見出し画像

歩み

父と同じ誕生日に産まれる
この日は父が自分の店舗をオープンする日だったらしく「一番忙しい時に産まれやがった」と言っていた
店舗の隅にあるダンボールの中が僕の居場所だったらしい
缶コーヒーを与えると大人しくなるのでよく与えられており、子供の頃の写真には缶コーヒーを飲んでるものが数枚もあった
幼少期は病弱で病院通いも頻繁だったそう
そのため幼稚園へは年中さんから入った
年長さんになるころには身体も強くなり、サッカークラブに入った
小学校に上がると身体が小さいからか、よくイジメの的にされた
しかしそれに対抗しようとして先生に怒られることも多かった
深夜、トイレに起きると母の寝室で明かりが漏れており、中を見ると僕のテレビゲームを無心でやっている母がいた
その光景はあまりにも恐ろしく見て見ぬフリをして寝たのを覚えている
記憶にはないが、この頃父の愛人が家に乗り込んできたことがあったらしい
誕生日父にプレゼントは?と聞くと、「俺には?」と返された、まだお小遣いも貰えていないのにそう言われ、その日から誕生日プレゼントは無くなった
マンションで飼っていた犬が網戸を破り外に出たため、警察沙汰になり引っ越すことに
引っ越した先の学校では比較的友達とも仲良くなれた
中学にあがると野球部に入った
練習も厳しく監督も怖かったが、それが人としてまともな人間にしてくれたと感じる
周りが高校受験のシーズンになり父に相談したところ、「お前は高校行かずに働くと思ってた。で、高校行く金はどーすんの?」と返された
父の仕事を手伝うことを条件に高校に行かせてもらうこととなる
高校でも多くの友達ができ、それなりに楽しい高校生活を送れた
精神的にも成長したからなのか、自分の家庭が普通じゃないことに気付き始める
父はほとんど家におらず、いても居間で寝ていることがほとんど、外で飲み歩き女と遊んでいることは明らかだった
ある日父が仕事に出かけようと靴を履き家を出ようとした時に携帯がないのに気付く、母に持ってきてと頼み自分は玄関で待機していると「まだ見つからんのか!?早くしろ!」と怒鳴りつけた
それにイラつき「自分のもんぐらい自分で探せよ!」と父に言うと「なんだてめーその口の聞き方は?」と険悪な雰囲気になったところへ母が見つけた携帯を持ってきて、父は仕事へと向かった(本当に仕事だったかはわからない)
受験シーズン、専門学校へ行くことを決め入学金のためバイトを始める(もちろん父から金を出してもらえるはずもなかった)
専門学生になり学校〜バイト〜課題と忙しい毎日を送る
途中忙しい日々に身体を壊したこともあったが、何とか卒業することはできた
卒業まであと数ヶ月のところで父からバイトを辞めるように言われる
そして父の仕事を手伝うように言われた
バイト代は出すからとタイムカードに時間は書いていたが、お金をもらったことはなかった
父はカメラマンをしており公私共に付き合いのある社長さんと行きつけの焼き鳥屋で知り合い、その人の会社で働かないからと社長から直接誘われる
その社長からの誘いを受け、高級腕時計の販売店に勤めることとなる
会社での飲み会、帰り際に乗ろうとした飲み屋のあるビルのエレベーターで父と不倫相手に偶然遭遇
父は何事もなかったかのようにその場を立ち去る
最初はインターネット販売の部署で運営とWEBデザインをしていたが、2ヶ月ほどで大阪店へと転勤が決まった
初めての一人暮らしが大阪でスタート
1年目は深夜までのサービス残業ばかりで忙しかったが、2年目にはそこそこ飲みに行ったり楽しめた
再び転勤となり名古屋に戻る
本社勤務となり時間にも余裕ができ始める
名古屋でも一人暮らしをスタート
父と飲みに行くこととなり、父の同級生が働いているというSMバーに、そこで僕の名前がVシネ俳優の名前から取ったことを知る
その俳優は大麻で4度も逮捕されていた
PARCO店勤務となり、同じテナントの女の子と付き合うことに
父に呼び出され「絶対に迷惑はかけないから」と知り合いから借りるお金の保証人として名前だけ貸してほしいと頼まれる
過去にうつ病だった彼女は、同棲後に再び職場のことでうつ病が再発してしまう
うつ病の彼女を看病しつつも養いギリギリの生活を送る
父の返済が遅れているからとお金を貸した知人から毎月のように連絡が入る
父に連絡をしてもなかなか繋がらず、母に連絡をしたところ「そっちに連絡がいっても、あんたが払った分は遅れてもあんたに返してるんだから損はしてないでしょ!?」と言い返された
日に日に疲弊していく僕に気付き店長が声をかけてくれた
取締役に話がいき「いい方法があるかもしれない」とある会に参加するよう言われた
それは以前に先輩から止められていた宗教的なもので最初は断っていたが、社長から直々に「とりあえず一年続けてみて、ダメだったらやめればいい」と強制的に参加することに
しかし参加すると宗教ではないとうたっているが、やってることはまさに宗教のそれで、勧誘や物品の購入を促された
それから全くその団体への参加は関係ないが、彼女の容体はかなり良くなり働けるまでになった
ある日祖父から連絡があり会うことになった
喫茶店で会った祖父から「すまない」と頭を下げられた
父があんなにも自分勝手で理不尽な人間になったのは親である俺の責任だ、ということらしい
それから祖父は前に住んでいた高級マンションも父が勝手に保証人に祖父の名前を使っており、ほとんど祖父が払っていたこと
自分で会社を始めたのに家族経営で仕事を他に任せて遊び歩いていたこと
祖父は自分が祖母と離婚したことや、父の弟を自殺で亡くしたことで父に強く言えなかったことが原因であると感じていたらしい
それから少し祖父とお酒を飲める機会があり、いろいろな話を聞けた(父の話は嫌がると感じたのか、祖父の昔話が多かった)
一人で実家に帰った時のこと、母から「あんたあの子と結婚する気なの?母親になるのは精神的に厳しいんじゃない」と言われる
辛かったのはわかるが、なぜこの人は応援する、助けるという事が言えないのか、僕は泊まるのをやめて帰った
その後、宗教的な活動はどうしても合わず、取締役に辞めたいと伝える
社長より「この会社はあの教えを元に運営している会社だ。あの教えに合わないということは、この会社にも合わないということじゃないのか?」と取締役づたえに聞く
そして「辞めろってことですね、わかりました辞めてやりますよ」と伝えると、「明日から来なくていい」と捨てられた
人の幸せを願うはずの宗教的な考えをしているはずが、関与しなければこうもあっさり切り捨てるのか
会社を辞めて少ししたらカフェでアルバイトを始めた
それから彼女と過ごせる時間は少なくなり、過ごせたとしても彼女からは結婚に向けてとか、お金のことの話ばかりをされるようになる
それがプレッシャーとなり、逃げるようにバイトを掛け持ちしより家にいる時間を削った
ある夜、ふと目が覚めると隣で寝ているはずの彼女は僕のスマホを触っていた
暗証番号を解読し、僕のメール履歴を探っていたのだった
僕は怖くなり見ないフリをした
その事もあってか僕の気持ちは完全に彼女から離れ、別れることを決断
一人暮らしとなり、よりバイトを掛け持つようになった
朝から深夜までバイトをし、そこから睡眠時間を削ってまで飲みに行くことも
バイト先で出会った年上の女性といい感じになり付き合うことに
間も無くして飲み会の帰り、自転車に乗っていた僕は目の前に現れた車を避けようと停車していた車に激突
しかし目の前に現れたはずの車は誰も見ておらず、僕の幻覚だったのかも
その日から外に出ること、人目にふれることが次第に嫌になりバイトを休むようになる
彼女から病院を勧められ、うつ病であると診断された
掛け持ちしていたバイトを一つにしぼり、違う家で彼女と同棲をすることに
しかし症状は一向に良くならず、ある日僕はスマホを捨てて家を出た
自転車に乗り、目的地も決めずに走り続け、気付けば豊田市まで来ていた
きっと死場所を探していたんだと思う
ふと彼女のことを思い出し、漫画喫茶に入りSNSから連絡を取る
お願いだから生きて帰ってきてほしいと言われ、帰ることを決意
早朝ぼろぼろになって帰ると彼女は泣いた
そこからはほとんど何もできなく、外にもでられなかった
できることは絵を描くことだけだった
そんな日々も約3ヶ月が経ち、病状もかなり良くなった
改めてアルバイトを探し、働き始めることができた
そして始めた帽子屋で、岐阜で店長をやってほしいと言われる
バイトをして約半年後に店長として就職することとなる
それから1年も経たずにエリアマネージャーとなり、忙しいながらも充実した日々を送った
そして3年が経ち、突然会社が倒産
売上不振なのは知っていたが、まさか倒産するまでとは思わなかった
再び無職となり、名古屋に住む彼女の家へと戻る
その後は失業保険をもらいながら何とか生活していたものの、なかなか次の就職先が見つからなかった
約1年が経ち、最初に勤めた会社の先輩から誘われ働くことに
そして上京し、東京での生活が始まった
しかし上京後すぐにコロナ禍となり、仕事だけの日々が3年続く
コロナも落ち着きやっとまともな生活ができると思った矢先に再びうつ病が再発してしまう
そして現在、いつ死のうかと考えながら働き続けている
おそらく僕のうつ病は軽度と思われる
しかし以前うつ病を患っていた時、正直あまり記憶がない
それはうつ病だった時だけでなく、小学生・中学生・高校生・専門学生と、僕が思い悩んでいた時期であろう部分の記憶も定かではない
きっと自己防衛なのか嫌な記憶を消しているのだろう
もしかしたら上記の記憶もいずれ消してしまうかもしれない
その前にこの世にはいないかもしれないが
こんな男が一人生きていたことを今のうちにここに残しておく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?