有機ＪＡＳ認証は消費者側からみると、安全な農作物を購入するときの基準となり、うまく機能しているように見える。しかし生産者側はどう考えているのか？
私に野菜を販売してくれる農家さんは有機ＪＡＳ認証を取得していない。この認証を持っていなくても、無農薬・有機肥料で野菜を作っている農家は存在する。また以前は有機ＪＡＳ認証を受けていたが、やめた人もいる。

農家さんに聞くと、
有機ＪＡＳ認証の取得には大量の書類作成と検査費用が毎年必要になる。正直に有機野菜を作っている農家からすると今までと全く同じ作業なのに取得しようとすると手間と費用が追加される。書類に手間をかけるより畑に専念したいと考える。
有機ＪＡＳ認証を取得するメリットはブランド化（有機○○、オーガニック○○など表示が可能）されて高値で販売できること。高値で売りたい農家は認証を取得しブランド化する。一方、書類作成や検査費用を負担と考える農家は、たとえ有機野菜であってもノンブランドで販売しなければならない。しかし無駄な費用をかけない分、安い価格で野菜を提供できる。

ノンブランドの場合、有機野菜の真偽は『農家さんの信用』だけが消費者の判断基準となる。「人を信用してモノを買う。証明なしで」。これは詐欺で引っかかる人の行動に酷似している。とはいえ、自分の身近にいる人にはできるだけ心を許して生きていきたい。日本人には先祖代々『お天道様はお見通し』という嘘つきや犯罪を戒める知恵がインストールされている。このインストール済の人間だけが私のまわりに集まってくると確信している。野菜のことを教えてくれる、少し小うるさい農家のおばさん。毎回何か食べ物を私にくれる。前回は手作りの恵方巻をいただいた。完全に手なずけられているのかもしれない。でも私はこのおばさんを信じることにした。いつも買う野菜には虫が付いてるし、たぶん大丈夫だろう。