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【経営×PRを考えてみた】マーケティング編

はじめに

こんにちは、きむかずです。
さて、今回は【経営×PRを考えてみた】シリーズの第一弾です。このシリーズを始めた背景としては、広報/PR界隈にいるとよく「PRは経営視点をもってやろう」みたいな話をする人は多いんですが、「結局どうゆうこと?」というのが割とフワッとしてるかなと思いまして、PR×経営みたいなところで困っている人への参考になればいいなと思ってつくってみました。(※完全なる個人的な見解・考察で、所属組織の見解・発表ではございません)

僕がこれまでビジネスメディア編集長として社会や企業の先端の動向を追いかけていた視点や経験と、かつMBAで体系的に経営についてどっぷり学び、実務として2度ゼロイチでの新規事業立ち上げ経験があり、過去に社内ベンチャーでの組織拡大経験などもありつつも現在はPRプランナーですので、パブリシティ畑出身の人とは違った視点でのお話ができるかなというところで、少しでも参考になれば幸いです。

経営×PRを考えるシリーズの前提

このシリーズでは経営活動を大きく「マーケティング領域」「ファイナンス領域」「組織領域」の三つに分けていて、今回はマーケティング編です。ファイナンス領域だとPRと資本コストの関係やアカウンティングまわり、中期経営計画、IRの話などがありますし、組織領域だとコーポレートガバナンス、採用、マネジメントなどの話を予定しています。マーケティング編がたくさんシェアされたら頑張って残り二つの領域も早く作ります笑(出版や講師、お仕事のご相談など超ウェルカムですのでお待ちしてます笑)

マーケティングですが、PR単体、マーケティング単体などの話は体系化されたものがありますが、横断して考えられている話が少ないかなと思い、横断して捉えた際にどのような作用が働くのかを考察します。もちろん魔法の杖ではないので、会社の規模やフェーズ、業界によって使えるものそうでないものありますので、どれが使えそうかを目利きしてもらいつつ参考にしてもらえればと思います。

事前に定義の確認ですが、いわゆるリリースを書く・配信する・メディア向け発表会を行う、などのメディア露出を獲得する行為は「パブリシティ」と認識頂ければと思います。ここで使用するPRは「ステークホルダーと良好な関係を築く」というものです。(関係性構築のための手段として信頼性の高いアプローチであるパブリシティはもちろん有効ですが、あくまで手法の一つで、PR目的で広告施策を行うこともありますし、社内広報やオウンドメディア、顧客向けイベントなど手法は様々です)。

で、そこまでは理解している人が多いのですが、誰とどう良好な関係を築くと、結局何が良いの?という部分を体系的に考えていきたいと思います。(マーケティング部分の細かな内容理解はぜひ個別で勉強してみてください)

マーケティングの上流から下流

よく「上流から考えよう」みたいな話がありますが、まずはマーケティング戦略がどんな流れか整理しましょう。そして、大事なのはその中でどこに経営課題があるのか、ボトルネックになっているのか、という視点です。そこに対して手をうつことが、上流から考えていくということかなと思います。

はい、雑につくった図ですが、上記図を参照ください(これが全てではないのですが、ざっくりこんな感じでいきます)。マーケティングにおけるプロモーションってこの下流にある4Pのうちの一つなんですよね。なんですが、その前提となるターゲティングやポジショニングだったり、さらにそれに至った戦略や背景を知らずして、戦略的なプロモーションはできないということなんですね。

そして、もちろんプロモーションとしての顧客とのコミュニケーションや関係性構築は非常に大事なのですが、PRの作用はもっと前段からいろいろな役割を担うことができる、という可能性について考察しました。一つずつ見ていきますが、まずは全体像として一気に画像のせちゃいます。

それでは、一つひとつ見ていきましょう。注意しておくと、もちろんアカデミックな話ではあるので、実務でどの程度活用できるかというのは企業のフェーズや業界等によっていろいろ変わってきますので、うまく使えそうなものを拾って頂ければです。あくまでPR(ステークホルダーとの関係性構築)が経営視点を持つことでどういったことを狙えるのかという可能性を考えてみるということです。大事なのは、やみくもに行うPRではなく狙いをもってPRしようということですね。

PPM

BCGのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントです。複数事業を行っている場合に、経営資源をどう配分するかという考え方です。そして、ここでのPRの考え方ですが、まずPRにおけるリソース配分や外部コミュニケーションにおける配分も、経営と連動させることによってより加速させることができます。良い関係性を築いている事業のリソースを活用して注力領域の関係向上を狙うこともできそうです。

成長ベクトル

アンゾフの成長マトリクスです。自社の成長戦略をどう描くかに関するフレームワークです。大きく、領域×内容の2軸でMECEに(漏れなくダブりなく)表した際に、同じ内容で新しい領域に行くのか、同じ領域で新しい内容を行うか、もしくは全く新しいところを狙うか、というような話です。

ここでは、まずは新市場へ参入するタイミングで、初期に良好な関係性構築を行うことで参入障壁を緩和することができます。例えば台湾から何かスイーツが日本市場に参入する際に、「台湾で大人気である」というファクトをレピュテーションとして日本で獲得してから上陸することで、スタート時から注目を高めることが出来る。新市場参入における事前の関係性構築です。(これは顧客だけでなく、パートナーとなる企業があればそこへの一手も考えられます)。また、既存市場に対して新たな製品を投入する際は、既に築いているリレーションを活用することで、効率的に新製品への認知獲得や理解促進を行えます。

PEST

マクロ環境について4つの軸で分析を行います。マーケティングにおいては、コントロール不能な外部環境要因と捉えられており、この要素について数年先までの動向を見越して、それを考慮した自社の計画・戦略をたてます。

しかし、PRにおけるパブリックアフェアーズ領域のアクションが、この外部環境を能動的に変化させる流れを生み出すことができます。法規制に関するステークホルダーとのコミュニケーションによりルール変更を訴えたり、社会意識を変化させることで自社が優位性を持つ環境構築を狙うことができます。

5フォース

業界分析です。自社を取り巻くプレイヤーとのパワーバランスを分析し、競争緩和や収益性向上のための鍵となるプレイヤーを認識し対処を検討します。

例えば古い慣習の強い業界などだと、仕入先が極端に力を持っていたり、逆に売り先が極端に力を持っていることなどがあるが、理不尽な既得権益が存在するような領域において透明性を追求しつつ社会とのコミュニケーションを行い合意形成をとることで、違和感のある構図に対して解消を狙うことができます。また、発信するメッセージ等によって各プレイヤーの捉え方が変わるため、各プレイヤーとの関係性構築を意識することで敵対的な攻撃を防ぎ、逆に業界を盛り上げる仲間のような関係になることも可能になります。

バリューチェーン

競合他社と自社における事業活動を機能別に分解し、付加価値を生み出しているポイントを比較します。機能ごとに相対的に強み・弱みを分析します。

バリューチェーンに対して、各機能におけるパートナーとの関係性向上によって競争優位を生み出せないかどうかを検討することで、模倣が難しい付加価値要素を作り出せる可能性があります。

3C

外部環境やその変化に対して、自社の現状と今後の対応を検討します。分析の順番は市場→競合→自社の順番です。ここに対して、PR視点での分析要素も加え、顧客がどのようなパーセプションを持っているか、競合はどのようなレピュテーションを獲得しているか、自社はどうか、などを合わせて要素として考えていくことで、関係性視点での要素により対応の質が向上し、競合よりも効果的な施策を行える可能性があります。

SWOT

外部環境として機会と脅威、内部環境として自社の強みと弱みを分析します。自社のコアコンピタンスとKSF(重要成功要因)との適合をみて、機会をとらえていきます。PRアプローチにより、機会を能動的に創出するアクションや、脅威を緩和させるためのアクションが可能です。

7S

相互作用のある7つの戦略要素です。ソフト4Sは価値観が伴い、慣性が働くため強制的な短期的な変更が難しいとされています。ハード3Sは意思決定やプランによち変更しやすいため施策が行われやすいですが、大事なのはソフトSとの連動・整合となっています。

これに対し、PRとしてインナーコミュニケーション(従業員がステークホルダー)を通じて、ソフトとハードの各要素の整合性を構築できます。また、それが監視機能になったり、外部へのコミュニケーションとしても一貫性を生み出すことができます。

VRIO

自社の経営資源に対して競争優位性を分析します。そもそも価値を提供できていなければ競争劣位、価値があっても希少性がなければ競争均衡、希少性があっても模倣困難性がなければ一時的競争優位となります。模倣困難性があれば継続的競争優位性となり、さらに組織体制がマッチしていれば資源の最大活用を行えている状態となります。

PR戦略で考えると、一時的競争優位にいる際に他社の模倣タイミングを遅らせるためのコア情報の発信をあえて抑えることや、逆にその状況で一気に力をいれて先行者優位となるような顧客との関係性構築という手段もあります。

戦略基本パターン

同業界内におけるプレイヤーの競争地位によって、とるべき戦略の定石が異なります。リーダーは市場拡大および模倣と同質化を行いフルラインナップで展開します。そして規模を活用してコストリーダーシップをとることで優位性を作り上げます。チャレンジャーは模倣されにくい差異化を狙います。さらにフォロワーは廉価版の展開にて差別化を行い、ニッチャーは特定の狭いセグメントに集中する戦略をとります。

ここでのPR戦略は、リーダーであればコミュニケーションアプローチは市場拡大となり(市場が拡大すれば自社に流れる状態)、対象を広げて需要喚起を狙います。チャレンジャーでは差異化のための独自のレピュテーション獲得を狙います。ニッチャーでは狙っているセグメントに対して狭く深くコミュニケーションをとり、強固な関係性構築が重要となります。

STP

<セグメンテーション+ターゲティング>
顧客市場を細分化します。基本的には人口統計変数(デモグラフィック)、購買行動変数(ビヘビア)、地理的変数(ジオグラフィック)、心理的変数(サイコグラフィック)の要素が軸となります(製品についてではなく市場サイドを細分化するという点が大事)。セグメントごとの市場規模、成長性、シェア、KBF(重要購買要因)を分析します。KBFについてはQCDS:品質(Quality)価格(Cost)納期・入手(Delivery)対応(Service)を活用できます。そして、市場規模、成長性、シェア、KBF適合度、競合状況を踏まえて、狙うべきターゲットセグメントを選定します。

PR視点を組み込むと、市場魅力度を捉える際に関係性の築きやすさやリレーション獲得難易度、現在のレピュテーション等を加味することで、ターゲット選定をより効果的なものにすることができます。

<ポジションニング>
提供価値の明確化をします。提供するソリューションとしての効用を2軸で明確化し、競合状況もプロットし、顧客の心の中での位置づけとしてどこを狙うべきかを検討します。(市場ではなく製品サイドの効用・価値で軸を置くのが大事です)

独自のポジションを狙う際に、その効用・価値に基づいて獲得したいレピュテーション・PRメッセージを策定することで一貫したコミュニケーションを行いポジションを明確化することができます。

4P/4C

製品、価格、プロモーション、流通について検討します。STP分析に合わせて、具体的なソリューションに落とし込むことで、戦略的に設計をすることが可能です。それぞれの要素について戦略に対し最適な状態を検討します。

PR視点を取り入れると、製品に対しては、例えば環境配慮や多様性、インクルーシブ等の社会意識を踏まえた視点を取り入れることで社会と良好な関係を構築し差別化要因となります。またその品質を顧客に理解してもらうことで価格の許容度が高まります。また販促手段・プロモーションとしてももちろん活用が可能であり、流通においては物流や店舗と良い関係を築くことで好条件を獲得することが狙えます。

AIDMA/AISAS/SIPS/ファネル

カスタマージャーニー、消費者の購買行動フローを段階分けし可視化したもので、これまでいくつか提唱されています。大事なのは自社製品に対するジャーニーを設計し、どこで離脱しているか、原因は何か等の分析や、どこを対象に施策を行うことがインパクトが大きいかを検討することです。

PRアプローチでは全ての段階においてそれぞれ効果的なコミュニケーションが可能です。認知をとるためか、理解を促進するためか、購入意思を高めるものか、クロージングをするためのものか、目的を明確にしてPR活動を行うことで離脱を防ぎます。またインフルエンスファネルにおいてはよりエンゲージメントを高めることでNPSを高め、拡散をより大きくすることも狙えます。

ブランド想起・考慮

最終的に選択肢となりうるブランドである考慮集合がどのように選ばれるかの分岐を示しています。認知していても目的と合わなければ除外され、また非認知ブランドも環境から意図的もしくは偶発的に認知されることで考慮集合になりうるというものです。

非認知集合から認知集合になること、意図的認知をされやすい環境をつくること、また偶発的に認知させることなどを目的にPR施策をうつことが可能です。また認知されている場合も想起集合に入るためのブランディングも行うことができます。

WBS

これは入れようか悩んだんですが(笑)、実行計画を立てる際に作業を分解して構造化するものです。それにより、具体的な見積や工数、スケジュールが明確化し、責任者によってタスクが遂行されることで施策を実行していくことができます。

なぜ入れたかですが、PRアクションの計画についても、プロダクト・サービスに関するWBSに合わせて設計することが重要だからです。どのタイミングで何に合わせてどのようなアクションを行うかを連動させることで、効率的で計画的なコミュニケーションを行うことができます。


おわりに

はい、というわけでいかがでしたでしょうか??本当はセールス、CRMやカスタマーサクセスの話、NPS、調査・統計、ブランディングとかもっといろいろ書きたいことはあったんですが、今回はこんな感じでお願いします。序盤でお伝えの通り、経営課題やボトルネックがどの段階で生じているかを見極めて、そこに対してPRが戦略的にアプローチしていける可能性があるのでは、と考えています。

めちゃめちゃ長いnoteになりましたが、最後まで見て頂いたかたもいるのでしょうか・・・不安ですが、何か参考になったりヒントがあれば幸いです。それぞれ口頭で説明しながら補足できるといいんですけどね~

どちらかというと、組織やファイナンスの話のほうが興味がある人が多いですかね??どうでしょうか。このマーケティング編のシェアが多いと次をつくるモチベーションがグッと高まりますので、ぜひよろしくお願いします笑

何かご相談があるかたはお気軽にご連絡ください~

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