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「動物病院四方山話」20(猫アレルギーが!?)

私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています

前回の動物病院四方山話はこちら


この話は里塚が体験した話ですが、アレルギーをお持ちの全ての方に当てはまるものではありません。
ご注意ください。



まだ成猫になっていない、シャム柄の猫さんが段ボール箱に入れられて来院された。

「この子、交通事故にあったみたいで家の前にうずくまってたんです。」

背中には、その時出来たと思われる傷が痛々しかった。

レントゲン検査をすると背骨が折れていて、腰のあたりで骨が上下にずれていた。

背骨の中には、脊髄という大きな神経が通っているのね。
脊髄っていうのは、脳からの命令を手や足などの体の隅々に伝える大切な神経なの。

脊髄が損傷を受けるとその場所によっては、体に麻痺が残ってしまうのよ。

この子はちょうど背骨の真ん中位で脊髄が損傷してしまっていたので、下半身不随になってしまったの。
後ろ足を動かすことができなくて、自分でおしっこもすることができないわ。

このままだと一人では生きていけない・・・

その日は一旦入院して、保護していただいた方と今後どうするか相談することになったの。

次の日、保護した方が来院されて、

「私のお友達が、それでもいいから引き取るって言ってくれたんです。」
「おしっこを出してあげる方法や、気をつけることを教えてもらいたいって言ってくれてるんですが、明日一緒に来てもいいですか?」

とおっしゃったの。

早速、その次の日にそのお友達と一緒に病院に来られたわ。

その子を一目見てそのお友達は、

「まだちっちゃいのね、可愛い。」
「シャム柄の子ね。」
「お顔が茶色いから、名前は『チャイロちゃん』ね。」

あっという間に名前が決まったわ。

ふふっ、命名のセンスは一平ちゃんと同じね。

体はベージュ色なんだけど、顔周りと手足の先、しっぽが濃い茶色だったから
チャイロちゃん』


一平ちゃんはおしっこを出してあげる方法を説明し始めた。

猫さんの場合はね、両足の付け根辺りのお腹を手で包み込むように優しく握るの。
膀胱におしっこが溜まっていると分かるわよ。

膀胱の大きさがニワトリの卵くらいの大きさだと、少し溜まっている感じかしら。
野球のボールくらいあったらおしっこを出してあげないといけないわね。

おしっこを出してあげる時は、お腹の外から膀胱を握ってじわじわ圧迫するの。
そうしたらおしっこを出してあげる事ができるのよ。

最初は力加減が難しいんだけど、その方はとてもセンスが良くて、すぐに上手におしっこを出してあげるようになられたわ。

一平ちゃんは

「これを毎日してあげないといけないのですが、大丈夫ですか?」

とそのお友達に念を押して聞いていたわ。

その方はお子さんも独立して基本的に毎日家にいるので大丈夫、とのことだった。
それから色々お話をお聞きして、一平ちゃんは
この方だったら大丈夫!
と思ったそうよ。

その後数日は病院に入院。


入院中、チャイロちゃんはみるみる元気になっていったわ。

もう痛みもなくなったのかしら?

前の手だけで、入院室の部屋の中で動き回っているわ。
背中の傷もかさぶたになってきたし。

抱っこされておしっこを出す事にも慣れてきたみたいだし、そろそろ退院ね。

こうして数日後、新しいおうちに帰って行ったチャイロちゃん。

チャイロちゃんはとっても人懐っこかったので、その方のおうちにすぐに馴染んだそうよ。

家の中を元気いっぱいで動き回っているみたい。
ソファーの上に上げてあげても、いつの間にか自分で降りて全然違う所にいるんだって。

しばらくはケガの治療に来られてたわ。
そうしたらね、背中のケガがきれいになったら、そこから新しい毛が生えてきたの。
もともとベージュの毛が生えていた場所なのに、なんと
濃い茶色の毛が生えてきたのよ!

時々経験する事なんだけど、
皮膚のケガが治って毛が生えてくる時に、前より濃い色の毛が生えてくる事があるのよ。

なぜだか分からないけど、不思議よね~。

チャイロちゃんは、もう一つ注意してあげないといけないことがあるの。
自分でおしっこができない子は、膀胱炎になりやすいのよ。
だから、たまに膀胱炎になって病院に来ていたわ。

病院に来られる時は、その方はいつも長袖を着られていたの。
真夏でもよ。

日焼け防止で着られていると思っていたのですが・・・


ある日、世間話をしている時に、

「実は私、猫アレルギーなんですよ。」

とおっしゃったの。

一平ちゃんもびっくりして、

「えっ!?」
「チャイロちゃんのお世話、大丈夫ですか?」

と、お聞きしていたわ。

「長袖を着ていると何とか大丈夫なんです。」

っておっしゃったの。

チャイロちゃんと肌が触れるとかゆくなるので、必ず長袖で接しているそうなの。

ところがよ!

次の年の夏、病院に半袖の服で来られたのよ!!

「あれっ?、猫アレルギーは大丈夫ですか?」

一平ちゃんも驚いていたわ。

「そうなのよ。いつの間にか治ったみたいなの。」
「だんだんかゆくなくなってきて、半袖でも全然平気になったのよ。」

とおっしゃったの。

「一緒に暮らすと治るんですかね?」
「そういえば同じようなことを言っておられた方が何人かおられました。」

そういう方って、たまにおられるのね。

アレルギーの治療で「減感作療法」というものがあるのね。
猫さんと生活していくうちに自然に減感作療法ができていたのかもしれないわね。

おわり

* * *

この話は里塚が経験した話ですが、全ての人に当てはまることではありません。
アレルギーの程度はその人によって全く違いますし、命にかかわるようなアレルギーをお持ちの方もおられますので気をつけて下さい。

心配な方は、『人間のお医者さん』に必ずご相談くださいね。


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