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35歳のNZ留学【私を噛んだ者の正体】

痒い!
夜中に猛烈な痒さで目が覚めた。これは何だ…?
今まで感じたことが無い種の痒さ。蚊に刺されたのともダニに刺されたのとも違う。久々にアトピーが悪化したか…?とも思ったがそれも多分違う。
とにかく痒くて寝ていられない。
痒い!眠い…痒い!!
一度起き上がってみたものの寒くてまた布団を被る。ベッドに寝たままゴソゴソと右足のつま先で反対の足の甲を掻き、ふくらはぎを掻き、右手では腕や首の辺りを掻きむしる。そうしてうとうとしたり掻きむしったりしているうちに朝を迎えた。朝起きて自分の手足を見てみたら、何と言うことだろう。あっちもこっちもブツブツに刺されている。2ミリくらいの赤いブツブツが一部では星座のように点々と並んでいる。星の美しさのかけらもないが配置がまさにそれなのだ。青く透ける足の血管に沿って等間隔に見事に刺されている。ブツブツはざっと見ても20はある。それに一晩中掻きむしったので乾いた血の跡までついている。この刺され方、やはり蚊もダニも違う。これはただ事ではない。朝になっても痒みは治らず引き続きあちこち掻いている。ハビエラにも見せてみて驚かれたが解決策はなく、私たちが朝に登校する時間はファザーもマザーも寝ているのでひとまず学校へ行く。集中できない午前の授業を終えると私は家に直帰した。私のベッドに潜む何者かを見つけるまでは安心できない。とりあえずのシャワーを浴びてマザーにブツブツを見せる。マザーは「Uh-oh!」と言いすぐに痒み止めの塗り薬を持ってきてくれた。鏡でよく見てみたら背中にも脇腹にもある。鏡越しに薬を塗りながら、絶対いる…と確信する。
畳んである掛け布団をそうっとめくる。
静かに目を凝らし、隅から隅まで。

い、いた…やっぱりいた!

掛け布団の隙間に小さな薄茶色の生物。
ノミ!

ノミをこの目で見るのは実に小学生以来である。
今でも覚えている。学校の帰り道、段ボールに入れられ草むらに捨てられていたミャーミャー鳴く白い仔猫たち。白くてかわいいふわふわに触りたくて手を伸ばした瞬間。仔猫からピョンピョンピョンと跳ねて出てきた数匹のノミのことを。
間違いない。今目の前に私が見ているのはあの時と全く同じ生物だ。
私はそいつをティッシュで捕まえた。…はずだった。
確認しようとティッシュを開いた途端、突然ノミはピョーンと跳ねて床に着地した。まだ生きてる。今度はスリッパで勢いよく叩いた。そのまま「ジョーイ!ジョーイ(マザーの名前)!プリーズ、カムヒアー!」と叫びマザーがどうしたと部屋にくる。今日は帰りが早かったハビエラも何事かと見にくる。今このスリッパの下にノミを捕まえたことを伝えるとマザーは険しい表情でスリッパを上げ覗き込んだ。そしてノミを見つけると容赦なく指で押し潰した。後ろから見ていたハビエラはそれでは足りないと言い、ノミは彼女の長く綺麗なつけ爪の先でプチッと完全に潰された。
マザーは飼い猫のブルーイのせいかもしれないと私に謝った。ブルーイは部屋の入り口からじっとこちらを見て”違う”というような顔をしている。
I know,わかっている。ブルーイごめん。これは多分ブルーイのせいではない。実のところ私には心当たりがある。前日に雨上がりの公園の濡れた草むらを歩き、ぬかるみに足をとられて何だか嫌な予感がしていたのだ。帰って靴はしっかり洗ったけれど、脱いだジーパンは一度ベッドの上に…

とはいえ本当のところは誰にも分からない。

ノミが1匹見つかった以上対策は一つ。寝具と衣類の全交換である。剥がした寝具と衣類は袋に入れて厳重に縛り明日洗濯される。ハビエラのと合わせてベッド2台分の寝具全交換。外国のベッドは大きい。マットレスは厚くて重い。もうみんなへろへろになって、すっかり日も暮れかけていた。

<番外編>
学校ではちょうど受動態を習っている。
「〜によってーされた」 主語+be動詞+過去分詞
<例>
I am liked by people(私は人に好かれている)
The book was written by her(この本は彼女によって書かれた)

そんな例文が並ぶなか私が作った受動態の文章

I was bitten by a flea!

(私はノミに刺された)


Fleaはフリーマーケットの語源なんですって。
蚤の市とか聞いたことあります?


きみじゃないよね


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