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図書館に本を寄贈した話

結婚してからというもの、実家に置いてあるモノたちの整理をしている。
大きなものから小さなものまで、実家ではいろんなものに囲まれて生きていたのだと感慨深い気持ちになる。
そんなガラクタに近いモノたちをリサイクルショップに持ち込んだりメルカリに流して処分をしている。

マイナーな漫画に思わぬ高値がついていたり、書き込みだらけのゲーム攻略本でも買い取ってくれる人や店があるのは驚くばかりだ。

しかしどうしても処分できないものがある。
それが一般流通していない大型本。

具体的にどんなものかというと、『〇〇町××史』のようなもの。
これは私の所有物ではないのだけど、メルカリを使っている私の様子を見て両親が「これもいくらかになるだろう」と押し付けられた本なのだ。
『〇〇町××史』、間違いなく世の中の99.99%が興味を持たない本である。そもそも〇〇町は別の自治体と合併してその名前が残っていない。

そんな〇〇町××史は分厚い本の三冊セット、発行日時は50年近く前。
おそらく町の景気が良かったときにいっちょ作ってみるか!というノリで作ってしまったのだろう。
もちろんバーコードなどもなく、Amazonで検索しても商品情報が出てこない。
両親が言うには、祖父母のどちらかがもらったか買わされたものらしく、そんな来歴なので我が家で読まれた形跡がほとんどなく状態は悪くない。

もしかしたら希少本の類で、ネットで売りに出せば大化けするかもしれない……
そう思ってメルカリに出してみるものの、まったく反応がない。
定期的に値下げをして、送料ぎりぎりまで下げてみるのだけど購入者は現れない。
いったん出品を取り消して数か月後に再び出品し、赤字が出るレベルまで値下げしたのだが購入されることはなかった。

もしかしたら郷土史を研究しているもの好きな人でもいるかなと思ったのだけど、そんなタイプの人に琴線にも触れなかったようだ。

しょうがないので捨ててしまおうかと思ったのだけど、両親から押し付けられてはや半年。妙な愛着がわいてしまいビニールひもに縛って廃品回収に出してしまうのは忍びない気持ちになってしまった。

寄贈


そんな言葉がふと思い浮かんだ。
自分が押し付けられたものは、地元の図書館に押し付けてしまうのが一番いいんじゃないだろうかと。
図書館の利用者には高齢者も多いので、もしかしたらこの史料を手に取ってくれて活用してくれる人がいるかもしれない。

そんなわけで地元の図書館のページにアクセスしてみることにした。

どうやら思ったよりも寄贈される本は多いようで、寄贈お断りの条件が書かれていた。

・著しい破損のある本
・書き込みが多数見受けられる本
・大型の地図や模造紙の資料
・教科書
・布教用、広告用と判断される本

などなど(自治体によって違いあり)

どうやら手元の史料3冊セットは大丈夫のようだ。
念のため、電話をかけて確認をする。
「すみません、家の掃除で昔の本が出てきまして、可能であれば寄贈をしたいと思っているのですが……」
「はいどういった資料でしょうか」
「郷土史のようなもので、図書館さまのサイトを拝見する限り問題なさそうだと思いました。」
「ありがとうございます。寄贈は問題ないと思うのですが、それを図書館に必ず並ぶことになるというわけではないことをご承知おきください。」
「ああ、その辺はお任せいたします。」
「かしこまりました。では寄贈に際しては取り扱いを館長に一任するという書類にご署名いただくことになりますが、よろしくお願いします。」
「それでは時間のある時に、本を持ってお邪魔したいと思います。」

あっさり電話が終わった。
図書館側としては、寄贈後に取り扱いをあれこれ指示したり何度も扱いについて問い合わせをしてこられるのが迷惑なのだろう。

後日、近所の図書館の分室へ史料3冊を携えて訪問した。
司書の人へ寄贈したい旨を話す。
電話で寄贈については確認済みですというと、すんなり話は進んだ。

司書の人からは、「もし収蔵されたときにお礼状をお送りしているのですが……」と言われたが、断った。
御礼状を送る郵便代がもったいない。
司書さんに話しかけてから寄贈して図書館を出るまで5分弱。

あっさりするくらい楽に終わり、すがすがしい気分になる。
これで半年以上部屋のスペースを占めていた不要な本がなくなり、もしかしたら誰かの役に立つかもしれないのだから素敵なことだと思う。

皆さんの周りにある不要だけど捨てるのはもったいない本も、図書館に寄贈をすればどこかの誰かが活用してくるかもしれない。