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『THE FIRST SLAM DUNK』は最高のスポーツアニメ映画だった

※ネタバレいっぱいあります。
まだ観てない方はこんな文章を読んでる場合ではないので、早く映画館に行って映画を観てください。
※絶賛しかしてないです。
批判・批評目的の記事ではないので、そういうのが読みたい方はご遠慮ください。

井上雄彦先生、スラムダンクを最高のスポーツアニメ映画にしてくださって、本当にありがとうございました。
元々すごく期待していたけど、正直、想定を軽く超える最高の映画でした。

冒頭の場面でもう、信じて待っていて良かった!と確信した

リョータがソータと1 on 1をしている冒頭の場面。
特報で何度も見たその場面が、幼少期のリョータとその兄だったと分かった瞬間、もう気分はエヴァが暴走した時の冬月でした。「勝ったな」
何十年と好きでいたキャラクターの「その前」が見れるなんて、こんな嬉しいことはないです。
始まってすぐのカットで、「ああ…井上先生の絵が動いている」という強い感動を覚えました。
先生の絵が、先生の絵のまま動き、バスケをしている。呼吸が、息づかいが聞こえて、「生きてる」と思いました。
アニメというのは絵が動いているものだけれど、CGアニメーションでここまで「絵が動いている」と感じさせてくれたものは初めてです。制作陣の技術力の高さ、井上絵の理解度の高さ、バスケの理解度の高さを感じました。

オープニングで(the Birthdayの曲めっちゃ格好いい!)まさに今感動していた「井上絵が動いている」という気持ちをそのまま映像にしたような演出がされ、一人一人が「そのキャラらしく」歩き出す湘北メンバーに、「うおおおお!最高!!!」と叫びたい気持ちを必死で堪えました。
すると、湘北の後、な、なんと、山王工業高校のメンバーが描かれて、最初のクライマックスがやってきます。
「うわああああああああああ!!!!!!山王戦だ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」
そう!この映画は、みんな大好き山王戦を高い技術でアニメーションにする試みだったのです!!!
待って!! 一旦一時停止していい??
心が…心が保たない!!

一番見たかった山王戦が、大型スクリーンでよみがえる!

そこからなだれ込むように山王戦の序盤…
本当に山王戦なんだ、と噛み締めながら、忙しい心を宥めつつとにかく映像を目で追います。

試合開始直後にいきなりあのサイン出すぜ→「いっ」のアリウープがやってきて、無事一度目の昇天。
あのシーン、たしか原作だと(ちょうど今人に貸してて手元になく記憶を頼りに書いているのですが)大ゴマの「いっ」を回の終わりの引きでやって、次回の冒頭で、からの~アリウープ決めたー!!えー!!あいつらやりおった!!(騒然となる客席)まさか本当に成功するとは…
って感じに結構ゆっくりしたテンポで「アリウープするまで」「したあと」を丁寧に描いて、すぐ「同じ2点ピョン」だったじゃないですか。
だから、実際の試合テンポで見たら、こんなに一瞬で何もかも終わるんだ みたいな……マンガとのテンポ感の違い、情緒の揺さぶり方の違いを試合の冒頭でいきなり描いてくるんですよね。
原作通りではあるんですが、試合前のわちゃわちゃとかをカットしていきなり試合シーンになだれ込むことで、その「このテンポでいくんだぜ、実際の試合と同じだ。振り落とされないでついてこいよ!」という制作側の意思がめちゃめちゃ伝わりました。ていうか最初のワンシーンからこのボリュームで感想言いたくなるのやばいよ。

過去エピソードと山王戦を行き来する描き方に賛否あるようですが(否って本当かよ?どっちも見たいじゃんどっちも見せてくれてありがとうじゃんね??)、わたしは山王戦が濃密すぎるのでちょ…ちょっと休憩挟ませて、息できない……!みたいなタイミングで過去編が来てくれるので、正直助かりました。
あのテンポで最後まで一気にお出しされたら、とても生きては帰れなかったですよ。密度が濃すぎて。あれを「過去編いらない山王戦に集中させろ」言ってる勢は心臓いくつ持ってんの?一個分けてくれん??
でもその過去編も破壊力がやばいので、決して休憩時間ではないです。
休憩時間ではないのですが、試合中はとにかく息もできない、目も頭も心も全部が忙しく、それがまさに「数コンマ単位で駆け引きが行われる試合の臨場感」まんまだったので、本当にすごかった……バスケの試合をよく見に行く人とか、バスケをプレイしたことのある人は、わたしより更に解像度が高くて、もっともっと楽しいんだろうなと思います。
スラムダンクのマンガを読んだ時にも、「バスケって面白そう!見たいな」と思ったけど、この映画を見た後にも同じ気持ちになりました。
井上先生の自作にかける思い入れ以上に熱いバスケ愛が、惜しみなくぎゅうぎゅうに詰まっていて、なんかもうそれだけで泣けてしまいます。

リアルな試合描写がすごい!

今作では、湘北ー山王戦が実際の試合に近いテンポで描かれているのですが、現実の試合では不可能な位置にカメラを置き、マンガ原作で描かれていたのとはまた違う角度からの繊細な表情や、実際の試合では見えない細かな選手の動き、筋肉の躍動を、すぐそばで克明に描き出していきます。
本物の試合観戦に近い視点を、現実の試合では見られない場所から、つぶさに味わうことができる……。それも、スポーツマンガの歴史を紐解いても最高級の一戦と名高い、あの湘北対山王戦を……!
スポーツアニメとして、こんな夢のようなことがあっていいのか?と思う描写の数々に、ポップコーンを食べたりコーヒーを飲んだりする暇などまったくありませんでした。まばたきすら惜しいとはまさにこのことです。
ワンシーンたりとも見逃せない、濃密な時間でした。

わたしはバスケの試合を観たことはあまり多くないのですが(生観戦は一回だけ)(また観たい)、サッカーは好きで、Jリーグをよく観戦しているサポーターです。
ご多分に漏れず、サッカーを扱うマンガ作品も好きでよく読みますが、サッカーもバスケも、アニメにするには不向きな競技だな、というのは常々感じていたことでした。
サッカー、およびバスケは、どちらもとにかくテンポが早くて画面をどんどん切り替えていく必要があるし、ひとつの画面に映り込む人数も多く、またその立ち位置であったりとか、競技をきちんと理解していないと描けないカットが多すぎるのです。
絵の技術だけ高くても「4-2-3-1でこの守備位置は有り得ない」みたいなことが発生してしまえば、それだけでもう作画事故になってしまいます。だからアニメーター(コンテ)さんは、まず競技の勉強から始めなくては作れません。ハードル高っ!
更には、マンガ原作でキャラクターたちは常にコート上を動き回りつつ、心の中でモノローグを喋りながら競技をしています。マンガなら一コマで済むシーンでも、長台詞に合わせて映像を作ると、試合のテンポは死んでしまう。
あらゆる意味で、団体競技は映像化のハードルが高いことが想像できます。
(その点、野球は投手打者間の駆け引きにたっぷり時間を取ってもそこまで「時間が止まってる」違和感がないので、比較的映像化に向いている競技だと思います)

本作では極力心の声(モノローグ)を短くし、原作から試合の見せ方を大胆に変えることによって、実際の試合に近いスピードの描写を実現しています。
これこそが、作者自身がメガホンをとることの、一番の意義であったと感じました。あのスピード感を出すために、幾つかの名場面が大胆にカットされます。思いきりのいい取捨選択は、作者だからこそできる判断だったと思います。
あくまでも今回の映画のテンポ感を出すために必要なことで、それらが「不要なシーンだから切られた」のではないことは、すぐに伝わりました。
繰り返しますが、「このテンポ、このスピードで山王戦を描くため」なのです。井上先生自身が、この映画もあくまでスラムダンクのひとつの形に過ぎないと仰っている通りです。
これがファイナルアンサーな訳でも、ましてや過去作の否定でもないのです。悲しむ必要はありません。先に進みましょう。

今作では、いわゆる漫符表現――キャラの等身が変わるようなギャグパートも、ほぼカットされています。現実の試合により近づけるために、リアリティレベルを上げる必要があるからです。
慢符を使ったギャグ表現がない反面、BGMと無音を切り替える演出でところどころ笑いどころが配されており、息をつかせぬ試合の中でも、時々ふっと息がつけました。桜木のダブルドリブルのシーンとか、原作知っててもぷっと噴き出してしまいました。
音楽効果を用いた緩急の表現は、ギャグ以外でもゾクゾクっと背筋が震えてしまうような場面で効果的に用いられ、絶妙なケレン味を生んでいたと思います。
「スピードならNo.1ガードはこの宮城リョータ……だぴょん!」の場面など、鑑賞中椅子から立ち上がって一緒に「だぴょん!」と叫びたくなるようなカッコよさでした。
コロナ禍でなければ、映画を観ながらオタク全員であの名台詞たちを力いっぱい叫ぶクソオタ応援上映ができたのだろうと思うと、涙が出そうに悔しいですね。
みんなでやりたいですよね。「諦めたらそこで試合終了ですよ」とか、「俺の名前を言ってみろ」って言われて「三井!」って返したりとか、花道の口の動きに合わせて「左手は……」「添えるだけ」ってつぶやいたりとかね~~~~!!
その後、隣の知らん人と猛烈にハイタッチしたりとかね~~~~~~~あーーーー絶対楽しいのにな~~~。

本作のリアルな試合再現に欠かせなかったのが、バスケにまつわる「音」への強いこだわりです。三井のシュート練習を聴き続けるCDが物販に売られているくらいなのですから、そのこだわりようは推して知れるといったところでしょう。
ボールがバウンドする音、ネットを揺らす音、バッシュが床に擦れる音。
それら一つ一つが試合の没入感をより高めるための演出にもなっていました。

特筆すべきは、やはり試合終わり間際のBGMを廃した演出でしょう。
ドクン……ドクン……と心音だけが響いているあの状況に、手に汗握り息をするのも忘れてスクリーンに釘付けになりながら、名門校を自信たっぷりに指揮してきた堂本監督が、無名校に土俵際まで追い詰められ、迎えた試合終了間際にとうとう自身の中にある「焦り」を自覚する、あの原作の一コマを脳裏に浮かべながら、音と映像に没入しました。
堂本監督が、交代準備をしている木暮ともはや限界を迎えつつある桜木に目をやった後、取りかけたタイムアウトをやめ、コート上の5人に勝負を託した場面は、原作についていたナレーションがなくても明らかに状況が理解できます。
あのコート上の選手たちから一歩引いた場面に、本作の演出の巧みさが詰まっていたように思います。

その後、まったくの無音となった世界で(恐らく極限まで集中した状態――ゾーン――にある選手たちにとって、コートの中はああいう真空にも似た空間になっているのだと想像します)、ラストプレーを迎える寸前。
ゴールに向かい突進する流川の目に映った花道の姿、その口元が僅かに動き、引きつけられるように送られたパス、それを受け取り、意外なほどの落ち着きを持って冷静に放たれるシュート。描く弧の美しさ。ゆっくりと落ちていくボール、静かに揺れるネット。
審判が笛を鳴らし、得点ボードに試合結果が刻まれ、未だ集中のただ中にある花道と流川が、ゆっくり歩み寄り、おおきく腕を振りかぶり、ハイタッチ!!(その音で、ようやく世界に音が戻る)
……この場面、ファンは今まで何度となく脳内で映像化してきましたよね??
わたしはしてきました。ずっと、何度も。ゴリが海南を相手にインターハイ出場を競うイメージトレーニングをしてきたように、何度も。
それが本当に、井上先生ご自身の手で、ついに映像にしてもらえたんですよ。井上先生の絵がそのまま動く最高のアニメーション技術を使い、最後はまるでマンガの表現に立ち返ったかのようなモノクロ・スピード線の表現で、「ほんの一瞬」を映像という形でも描きだしてくれた。山王戦決着のシーンは、呼吸音すら邪魔になるように感じて、映画館にいる全員が息を呑んでスクリーンを見つめていたと思います。
こんな…こんな体験をさせてくれて、もう手放しで喜びむせび泣き感謝にひれ伏す以外、オタクに何ができるんですか…?何もできませんよね。
ありがとう本当に。こんなに素敵な映画にしてくれて……。
ありがとう、こんなすばらしい技術を生み出してくれて……。

新作部分・過去のエピソードも最高オブ最高

スラムダンクのキャラクターはみんな、付き合いの長い友達みたいな気持ちで見てしまいます。
それくらい人間くさい、実在感のある愛すべき奴らですが、クセのあるキャラたちの中で今回の主人公は、宮城リョータです。

まるで、古い友人の生い立ちを初めて聞かせてもらっているときのような、厳かな気持ちで過去パートを見ていました。
リョータが沖縄出身というの、ものすごくしっくりくる……。
海の側で生きてきた男なのですね、彼は。
幼き日のリョータが兄のソータくんに「もう帰ってくんな!」と言ってしまう場面は、強烈に「リョータ、アカン…それは言ったらアカンやつや 頼むやめてくれ(泣)」と思いました。嫌な予感しかしないぜ、と思ったら案の定なことになってしまい、いや……もう…………リョータも本当に可哀想だけど、リョータ母が本当に本当に本当に気の毒で
その後、リョータがちょいグレちゃうことも知ってたから余計、(あああ……)ってなりましたね。

どうしてもリョータ母に感情移入してしまうアラフォー

もうスラムダンクリアルタイム世代はだいたいリョータ母の年齢に近くなっている現在、湘北高校の子たちより、リョータ母に感情移入してしまった人も多かろうと思います。
リョータが原付を猛スピードでぶっとばしている場面では、『リアル』冒頭の野宮の事故シーンがダブッてしまい、震え上がりました
いやもうマジでリョータあんくらいの怪我で済んだこと神に感謝せえよ、お前んとこの神様、別作品じゃもっとどえらい事故描いとんねんぞ、と凄んでしまいそうな勢いでリョータのアホ!ってなりました。
いやもう、あれでもしリョータまでアカンことなったらどんだけ母ちゃん気の毒なんねん、いくら妹が天使だからってお前、お前……マジで自分大事にせえよ?????…って思いましたよね(思いつくまま書き殴ってる)

でも井上先生の生み出されるキャラって、そういう「足りなさ」だったり「情けなさ」だったり、それでもなんとか生きようとひたむきに足掻いているところが魅力的なんですよね。
特にリョータは、そういうちょっとカッコ悪いくらいの人間みが本当に泥臭くて、やっぱりすごくカッコいい子だな、ってしみじみ思いました。
リョータは多分、ソーちゃんにあの言葉をぶつけてしまった自分がずっと許せずに、「もし生きてるのが自分じゃなくソーちゃんだったら」と、インターハイの前日(兄と同じ誕生日!)まで思い悩み続け、それでもまだバスケを捨てられずに、場所が変わってもボールを追い続けたんですよね。
本当に悲しいくらい強くて、優しい男だと思います。
引っ越し先の団地(県営住宅かな…)でバスケの練習してたら「ボール遊びはよそでやんなさいよ」って怒鳴られる場面、本当に切ないですね。
桜木が原作冒頭でゴリに言った「玉入れアソビ部」と同じくらい、強烈な悪意を感じてしまう言葉だけど、でもあのビルの谷間にダムダムボールの音響いてうるせえ!と怒ってる人にとっては、そりゃ「ガキのボール遊び」でしかないわけで……。
顔見知りばかりの沖縄で、路上やコートでいくらでもボールに触れてきたリョータに突きつけられる都会の洗礼が、身につまされました。一緒にバスケをやる仲間もいないし、性格的に、既にできているバスケチームの輪に容易に加わることもできず…。
その哀しさに、ものすごいリアリティがあって。これ、井上作品だわ……って思いました。

わたしに子供はいないですけど、夫に続き長男を突然亡くし、一人でまだ幼い二児を育てていかなきゃいけない、ってどれだけしんどいことでしょう……。
リョータがミニバスで負けて、周りの大人たちから兄と比べられて「ソータの代わりにはなれない」って言われてたら、本当にしんどいですよね。
兄の幻影に囚われ続けるリョータを見ていられない、リョータにソータを重ねてしまう自分も嫌、いっそ何もかもリセットしてしまった方が楽になれるのでは…と、ソータにまつわる記憶を封印しようとした彼女の気持ちも、身につまされるように理解できます。
思い出の詰まった家を出て、家族を殺した海からも離れて、それでもやっぱりバスケを続けるリョータを、沖縄とはまた違う海辺を、一体どんな思いで見つめていたのでしょうね……。
リョータの試合を見たのは、あのミニバス以来山王戦が初めてだったのかな。
山王戦で兄の目標を超えていったリョータを見て、お母さんはどんな気持ちだったのかな、とか……考えてるだけで涙が出てきてしまいます。うっ……また見にいかないと……。

魅力的な主人公・宮城リョータ

お母さんの行け!と、アヤちゃんの行け!が重なる場面最高でしたね……。
本作では極力恋愛シーンが省かれていたと思うのですが、リョータとアヤちゃんの関係はそれでもとても可愛くて、理想的な友情のようにも見えました。
原作の山王戦前夜、リョータは「なんで俺は凄い相手とばっかり当たるんだ……」って肩を落としていたけど、元々リョータは兄へのコンプレックスを抱えていて、『宮城リョータ』という選手を信じきれていなかったのかもしれないな、と今回の映画を観て思いました。
だからこそ、アヤちゃんの『No.1ガード』が響いたんだろうなとか……。
原作を読んだ時は、誰あろうアヤちゃんから言われたから、って解釈していたけれど、今回の映画観てたらそれだけじゃないんだな、って分かりました。
たくさんの強力なライバルたちに、震えながらも精一杯平気なふりをして立ち向かっていくリョータを一番近くで観てきたアヤちゃんの言葉だからだし、リョータが根本のところで自信がないことも、もしかしたらアヤちゃんにはバレていたのかもな、と思いました。

原作で赤木(え、あの雑誌読んでたのゴリだったよね??間違ってたらすみません)が持っていた古い雑誌・週刊バスケットボールの山王特集号をソータくんも大事に読んでいて、あの洞窟の中で「を倒す」と書き込む場面、たまりませんでしたね……。
ソータが戦いたかった相手と当たり、ソータの目標を超えていくことを、でもリョータ自身は特に目指していた訳じゃなくて、恐らく普通に「強いんだろうな、当たりたくねー」と考えていたんだと思うんですけれど、それを乗り越えた先に、登場人物の中でも特に低身長の彼が、バスケットの本場で長身選手相手にバスケを続けている、というラストは、まさに「希望」と呼べるエンディングでした。
原作から30年ほど経って、井上先生があのリョータと沢北の未来図を、「実現可能なもの」だと自信を持って描けるようになったことが、なにより嬉しいです。
それはきっと、井上先生が愛したバスケットボールを、井上先生のマンガを読んで育った若者が未来に繋いでいくことで、実現した世界だから。
フィクションのスラムダンクに影響されて、現実でバスケを始めた子たちがいて、スラムダンク基金もできて、日本バスケが強くなり、その結果、スラムダンクに「世界の舞台で戦う日本人選手たち」が描かれる。
最高のストーリーじゃありません?
わたしはあの場面、沢北とリョータは大学生で、二人ともそれぞれ別のアメリカの大学にスポーツ推薦で進学している、と受け取ったんですが、実際のところはどうなんでしょうね。
バスケ好きの人たちの考察が捗りそうです。また観に行って、確かめないと。

リョータ以外のキャラたちの前日譚も最の高

今回の映画で一番「デュフ……」となった場面は、グレてるときの三井が朝帰りの帰路にランニング中の安西夫妻を見かけて慌てて隠れるシーンです。
あの場面大好き。朝の靄がかった空気が最高に背徳感を演出してくれますね。三井…………(三井の情けない場面大好き侍)

三井が宮城をなんで狙ってボコったのか、の解像度上がったのもとても有り難い有り難いサンキュー!でした。
若かりし頃の爽やかバスケットマン三井と、「俺そういうの求めてないんで…」期の宮城の場面、その後の二人の対比も合わせて感慨深いものがありました。
なんだか兄貴ヅラしてるあの頃のミッチー、立ち位置とか色々ソータとダブって見えて、その後チームメイトになってからはまっっったくソータとは似ても似つかない人間なんだけど、「あの時はそう見えた」というのがとても好きです。
あの時もし三井と宮城が野良バスケ仲間として健やかな成長を遂げていたら、一体どんな未来になっていたのでしょうね……。いやそうはならんか…………

ミッチー軍団がリョータとヤスにガンつけながらのしのし歩いている場面でのりお(だと思う多分)からなんかチャリチャリ音してたの、昔のヤンキーの解像度高け~~!って思いました。
何が鳴ってるの?あのチャリチャリ音は?
皮靴になにか仕込んでるのかな??
ケンカのシーンではチャリチャリ気になんなかったな リョータが震える手を隠すのにポケットに手を突っ込む場面、最高に好き。あれぞまさに「精一杯平気なふりをする」じゃないですか。こんなところにまで兄の教えが活きてるのかよ…。
そういう細かい演出と伏線好きです。

赤木の過去パート、しんどさが山積みで、そもそも原作でもゴリの過去パートはしんどいんですけど、あの先輩が特に悪意の存在すぎて嫌でしたね…。
赤木が入部してきたばかりの時は、長身の一年が来た!ってやたらもてはやし、でも使えない下手くそ…となり、下手なりに黙々と一人練習する武士のような姿勢は自分らがサボってることを暗に指摘してるように感じられて鬱陶しさが増すし、結局予選始まって早々に負けて「こいつの独裁になるから覚悟しとけよお前ら~」って……。
腹立つけど、原作のゴリの過去にあった「お前とバスケすんの、息苦しいよ…」があるから、あの先輩もきっと無言の圧力が息苦しかったんだろうな……って……。

あの昔の湘北の負け試合を三井が観に来て、ベンチにいる宮城見て去るシーン、「三井、練習出なくなってからもやっぱ試合観に来てたのね……」ってなってエモいですね。
井上先生は『リアル』でも、高校中退した野宮が本来なら自分が出ている筈だった予選を観に来て「ああ……終わっちまった」って泣くシーンを描いていますが、試合に出ていた選手の悔しさと同じくらい、試合に出ず外野として見るしかできない選手たちの忸怩たる思いも強く印象に残る描き方をされていて、なんか……先生も同じように悔しい思いをされた(仲間を知っている)のかな……とか思いましたね。
クロアチア戦に累積で出れなかった板倉、悔しかったろうなあ……(突然のサッカー日本代表)

あの外野の三井があるからこそ、山王戦の「湘北に入って良かった…」が心に響きますね。
ベンチの選手があれを言えるのって、本当にいいチームなんだよな…。石井くん役の声優さんのお芝居、わたしが長年思い描いていた言い方と完全一致でした。
あの場面大好きなんだ… コートの中にいる彼らだけがメンバーじゃない、って思えるから…

なんかまだまだ語りたいことたくさんある気がするんですが、このまま書いてると本当に終わらない気がするのでここで一旦終わりにします。もしかしたら追記するかも。

とにかく最高のスラムダンクで、最高の山王戦でした。やっぱり山王戦は面白いな!!色褪せないな!思い出補正じゃなく、ずっと面白いし永遠の名作だな!って改めて思いました。
もう2回観たけど、まだ観足りないのでまた映画館で浴びてきます。
ここまで読んでる人の中に、まだ映画観に行ってない人はもういないと思うけど、もしいたら本当にすぐにでも映画館に行って観てください。
マジこれほど映画館で観た方がいい作品も少ないと思います。できたら音がいい、でかいスクリーンで観てね!よろしくな!!

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