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師匠から学んだ心のあり方 Ep 1.5

H先生の勉強会には時々、子どもの患者さんがやってきました。
そのお子さんは脳性小児まひ(CP)という疾患を抱えていました。

脳性小児まひの子どもを指圧する

指圧といえば、肩こり、腰痛など日常的な疲れを癒すものとして知られていますが、まさか指圧でCPの症状に対するアプローチができるなんて、思ってもみませんでした。

ハンディキャップを背負った子どもを目の当たりにすることは滅多にない経験でしたが、なぜか「こわい」という気持ちが先に立ちます。
それは、見聞きしたことのないの領域に踏み入る怖さだったのかもしれません。

H先生は指圧をしながら、いつの間にか子どもの笑顔を引き出していきます。時には、親御さんでさえも見たことのないリラックスした表情を浮かべることすらありました。

「指圧で過緊張を緩めれば可能なことだよ」

H先生はそう話されます。
先生がお子さんたちを指圧する様子を何回か見学した、ある日の勉強会では、私たち受講生が子どもに触れて緊張を緩める、という機会が与えられました。

今まで見ていたからって、それができるとは限りません。
おっかなびっくり不安な気持ち8割、やってみようという気持ち2割。
そのような状態でお子さんに手を当てます。

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勇気をもって子どものお腹にそっと手を置くと、わずかに緊張が緩んでいくのが感じられます。相手の呼吸に合わせるようにして手を置くこと。
緊張(筋性防御)を生じさせないように、柔らかく手のひらを使ってお腹を押さえていきます。

指圧の心 母ごころ

徳治郎先生の仰った言葉は、誤解されている。
H先生はそう言います。

「指圧の心 母ごころ」は、お母さんのような優しい気持ちになって指圧しなさい、という意味に解釈されています。
しかしそれは、子どもが母親によくなってほしいとひたむきに母を思う気持ちのことだというのです。事実、浪越徳治郎先生はリウマチに苦しむお母さんを元気にしたいという一心で冷えて硬くなっていた腰を押していました。
それが指圧の原点とされているのです。

「相手の身体に触れることは、相手の心にも触れることだよ」

H先生はそう仰いました。
その言葉は、弟子が自信過剰にならないように。そして大切なものは技術のほかにもあることを、今でも伝えてくれています。


physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。