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子供に初めて買ったのは、おもちゃでもなくお洋服でもなく、棺と骨壷だった。

子ども用の棺や骨壷を選んだ。夫婦2人で子供のために初めて選ぶものだった。棺にも子ども用の可愛い柄や色があって、棺と言えど子供のものを選べるという喜びが湧いて、とても皮肉だった。子どものことを思う買い物ってこんなに幸せなんだ!と知った。あまりにも残酷な現実の上に成り立つ、意味の分からない喜びだった。この痛みや経験を知らない家庭が羨ましかった。誰かの生まれたばかりの赤ちゃんの泣き声をBGMに、今まだ自分のお腹の中にいる子供の棺を選ぶ。精神がぶっ壊れそうで、気持ち悪いほど冷静だった。


初めての妊娠で、中期中絶を経験した。
したくもない決断をしなければならなかった。
中期中絶という言葉を初めて知った。
自分が中絶するなんて、思いもしなかった。
「母子共に健康です」があまりにも遠かった。
安定期と言われる6ヶ月目。お腹だって膨らんだ。
4ヶ月後には我が子に会えると思っていた。
名付けの本を買ったところだった。
大きな病院に紹介され、急遽決断を迫られた約1週間。
2日に1度の長時間のエコー。
あまりにも辛い日々で生きた心地がしなかった。
決断をしてから1週間の間に、私は入院し処置が始まりお産を経験した。旦那さんは子どもの死亡届を持ち役場で手続きし、火葬場を調べ予約をした。つい数日前までお腹にいた我が子は、棺に入り火葬され弔われた。



ドラマ仕立てにするつもりも毛頭ないし、悲壮感に浸るつもりもない。私の経験した中期中絶というあまりにも壮絶な現実をただただ綴る。この記事は、今現在、妊娠継続を悩まれている方の決断の参考になればいいし、中期中絶を検討していて処置の経過がどんなものか知っておきたい妊婦さんや、既に中期中絶を終えて同じ悩みを持つ方の役に立てばという想いで書いた。思いもしない流産や死産を経験したお母さんにも通じるところがあるかもしれない。

中期中絶とは

流産や死産ほど知られていない中期中絶という選択。前者と異なるのは、自分の子どもの命の判断を、親自らすること。そして全くそれを望んでいなくても、命の選択をしなければいけない状況に置かれるということ。中期中絶というのは、通常のお産とほとんど同じ方法で出産する。唯一違うのは、子宮の出口を人工的に広げて、陣痛を誘発するということ。だから、陣痛もあるし破水もする。出血ももちろん伴う。産後も回復まで時間がかかる。

流産、死産、初期中絶と比較して、中期中絶についての情報はあまりにも少なく、根拠のある情報はもっと少ない。というか、調べるほど自分を責めてしまうような内容も多い気がする。出来るだけ根拠のある必要な情報(論文とか)だけを調べようとしたけれど、それでも情報が少なかった。
情報が少ないのは、そもそもがあまりにもショッキングな内容であり、あまり外に向けて発信することでもないからだと思う。でも、多少知っていることで救われたり、心構えができたり、決断の参考になるかもしれない。そして生々しい痛みを共有できるかもしれない。

中期中絶に直面している妊婦さん、旦那さん、ご家族は「生きていて、こんなにも辛いことがあるのか」と、その痛みの深さにどうしたら良いか迷い、本当に悩み苦しんでいると思う。そんな人の役に立てればいいなと思う。

決して「大丈夫だよ」なんて言えないけれど、どうか1人で悩まないでほしい、そんな祈りのような願いを込めて書く。中期中絶と言っても、人によって経験した年齢も違えば、感じ方も状況も何もかも違うだろう。何か少しでも違えば、全く違う経験のように思えるかもしれない。けど、大切な赤ちゃんを思わぬ段階で失う経験は同じだ。そして、このあまりにも辛い経験をした私はこの時代に生きている。だから、この痛みを共有したり、分かち合えたりする人間がこの世界にいると伝えたい。私も1人は辛いから、どうかこの記事で寄り添いたいし、あわよくば自分も1人ではないのだと信じたい。私もここに書き出すことで、この悲壮感と自らの心を心中させずに済む。自分の心の救済措置かもしれない。書くことはエゴでしかないかもしれない。

この記事について

この記事は、入院中に書いた生々しい部分もあるし、お産後約1週間の安静期間に書いた部分もある。もっと落ち着いてから、と思ったけれど、今のこの時期に思うことだからこそ、悩みの渦中にいる人の何か助けになるかもしれないという思いで書くことにした。また、私の感情を言葉にしてどうにか整理したかった。

役に立てば、と思って書いたけれど、不要に怖がらせてしまう部分もあるかもしれない。だから、読むには覚悟を持って読む必要があると思う。それでも情報が欲しかったり、世の中にはこんなことがあるのか、と知っておきたいという方は読み進めてほしい。文才もないし、書く経験もない。が、私が経験した事実やそのときの感情を綴った文章は、生々しく辛い部分が多い。

前述の通り、この先は結構ショッキングな内容も含まれているので、読みたくない方は読まなくてもいいように、読みたい方は読めるように、誰構わず人目につかないようにという意味で以下は有料にしている。有料部分は、入院中のこと、処置〜陣痛〜お産、火葬〜供養などの具体的な内容になっている。

中絶という選択肢は命を扱う非常に重たいもので、もちろん、少なからず反対したり受け入れられない方々がいるのは重々承知の上です。けど、夫婦仲や家庭環境に関係なくどんな望んだ命でも選択が迫られること、したくもない中期中絶という選択があまりにも壮絶であることをどうか理解してもらえるとありがたい。望んで出逢えた奇跡のような命との別れはあまりにも辛く苦しい。もういない我が子の姿を何度も何度も思い浮かべる。私も旦那さんも、これに関わった家族全員今回の件で深く深く傷ついた。無用な誹謗中傷に晒されることがないようにという思いも込めて有料にしている。この記事に金額が提示されることに抵抗があるし、これを消費するつもりも全くないけれど、どうかご理解をお願いします。
購入していただいた分の金額は全て、中期中絶せざるを得なかった家族を支援する団体に寄付させていただきます。

ただ、私と同じ境遇でとてもとても悩んで辛い思いをしている方がいたら、有料部分も全文読めるように無料(メール)で送ります。その際は面倒ですがインスタのdmでその旨をお伝えください。何か役立てれば幸いです。

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