夜行バスや鈍行列車は僕たちに何かをする時間を与える
時間はお金で買え!
という人たちからすると、旅費を浮かせるために鈍行や深夜バスを使う人の考えは理解できないかもしれません。
確かに少し値段が上がるぐらいならスピード重視で何事も進めたほうがまず間違いありません。
ただ旅行に関していうと、もっというと移動に関していえば必ずしもそうではないです。
むしろ遅く移動することで時間の濃度が濃くなっていくのが移動の醍醐味です。
長崎の20歳
ひょんなことで知り合った長崎の青年がいた。
彼は長崎から東京間の移動は必ず夜行バスを使うという。もちろん旅費を節約するためだ。
長崎から東京行きの夜行バスは出ていないので博多駅までまず向かう。その後に15時間ほどバスに乗ることで東京に向かうことができる。
飛行機使えよ! LCCとかあるしさ
という意見はもっともなのだが、旅費を削るためだと言われればしょうがない。
でも彼はそれ以外にもう一つ重要な目的を教えてくれた。夜行バスを使う目的だ。
窓の外をずっと見ています。世界が見たいです。
彼が初めて夜行バスに乗って東京にいく時、隣には母がいた。
彼は母に頼んで窓際に座らせてもらいずっと窓の景色を眺めていたそうだ。
とはいえ15時間の道のりなのだ。
途中眠くもなる。そこまで代わり映えしない景色に退屈するはずだ。
でも彼は15時間興奮しっ放しで窓の外を見続けていたらしい。
母親はそんな彼に恐怖すら覚えていた。
しかも母親は腰と尻が痛くて終始、座り方を変えながら「二度と深夜バスなんて使わないぞ」と腹に決めていた。
その横で、彼は「次も深夜バスを使うぞ!」と腹に決めていたのだ。
大事なことは一つ。
夜行バスは彼に15時間という時間を与えたのだ。
時間を奪ったのではない。もし飛行機で1時間で東京に着いてしまったとしたら彼は14時間の時間を失ってしまったのだ。
彼は与えられたその時間で今まで見たことなかった日本の景色を見ることができたのだ。
移動時間は僕たちに何かする時間を与える
忙しい社長が唯一海外行きの飛行機の中では休息が取れると語る。
一冊の本を読むために旅行にいく人だっている。
考えるためだけにわざわざ電車に乗って遠くに行こうとする僕だっている。
この世の中、1時間の時間を生み出すのだって大変なことだ。
でもあえて遅く移動することで時間を生み出すことができるのだ。
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