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35歳のNZ留学【光と影:ホームレス】

どこにでも光と影、良い面とそうでない面がある。
ここオークランドの中心部にはホームレスが多い。特にメインの通りであるクイーンストリートには、数メートルおきにホームレスが寝転がっている。数メートルもなく並んで寝るホームレスたちもいる(彼らはクルーなのだろうか…?)。道路を挟んだ向こう側にもいるし、有名ブランド店でスーツとサングラスのイカついドアマンが立っているすぐ傍にもいる。通り沿いのスーパーの入り口にもやっぱり彼らはいて、コインの入った空き缶をジャンジャンと鳴らしお金を要求する。そんなクイーンストリートは私の通学路でもある。私は毎日そこを、彼らの前を、通り過ぎるのである。彼らはいつも同じ場所にいて、覚えるのが得意ではない私でさえ彼らの顔や風貌を認識している。ある日不意に、本当に不意にホームレスと目が合ったところ、身を乗り出して「f**ck!」と言われ唾を吐かれた。私は一瞬ビクッ!として、すぐ後には”唾がかからなくて良かった…”と心のどこかで思った。他の場所でも通りすがりにこのFワードを言われたことがある。パーネル事件のこともある(*前記事参照)。学校の若い子には「目を合わせちゃダメ」「無視無視」とアドバイスされた。確かに。彼らの枕元には良くない白い粉と袋が落ちている。空き缶と空き瓶が散らかっている。夜になるとバス停にたむろし、突然喧嘩をおっ始める時もある。しかし完全に無視することなんてできるんだろうか。だって彼らは確かに存在しているのだ。私は図らずも認識している。一方で、見廻り隊のようなゼッケンをつけた人達がホームレスと楽しげにまたは神妙に話している姿も見る。会社員みたいな人が彼らに話しかけ、空き缶の中にコインを入れて「頑張れよ!」みたいな雰囲気で去っていく姿も。

ある夕暮れ時、スーパーの前に見慣れないホームレスが増えていた。段ボール紙にマジックで何か書いてあるけれど、立ち止まってまじまじと見る訳にはいかない。私は通り過ぎる。しかし、一瞬見えた彼の表情が気になり私の心の中はぐるぐるし始めた。外で寝るにはオークランドの冬は寒すぎる。風も吹く。食べる物はあるだろうか。私は今学生で、自分の生活も危ういからお金はあげられない。けれど今、手にドーナツを3つ持っている。さっきまでアヤノちゃんとヴィーガンマルシェに行っていて、マザーとファザーとハビエラに買ったおみやげ。
…もし声をかけたら私は危ない目に遭うのだろうか。彼もFワードを言うだろうか。
通り過ぎてややしばらくぐるぐるしていたが、結果やはり無視できなかった。私は路地で立ち止まり、次に英語で何と伝えるか考えた。そして100メートルくらい来た道を引き返しホームレスの前に立った。勇気。初めに「Hi」と言ってそれから、
「I don’t have money,because I am student. But I have a donuts. If you need…」彼は頷き私はサッと紙袋ごと渡して「バイ」とすぐにその場を離れた。
受け取った彼の反応や表情などは全くわからない。
束の間の勇気は一瞬飛び出して消えてしまった。

あー…とってもかわいいドーナツだったけど…

翌日、クラスメイトにその話をした。「よくできるね」「優しすぎ」などと言われたが、自分としてはそれが優しさだったのかは分からない。ただ誰もが寒い夜にお腹を空かすことがないように、温かく休める場所があるように祈るだけである。

タイムリーに(というかずっとホームレスは存在している)、学校の授業で”問題と解決策”のトピックが扱われ、単語の中にHomelessがあった。私は先生になぜここはこんなにホームレスが多いのか聞いた。先生は分からないと首を振り、コロナの後からより増えたと付け加え、家があるのに帰らない者もいると教えてくれた。この週のプロジェクトは、社会問題を自分たちで取り上げ解決のために何をするかグループ毎にプレゼンすることだった。私のグループは保護猫問題を取り上げ、他のグループには”海の環境保護””絶滅危惧種を守る”があった。興味深かったのは、”ホームレスを減らす”をテーマにしたグループ。日本人大学生と他国の若者のプレゼンによると、まずは仮設住宅を建てホームレスが安全で衛生的な生活ができる環境を整える。そして彼らの職を探す。生活が安定してきたら次の家を探し、見つかれば仮設住宅を出てもらうというもの。あくまでこれは授業なので現実味があるかとかは関係ない。大事なのは問題に向き合う姿勢である。そう、問題に向き合う姿勢。The important point is………

キラキラで超ラブリーなヴィーガンドーナツです。
キラキラしていてラブリーなものが大好きなハビエラには写真だけ見せました。ハビエラは子猫でも見るかように「Oh~,cuuute」と言っていました。

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