見出し画像

ジョージアのワイン

 入国審査のブースでワインの小瓶が渡された! 空港で既にウェルカムドリンクか。すごい歓迎だ。2015年8月のこと。
 コーカサス地方は、国家間の様々な問題で、隣同士の国でも国境を跨げないことがある。領土問題があって、紛争地帯になっていたりするのだ。アルメニアとジョージアとアゼルバイジャンは、そのせいでルートが制限されていた。火薬庫と言われるバルカン半島同様、この地域も火花が散る。ナゴルノ・カラバフ問題がまだ未解決のアゼルバイジャンとアルメニアは国境を接しているが、どちらからもどちらかへ越境できない。この3国を周遊するのに一筆書きは不可能。一旦ジョージアに出て、そこから飛んだりする必要がある。2014年、2016年、2020年に戦闘になっている。(2015年に行けたのは幸いだった…。)無論、両国には、大国や周辺が拘わり続けている。
 ジョージアは、ロシアと国境を接しており、南オセチア・アブハジア問題を抱えている。2008年に戦闘状態になった。ここでもロシアの出番があった。
 その後ロシアはクリミア併合に進む(2014年)。そして2022年2月だ。こうしてみると、ずっと戦争がある。ロシアにしてみれば、「続きもの」なのだろう。

 いや、今回は、ジョージアの話である。
 そんなこんなで、国名の読み方をロシア語発音から英語発音に変えてしまうほど、ジョージアはロシア嫌いだ。(また現況話をしてしまうが、読み方・スペル変更は、同じ様相を呈している。)だが、経済的には結びつきも強く、ジョージアで作られているワインの多くはロシアに輸出されていた。それが紛争が原因でロシアから禁輸されたりして経済的に大打撃を被る。他にもいろいろ「嫌がらせ」をされている。(まったく一方的にジョージアが悪くないことはあり得ないが、大国の小国いじめに、世界からは見える。)
 そんなことでワインがだぶついていたのかも知れない。これ見よがしにロシアで廃棄処分にされる自国のワインの映像を見るくらいなら、旅行者に配ればいい――ということかどうか、確かめてはいない。とにもかくにも、わざわざ日本まで持って帰って、家で美味しくいただいた。タダ酒は特に美味い。
 ご存じの向きも多いと思うが、ジョージアのワインは歴史が古く、ワインの故郷のひとつとして知られる。首都トビリシ郊外で発掘された壺から約8000年前のものとされるワイン醸造の痕跡が検出された(2017年)。現在確認されているワイン醸造跡としては、世界最古という。
 決して私はワイン通ではないが、日本でもジョージア産ワインを買ったりしている。そんなにどこにでも売っている訳ではないが、日本のロシア料理店では、ジョージア産ワインを供していることもよくある。(皮肉。)好みは色々あろうが、私は赤も白も美味しいと思う。昔ながらの壺甕製法に歴史の味を勝手に添加してしまっているかも知れないけれど。

左の小瓶が入国審査の時にもらったもの。©Anne KITAE

 余談だが、大相撲にはジョージア出身者がいる(いた)。栃ノ心(現役)とか臥牙丸(引退)とか。黒海がその前か。2015年の話では、それより少し前に日本にいるジョージア人は30人くらいだったそうで、駐日大使館でパーティーなどして、集まっていたとか。そんな話をしてくれたのは、現地の日本語ガイド女子。同志社大学に留学していたということで、日本語はとても流暢。臥牙丸とも会ったことがあって、一緒に居たら日本人にすごく人気だったと。自分にとっては、ただの太った人だったけど、だそうだ。でも、人柄が本当に良かったとも言っていた。彼女はその時、確か25才くらいで、「日本にいたら全然平気だけど、ここ(ジョージア)では、この年で未婚なので、ヘンな人です」。今はもうヘンな人じゃなくなっているのだろう、きっと――。
 ジョージアでは料理もいちいちすごい量で、残してもらうくらいが適量とのこと。平らげられたら恥ずかしい。それっぽっちしか出さないケチということになるらしい。肉中心、野菜どっさりで日本人の口にも合いやすいので(というか、私は魚が殆ど食べられないので、肉食地域がありがたい)、ついつい調子に乗って食べ過ぎる。私は滞在中、ずっとおなかを壊していた。
 よく働く女性達が多い土地柄だが、とてもふくよかな人が多い。特におばちゃん達は。シルエットは「ががちゃん」並みであった…。「ヘンな人じゃなくなった彼女」ももしかしたら、もうその兆しが見える頃だろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?