ガムテープ

2020年6月24日

ガムテープを腕と足にくるくる巻いて。
そのまま足元に倒れてみる。膝を胸に寄せて、うずくまるようにして。
パイプ椅子の足が冷たい。頬に当たって冷たい。
ドアが開く音がして、茶色い革靴だけが見える。カツ、カツ乾いた音。ふと、その音が止まる。
「あれ?」
とぼけた声が上から降ってくる。
貴方は私の近くでしゃがみこみ、私の顔を覗き込んだ。
「こんなところに」
顎を掴まれて、立たされる。パイプ椅子に投げられて、ガシャリと大きな音が出る。
小さな部屋に響き渡る音、声はあげず、じっと貴方を見つめる。
貴方はそのまま去っていった。
鍵がかかる音、閉じ込められる音。
このまま、ずっとこのままここに入れる嬉しさが、胸に広がる。
パイプ椅子の冷たさが、身体に広がって身体の芯まで冷えていく。
温もりのない部屋はそのまま消えてしまうかのように、息を潜めてこの建物の中にずっと存在するのだ。
君はこの部屋のことを忘れられないのだ。忘れても忘れない。忘れさせない。貴方が消そうとも、消させない。

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