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母になりました

一晩中苦しんでやっと明け方に産まれた娘でした。

ぐったりしている私に婦長さんは
「きっと娘さんは美智子妃殿下と同じ日に生まれたくて今朝まで出てこなかったのよ。
日本中の人たちからおめでとうって言われてるよ」

と声をかけてくださいました。
その言葉のどんなに嬉しかったことか・・・。
看護をする者の言葉の大切さを改めて感じました。

その立派なお誕生日を頂いた娘を
これから頑張って育てていかなければなりません。

と思った矢先
そこでまた問題発生でした。

長女が生まれてもいっこうに
主人は病院にやって来ませんでした。
その代わり大阪から妹が、和歌山から母が駆けつけてくれていました。

退院の日が近づき
妹に「お父さんに言って箪笥の引き出しにある通帳からお金を出して
入院費用を持ってきてって伝えて」
と言いましたが
それでも主人は来ません。


そんなある日、妹が申し訳なさそうに
「姉ちゃん、お産の後やから怒ったらあかんで。
義兄さんな、箪笥の引き出しにあった貯金通帳持っていって使ってたんや」
というではありませんか!

そんな話を聞いて驚いている最中に
ちょうど退院の一日前となっておりましたが
大阪の主人の義母が病院にやってきて
帰り際に枕の下に
スッとお祝いのお金を入れていきました。

義母が帰るや否や
私は飛び起きて枕の下にある「祝儀袋」を開けました。

その封筒には5万円入っておりました。

その当時の入院費用は3万8000円でしたので
「これで払える!」と少し安心しましたが
主人に対する怒りはおさまりません!

寂しさと怒りと不安の入り混じった中でも
娘の顔を見ると
「ああ、無事生まれて来てくれたんだ」という喜びが込み上げて来ました。

とうとう退院の日になり
主人は一度も病院に来ないまま自宅に戻りました。

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