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「週末に投資のアイデアを考える!一週間の経済ニュースから見る投資アイデア」

割引あり

このコーナーは毎週読んでいただくことで、マーケットの動きを理解する上で、知っておきたい基本的な経済ニュースへのリテラシーが高まると考えています。

さまざまな事例をお見せする事で、株式投資を行う人たちが普段接するニュースの中から、長期投資のアイデアご自身で発見できるようになる方法を身に付けていただくことを目標にしています。
 
例えば、グリコのシステム障害でグリコの「プッチンプリン」やキリンビバレッジの「トロピカーナ」出荷停止になったというニュースがありました。

このニュースを見た時に、私は「2025年の崖」がいよいよ顕在化してきたな、と考えました。

その様な時に、コーナーでは「2025年の崖」についてかんたんに説明します。そこから、さまざまな投資アイデアを、皆様自身で考えていただきたいと思っています。
 


<マーケットチェック>


中東問題
19日に、「イスラエルがイランを攻撃」との報道があり、株価が急落したこともあり、中東情勢に注目が集まっていましたが、とりあえず現時点では、イスラエル・イラン問題はエスカレートしていません

ただ、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ最南部ラファへの地上侵攻の準備を進めており、中東情勢は引き続き予断を許さない状況です。

株価
先週比では戻していますが、上値が重くボラティリティの大きい展開が続いています。

中東不安の高まりや、米国金融政策への懸念などが説明に使われていますが、基本的には年初からの上昇が強すぎたので、その反動が出ていると考えておいてよいと思います。
 
為替
為替はじりじりと円安が進行していましたが、日銀政策決定会合後に一気に円安が加速し、NY市場の引けまでになんと3円近く円安、ついに158円台に入っています。為替介入への警戒感が強い中、植田総裁の発言で当面は為替介入なしと考えた短期筋のポジション調整が原因の1つと考えられます。
足下の為替の動きは金利差だけでは説明が難しくなっています。最近マーケットでは国際収支の発展段階説に関する議論もされていました。これは明日記事に書きます。

注意したいのは日本の長期金利も上昇している事です。

原油
原油価格は中東情勢が懸念されていましたが、比較的落ち着いた動きでした
 

さて、円安の進行もあって年初来でドル建てでもSP500&ナスダックをアウトパフォームしていた日経平均も4月以降SP500やナスダックに逆転されています。TOPIXのアウトパフォームもかなり小さくなってきました。
 
年初から日本株が予想外に大きく上昇したことから、日本株に対する注目度していた外国人投資家の日本株に対する注目度が低下する事が懸念されます。
ただ、個人投資家が新NISAの成長投資枠で日本株を買っている事は注目されます。オルカンばかりが注目されていた中、成長投資枠で日本株を買っていたということ自体がサプライズですが、もしこの下げ局面でも買っているとすれば(現時点では統計がないので分かりませんが)、逆張りで心強いですね。
 
さて、今の日本は緩やかなインフレ、緩やかだが着実な金利上昇、米国の金融緩和期待の後退を背景としてドル高・円安、この状態は基本的には日本企業にとって良いマクロ環境と言えます。

前回外国人投資家による日本株投資が注目されたのは、2005年~2006年ですが、その時も今回と水準は異なりますが、方向性としては似た環境でした。
当時はFRBが金融引き締めを開始し、米国株の上昇が緩やかになる中、円安を背景に日本企業の業績は好調で日本株が人気化したわけです。
 
今後もこのコーナーでは日々の値動きではなく大局的にマーケットを見ていきたいと思います。
 
 
 

<注目したニュース記事>


グリコ障害で出荷停止、基幹システム更新に「2025年の崖」


 江崎グリコの物流センターでシステム障害が発生。会計などの業務を一元管理する統合基幹業務システム(ERP)を全社的に切り替えたところ、障害が発生したと言われています。
 
5月中旬の出荷再開を目指すとのことですが、「プッチンプリン」などのグリコ製品だけでなく、「トロピカーナ」などキリンビバレッジがグリコに販売を委託する一部飲料も出荷が止まっています。
 
これは「2025年の崖」と言われる、日本企業が抱えるリスクが顕在化した事例とも言われています。
 
「2025年の崖」とは経済産業省の「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」により提唱された言葉です。
 
あらゆる産業においてデジタル技術を活用したビジネスの推進が求められていいまずが、企業は複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを使用しており、それが限界に達しつつあることから生じる問題です。

2025年以降には、既存システムが残存することによる課題に伴う経済損失が、最大で年間12兆円(現在の約3倍)にまで増加する可能性が指摘されています。

このことを「2025年の崖」と呼びます
 
日本企業の社内システムは、技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等の問題があり、新しい技術が出てきたとしても、既存システムに取り込むめず、非効率な体制が維持されることになっています

根本的な課題解決を行わず、短期的な視点でシステム開発を行ってきた結果、高い保守費や運用費といった技術的負債が蓄積されており、企業はIT投資をしてもそれを成果に繋げることが出来ない状態となっています。

複雑すぎるシステムのためサイバーセキュリティや、有事の際のシステムトラブル等のリスクが高まっている

そんな中、既存の各種システムのサポート期間が終了していく
 
このように問題が明らかになっている日本企業の社内システムですが、なかなか克服は難しいようです。

DX推進は、経営戦略そのものだが、経営層にITに関する知識が不足

新システムを導入すると、既存の業務フローやビジネスプロセスを刷新が求められる事もあるため、現場サイドも抵抗

各部署が個別最適化を優先した結果、システムが複雑化し、企業全体での最適解を誰も分からない

DX推進のためには、社内にシステムに精通し業務フローも理解できている人材が必要だが、ITエンジニアはシステムベンダー企業へ所属しており、ユーザー企業はシステムに関するノウハウが圧倒的に不足している。
 
私の理解では、海外企業はシステムのバージョンアップの際には、システムに働き方を合わせる形で対応します。日本は現在の仕事の仕方を変えず、システムのカスタマイズで対応する場合が多いとされています。

簡単に言うと、企業サイドがシステムを理解せず、システムエンジニアも企業の仕事を理解していない事から、現状のやり方がそのまま踏襲されているのだと思います。

日本の社内システム改革は、日本企業の生産性を大幅に向上させるポテンシャルがあると共に、それに対応できない企業はIT投資をどれだけやっても効果が出てこないという事になる可能性があります。
社内システム投資の考え方は、ユーザー企業にとっても、解決できるソリューションを持つIT企業にとっても、極めて重要なテーマになりそうです。
 
 

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