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久坂部羊さんの「オカシナ記念病院」を読みました。

医療エンターテイメントというジャンル表記があったので、軽い気持ちでページをめくっていくと、序盤でその手が止まり、考えるのを避けていた大きな命題に突き当たってしまいました。

とても軽快な感じで、その病院の医師たちの死との向き合い方を表現しているものの、QOLを向上もしくは維持するために必要な医療の在り方を描いている内容は、エンターテイメントとは言い難いと思いました。

「尊厳死」のありかたともつながる一連の医療方針は、医療制度の在り方にも疑問を投げかけ、はからずも、自分が以前から持ち続けた、医療体制への不信を思い出させるものでした。

つい先ごろも感じたのですが、安心を得るために検査をする事実。
その検査が多岐にわたりすぎて、結局得られた安心は自己暗示によるところも小さくないという事実。

しかし、実際に早期発見で命が救われるという事実。
あるいは、治療により寛解をすることができる病気は決して少なくはないという事実。

ですが、結局貧困や生活格差の問題にも波及するロジックは、経済的な格差とともに命に優先順位がつけられる事実。

それらをどこをどんな風にきりとっても、現代の長生きが良い事ばかりではないという事実に行きつき、やがて「死の受け入れ」という観念に収れんされて行くのではないかという気がします。

これから自分にも降りかかる老後の生き方を、できることなら今のうちから決めて、人生を楽しみながら死を待てるようにするために何が必要か?お金だけではなく、心の割切りのきっかけを探す旅に出たいと思いました。

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