが合わず、余っていたけど
ちょうどいいので、以前からピカの抜けた歯とかを入れていた。
ふと木箱の蓋に書いてある「RESTFUL DAYS」の意味が気になる。
スマホの翻訳アプリで調べたら
「Restful」は「安らかな」という意味だった。奇遇にも。
「安らかな日々」か。
ピカは今そうだといいな。いや、きっとそう。
今日は空が明るくて、それだけで少し気持ちが和らいだ。
暗いトンネルの先の光が少し見えたような。
わたしはなんでピカのいない日々を送っているんだろう。
ピカがいない無味の毎日が、ただただやってくる。
朝起きるたびに、またピカのいない朝が来てしまったと虚しくなった。
でも、天気がいいと嬉しいと思えるし、
ラジオを聴いて笑える。
こんなふうにして、日々を生きていくんだろう。

8/19(木)
洗濯機のほこり取りネットを掃除しようとしたら、
ごっそりとピカの毛の塊がとれた。
こんなとこにもいたんだね。
ふいにこうして現れるピカの痕跡を見つけるたびに、
うれしくなって、かなしくなる。

8/20(金)
今日もとてもよく晴れた。
ピカピカの空は、ピカの空。
今日のお昼過ぎくらいに、ベランダを見たら、
アブラゼミが落ちていた。
裏返ってバタバタしていたので、ティッシュでそっと掴んで
ベランダの外に向けて力を緩めると、空に飛び立っていった。
まだ飛べる元気があったんなら、助けてあげられてよかった。
貴重な時間をこんなところで過ごしたらダメよ、
もう戻ってくるなよと思った。

そして3時間後。
ベランダからジジジジと音がしたので見ると、
またアブラゼミが!
今度は側溝のエアコンの排水に落ちて裏返っている。
違うセミ?それともさっきのセミ?
テイッシュで掴んで上を向けたけどなかなか飛び立たない。
羽が濡れているから乾かしたいだろうと、
ベランダの柵のそばに下ろした。
しばらく、じっとそこにいて、ゆっくりじりじりと歩いていた。
やっぱりさっきのセミだ、と思った。
勝手に確信した。
そのセミが他人に思えなくて、
部屋に戻ってからもなかなか飛び立たないセミを窓越しに見ていた。
気になるので、数分後またベランダに行って、
自分でもなぜだかわからないけど
「ピカなの?」とセミに話しかけていた。
しばらくセミをじっと見ていたけど、
セミもなんだかこっちを見ているようで。
そして、ふいに、パッとそこから落ちるようにして
セミはいなくなった。
思わずベランダから下を覗いたけど、
姿は見当たらず、どこに行ったのかはわからなかった。
なんでピカのことを書いてるnoteなのに
セミの話をしているのかというと。
こんなこと思うのは変かもしれないけど。
ピカが会いに来てくれたのかなとか、
願望の妄想でも、思ってしまうね。

8月21日(土)
今日もいいお天気だった。
朝から妹から電話がきて
久しぶりに1時間ほど長電話。
ピカの話題に触れたとき、
全然そんなつもりなかったのに、
涙が出て来た。

8月22日(日)
今日もすこし曇っていたけど、
雨もなく明るい1日だった。
空が明るいと、気持ちが安定する。
ピカがいなくなってから、
空の様子ばかり見ているな。

今日は、メモリアル用のキーホルダーに、
ピカのお骨を入れることにした。
おとといには届いていたのだけど
なんとなく、ゆっくり土日にやりたいなと、
タイミングを見計らっていた。今日だ。
骨壷入れを慎重に水平に棚から下ろし、
外箱の蓋を開け、
そして骨壷の蓋を開ける。
蓋を開けるのはあの日以来だったから、ドキドキした。
思ったよりも白くはない、ピカのお骨が現れた。
キーホルダーの容量が小さい割に、
意外と一個の骨は大きくて、
入るサイズの骨を探すのに苦心した。
一旦大きい頭蓋骨と顎、そして喉仏の骨を
裏返した蓋の上に移動して、
下にある細かい骨を探る。
なんとか入るサイズを見つけた。
大きい方のには、
骨、ブラッシングの時に集めた毛を入れた。
小さい方には、
骨、そして爪を入れた。
これを持ってれば、いつでもピカと一緒だね!

日が沈むのは物悲しく不安な気持ちになる。
でも大丈夫。また朝は来るから。

今日は満月だった。
すごく明るくて、綺麗だ。
そういえば、
ピカをお迎えに行った日の夜も、
満月だったな。
いや、完全な満月だったかはわからないが、
丸い月が出ていたのを思い出した。

夜、フジロックの配信を観た。
電気グルーヴ。
ものすごくファンって訳でもないけど、
ピエール瀧さんはかなり好きな
ラジオパーソナリティの1人だった。
ソファに座って観ていたけれど、
気づけば上半身でリズムをとっていて、
たまらず立ち上がって部屋の中で踊った。
今、ピカがいたら…
私を不思議そうにじいっと見てるだろうか、と想像した。
何やってんの?って顔して。
ベッドの上か。それともソファか。
床でピカと一緒に踊るのも、想像の中なら自由だ。

ピカも一緒に踊ろう!
わたしは昼に作ったお骨キーホルダーを
手に取り、踊った。
中でお骨がカラカラ弾むのが聞こえた。
たった一人、マンションで、
猫の骨を持って踊るわたし。
何やってんだろうね。
なんだかおかしくなって笑った。
ピカ、おかしいねー!たのしいねー!
何も考えず、ただ、リズムに身を任せる。

悲しかったことも、この先の不安な事も、
踊っている今は何も考えられない。
手に持っていたキーホルダーをテーブルに置いて
無心で踊った。涙が出てきた。
泣きながら笑いながら踊った。

最近はラジオを聴いてばかりで
音楽を聴いていなかった。
でも、音楽ってすごい。
わたしは、
言葉の力を信じている、大事にしている。
その代わり
言葉で傷付くことも多い。
たくさんの言葉を尽くしてもできないことを
音楽は、一瞬でやってのける。
理屈じゃないところで、違うアプローチで、
わたしを救ってくれた。
やっと。わたしは大丈夫だ、と思えた。