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ナチスにおける誤った認識

ナチスというと1930年代にドイツの政権を取り、後に第二次世界大戦の引き金を引き、反ユダヤ主義のもとホロコーストを行ったとして知られるが、一方で戦前は的確な経済・失業対策のもと世界恐慌からドイツを建て直したと評価されている。しかし、これらについて実際のところ誤った認識がある。

・ホロコースト

まず、ホロコーストについてだがナチスは初めからユダヤ人の虐殺を計画していたわけではない。そもそも、ユダヤ人はナチスどころかヨーロッパで差別的に見られており、度々ユダヤ人を狙った虐殺(ポグロム)が行われていた。そしてナチスは党勢拡大にドイツ人の反ユダヤ感情を利用した。
政権奪取後、ユダヤ人に対する差別的な政策を施行し、ドイツ国内で反ユダヤ感情が高まるとユダヤ人の国外への追放を画策する。

当初は南米を追放先としていたが、世界恐慌の影響で失業率が高水準だったため移民受入れを拒否し、その間に第二次世界大戦が始まったことで計画は破綻。次にフランスの植民地であったマダガスカルへ追放する計画が持ち上がるが、物理的に不可能であるとしてドイツ国内や占領地に強制収容所を作りそこへ送り込み強制労働をさせることとなった。過酷な労働環境に加え、ドイツの占領地拡大に伴い収容所の人数が増大したことで衛生環境が劣悪になっていき、病死・餓死者が続出。それでも収容人数は増える一方だったため、ついに虐殺が開始されるという流れである。

・経済政策

次に、ナチスの経済政策だがこれも誤った認識が広まっている。世界恐慌からの経済復興でナチスは何かしら優れた政策をしたのかと言えばそうではない。まず、それまでのヴァイマール時代が金本位制であったため世界恐慌時になぜか金融引締めを行い、ドイツ経済は破滅的状況になった。それをナチスはやめただけであり、市場の貨幣量が増加したことで不況から脱したのである。

また、失業対策としてアウトバーン建設が挙げられるがこれはヴァイマール時代に計画されたもので、ナチスはそれをただ作っただけであり後のプロパガンダであたかもナチスの功績であるかのようにされてしまったのである。失業率の低下についても、大規模な徴兵を行ったほか女性を専業主婦にさせることで達成しており、経済政策がうまくいったからではない。

それどころか、ナチス時代のドイツは乳児死亡率が上昇する等、同時期の他国では見られない現象が起きている。これは、ナチスが農作物の自給自足を始めたことでドイツ国内の食料事情が悪化、子供たちの身長の伸びも止まってしまった。ナチスの経済政策は見かけ上成功しているだけで、実態はめちゃくちゃだったのである。

上記の事から、ナチスの経済政策だけはよかったなどとはとても言えない。結局、ドイツをある種の実験場にした政党だったとしか考えられない。

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