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2020年米大統領選における陰謀論拡散の一部始終

翌年の11月に迫った米大統領選挙だが、有力候補は共和党がトランプ、民主党はバイデンという前回の大統領選挙と同じ構図になろうとしている。前回と言えば2020年の米大統領選は異常な大統領選挙となった。選挙結果を巡り、DSなる謎の勢力が大統領選に介入したなどという陰謀論が拡散され、それを信じた人々はQアノンと呼ばれた。そして、その陰謀論は日本の保守界隈で特に広がりを見せ、保守系のネットユーザーの分断を招いた。

この時の分断は未だに解消されておらず、おそらく今後も続くことだろう。だが、なぜ日本の保守界隈でそのような陰謀論が拡散されてしまったのか。それは単に、保守系ネットユーザーが陰謀論に騙されやすいだけの話ではない。米大統領選の前に、その前兆ともいえる論調が保守系の論客たちの間で盛んに言われていたことが大きな要因と考える。

米大統領選の前、保守系のyoutubeチャンネルである虎ノ門ニュースや文化人放送局等で「トランプはアメリカ経済を建て直した人物であり、親族に汚職疑惑があり親中派と目されるバイデンに負けるわけがない」とする予測を多くの保守論客が主張していた。大手のチャンネルは概ねその予測ばかりだった。一方チャンネルくららやOTB系チャンネルでは、トランプの再選は危ういとする主張であったため同チャンネルの視聴者で陰謀論に嵌った人は少なかったのではと思われる。

そして選挙当日、初日こそトランプ優勢であったが徐々にバイデン優勢に傾き、数日後にはバイデン勝利は覆しがたい情勢となった。この段階で、保守界隈ではバイデン勝利を受け入れられない人々が続出し、不正選挙が行われたとする主張が保守論客たちからなされるようになった。彼らはいずれも選挙前からトランプ勝利は確実と前のめりな予測をしており、おそらく予測が外れたことを認められなかったのだと推察される。そして、ついには陰謀論を持ち出して不正選挙説を大々的に喧伝し始めた。

当初は、トランプ票が盗まれた、死人が投票していたレベルの内容だったが、徐々に陰謀論が織り込まれ投票用紙にGPSが仕込まれている、ドミニオンの投票結果を巡りドイツのフランクフルトで米陸軍とCIAが銃撃戦、DSが大統領選挙に介入した等常軌を逸した話を大真面目に繰り出したのである。結果として、多くの保守系ネットユーザーはこの陰謀論を信じてしまい、バイデン勝利を受け入れる他の保守派を悪と決めつけ攻撃し始めた。

そして、保守派は陰謀論派と現実派に分裂し、それは今もなお続いている。陰謀論派はその後、ワクチン陰謀論にも飛びつき限界保守などと言われる有様となった。また、陰謀論を拡散した保守論客たちは未だに自身の主張を訂正も謝罪もしておらず、言論活動を続けている。ここでは名前を出さないが、彼らについてはっきり言って今後何を言おうとも信じる気にはならない。

この2020年の米大統領選は、保守派にとって最大の分裂騒動だったのではと思う。陰謀論派の中には、自身の考えが誤りだったとして現実派に合流した者もいるが、残念ながら多くは未だ陰謀論・不正選挙を信じている。翌年の米大統領選もおそらく同じような陰謀論が飛び交い、保守界隈が混沌とすることは想像に難しくない。


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