見出し画像

絵を描いて生地を作り、服や雑貨を作って端切れまで。

昔々のことになるけれど。
1992年に始めたオーガニックコットンの輸入仕事は、当時どこのアパレルに営業しても採用されなかった。そこで仕方なく自分たちで作ることになったのだった。

一番良さそうなのはベビーウエアだということで作り始めると、裁断残り(残反ーザンタン)が出る。当時は縫製工場も50枚、100枚という大量生産でしか引き受けてくれなかった。積み上げた生地をチェーンソーみたいにグラインダーという刃を使ってカットしていくのだ。大量にザンタンが出る。

エコを標榜して始めた仕事だった上に、生来の勿体無がりだったから、それを使ってぬいぐるみなどの小さなものを作った。小さなものは手作りするしかなく、内職さんが活躍したが、次々と発生する大量の端切れにいつも追いつかなかった。

その上、どうしても売れ残りをセールにかけなくてはならないので、それを見込んで価格をつけざるを得ない。そんな仕事のスタイルそのものがエコとは遠い。売っているのはオーガニックでも、やり方はちっとも有機的じゃない。

志半ばでその仕事を失う羽目になったのが、もしかしたら幸せだったのかも知れない。売れれば売れるほど端切れ=ゴミの問題が出るんだもの。誰がいつ買ってくれるかわからない服を作ってセールになる虚しさ悲しさと言ったら無いし。

だから、テキスタイル作家の娘に服作りを頼まれた時に、オーダーでやりたいと提案した。そうすれば売れ残りが出ない。だから適正な価格が付けられるとも思った。

服を作るのにかかる実費は、生地代、付属代、縫製などの作業費用、パッケージ。そのほかに会社運営費としてデザインやパターン制作、サンプル製作費、広告宣伝費などの通常の経費がかかるが、それ以外の純然たる原価をアパレルでは通常20~35%くらいにする。

店舗への卸販売で60%で売り渡すだけでなく、売れ残りを見越しているから全の利益は20%くらいになるのが平均水準。売れ残りを作らないなら原価はもっと上げられる、というか、売る値段をもっと抑えられる。

woo_textileの服は原価を45〜48%に設定している。自分でまず縫って、時間を確かめて最低賃金と見合わせて、もう一人の縫い手さんにお願いする。それでもちょっとまだ安くお願いしてるので、そこは今期から是正している。

このスタイルはストレスがない。それにオーダーをいただいてから作るので長さの調整にお応えできるものが多い。その上、展示で端切れを売っています。ケチくさいようだけど、これを以て私たちの仕事は完了となる、のです。

一番最後の小さなピースが、どなたかになんとか面白がって使ってもらって命を全うできたら、本当にうれしいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?