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Mr.Children「miss you」とは

今回はMr.Childrenの最新アルバム、「miss you」の感想記事になります。

発売されて4ヶ月以上経っていますが、それだけこのアルバムは考える、思考する必要がある作品だと感じています。

そもそもタイトルはなぜ「miss you」なのか?

最近のメンバーの様子からして、miss youの「you」は恐らくファンを指しているものと思われますが、作品の内容はファンに向けてのメッセージ性からはややかけ離れている内省的なものでした。

なのでこの疑問に対するある程度の答えが何となく僕の中でまとまったので「ようやく感想を書ける!」と思い、今これを書いています。

「miss you」には2つの側面があると思っています。
前述したようなファンに向けての意味と、純粋な作品としての意味と。

Mr.Childrenは2022年に30周年記念の活動としてベストアルバムをリリースし、新曲を発表し、ドーム、スタジアムを周るツアーを開催し、もう十分すぎるぐらい感謝を伝えまくり、その時間を共有しまくっていました。

ですが2022年と言えば、まだまだコロナ禍の真っ只中。恐らくメンバーはファンからの生の声が聞けない事、マスクで表情が見えない事に寂しさを感じていたのではないでしょうか?

ライブ中のMCで桜井さんは「声は聞けないけれどみなさんの手拍子、拍手の温かさを感じられて嬉しい」みたいな事を話していました。

けれど、そもそも「innocent world」の1番をAメロからサビまで観客に歌わせちゃうような桜井さんです。そこに寂しさを感じていないはずはありません。

そんな状況の中30周年の活動は一区切りつき、次の活動の方向性を決めていくタイミングになった所で2023年になり、コロナが5類に移行されるという話が飛び交うようになりました。

「やっと観客の声が聞けるライブができるかもしれない」。

でも、とはいえまだ余談を許さない状況です。そこでアリーナやスタジアムのようなだだっ広い会場ではなくホールでならやりやすいんじゃないか?バッシングを受ける可能性も低いんじゃないか?こう思ったんじゃないかと。

そして、30周年を経て次の作品をどう作っていくのか?
前作「SOUNDTRACKS」の時に桜井さんは「もうこれを超えるものを作れる気がしない」と語っていました。

かつ「半世紀へのエントランス」と言いながらもメンバーはみんな50代。50周年を目指すとしても体力は衰えていくし、今までやってきた活動をそのまま継続できるかはわからない。

なので、大風呂敷を広げず派手に作ることもせず、また前作を超えようと意気込む事もせず、ただ等身大の自身たちをシンプルに表現する作品を出しておくのがいいのではないか?

恐らく、こういった作品は世間に広く好まれるのは難しいです。実際にテーマ的には似ている1996年発売の「深海」は売れ行きは良かったものの発売当時の評判は好き嫌いが真っ二つに割れたそうです。

ただ、ホールツアーをやるならそのキャパの狭さ故に、例えそんな作品でも愛してくれる愛情の深いファンがライブに来てくれるはず。

そんなファンに甘えてみたい、触れてほしい、空間と時間を共有したい、miss you。そんな気持ちで作られ、アルバムだけじゃなくライブツアーも合わさって初めて完成するものである。

普段はアルバムをリリースしてそれを引っ提げてライブツアーを周るのが基本ですが、「miss you」はその両方があって成り立つ。

これこそが「miss you」の正体なのだと感じました。

さて、ここからやっとアルバム「miss you」の話に入っていきます。

このアルバムと向き合うためには、それなりの覚悟とMr.Childrenに対する愛情の深さが必要になってきます。全体的にキャッチーさは無いし、気を衒ったような曲も、とある1曲以外は無いですし。

そしてこの内容で「miss you」というタイトルなのにはずっと疑問を感じていました。

でも1曲1曲単体だと難しいけれど、全体で聞き込んでみると、実はかなりシンプルなのがわかってくるんです。

「I MISS YOU」「LOST」で自分の感情を吐露し、「Fifty`s map〜おとなの地図」「青いリンゴ」で50代なりの苦悩と夢を語り、「アート=神の見えざる手」「ケモノミチ」で自分の醜い部分でさえ剥き出しにしてぼやいて吐き出して。

そんな風に自分の色んな内面を切なく激しく時には淡々と歌いながら、最後の「黄昏と積み木」「deja-vu」「おはよう」では、ただただ「君」に対しての想いを歌うんです。


「miss you」全体で歌ってることって実は難しくなくって、「色んな事があるけれど、結局「君」と過ごす時間がただただ愛おしい。」こんなシンプルな事でしかないんです。

「果てしない闇の向こうに手を伸ばそう」「高ければ高い壁の方が登った時気持ちいい」「雨に降られたら乾いてた町が滲んで綺麗な光を放つ」などなど多くのメッセージを届けてきた国民的バンドMr.Childrenが30周年を経て、導き出した言葉はこんな単純な事なんです。

でも、これってアルバム「HOME」の頃ぐらいから桜井さんが歌ってきた事ではあるんですよね。

「才能が枯れた」と言われがちですが、聴き込んでるファンからしたら、こういった意味で制作のスタンスは変わってませんし、むしろ今回の「miss you」こそ最高傑作とは言えないまでも、桜井さんの才能は存分に発揮されていると断言できます。



長く書いてきましたが、「miss you」は初心者にはオススメしづらいアルバムではありますが、Mr.Childrenを好きであればあるほど、各々の読解力で楽しむことができるそんな作品です。

今回書いた内容は、僕の読解力と妄想で書いています。いつかインタビューとかで「miss you」についてメンバーが語ってくれた時に答え合わせができたら嬉しいですね。



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