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どんなことも三度点検すること

「どんなことも3度点検!」
これも何度も言われました。

私たちの中では

「間違い」ということは
「患者さんの命」に関わるからです。

ある日
胃の手術の介助につくことになりました。

手術で使う道具は
全て看護婦が揃えるのが基本でしたので
私は何度も確認しながら用意し滅菌消毒にかけます。

この日も
何度も確認して
滅菌消毒をし
手術に臨みました。

手術道具をセットして
手術が始まり
先生が合掌「手術を始めます」とおっしゃいました。
(もう今ではこの手術前の合掌というのはしないそうですね)

手術が始まり
「コッヘル」
「デシャン」
と道具を手渡しながら開腹がすすんでいきました。

「あ、もうすぐ胃が出てくるなあ」と思って
ふと手元を見ると
用意してあったはずの「ペッツ」という
大きなホッチキスのような道具が見当たらないのです。

絶対用意したはず!そして何度も確認したはず!
そう確信しているのですが
実際に今、見当たらない。

内心うろたえながら
頭が真っ白になり手も冷たくなりながら
介助を続けていました。

動揺しながら
「あの、ペッツが・・・」と
言いかけた時

「はい」と、婦長さんが背後から
ペッツを差し出して来ました。
私は腰が抜けるくらいホッとしました。

でも、私は術前に確実にペッツも揃えておりました。
手術台に広げてからもペッツがあることを確認していたのです。
間違いなく確認していたのです。

つまり、そこから手術が始まるまでの間に
婦長さんがペッツを抜き取ったのだと思います。

ドクターとも打ち合わせていたようです。

手術後に院長先生から
「もう心配ないな。あのあたりでペッツがないことに気がつくんだから
大したものだ。もう慣れたな」
と、言われたました。

こうして「確認!」ということを
あらゆる場面で叩き込まれ教え込まれました。

「だって・・・」
「あると思った・・・」
などという言葉は決して使ってはならないと思っていました。

今ではこんなことは
「いじめ」と捉えられたりすることもあるのでしょうが

そのころは「本当に一人前に育ててやろう」という先輩たちの
気持ちがあったのではないかと私は思っています。

厳しくも本当にありがたいことでした。

 つづく

   キミちゃんより





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