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本当に○?クライシスプランでウィンウィン作戦!そのに

そんなにうまく物事はすすみませんでした。
結局こんな書き出しになってしまいます。
プランは学校やお出かけへ行く前にするようにしました。プランをチェックすることで、毎日自分のコンディションと向き合い、学校へ行けるかどうかや予定がこなせるかを判断します。緑ならいいですが、黄や赤の場合はどうするか、立ち止まって考えることが出来ます。

始めてからずーーーーーっと緑でした。
娘ちゃんは、毎日毎日自分のコンディションを全て○と書きました。
1.薬は飲みましたか?→○
2.よく眠れましたか?→○
3.食欲がありますか?→○
4.気分はすっきりしていますか?→○
5.幻聴は大丈夫ですか?→○
いつもいつもパーフェクトなんです。
泣き、叫び、暴れ、物を投げ、壊し、人をたたき、リビングを戦場と変え、家族を凍り付かせた後にも、平然と○を書きます。
ちょいちょいちょい!!
黄だよね!?今これ黄通り越して赤かな!?緑ではないよね??
こちらが勝手に×を書くわけにはいきませんので、一応本人がどういうつもりで○を書いているのかたずねてみます。
「ね…ねぇ…。あのさ、ちょっとママには○に見えなかったんだけど…?ほんとに今日は緑…?」
「………チョット キイロダッタ…」
ちょっと黄だという自覚はあったようです。
テヘみたいな。ペロみたいな。
「…じゃ正直に書こうか。△かな?×かな?」
しぶしぶ○の隣に△を書く娘ちゃん。初めて○以外の表記がされました。
「調子が悪かったら、正直に△でも×でも書いていいんだよ。」
「……」
「今日は△があるから黄かな?黄の時はどうするんだっけ?1日休息するってなってるよ。無理しないで、お休みしていいよ。お部屋行く?」
叩かれました。怒った表情でなんか物を投げてきます。やっぱり調子悪いじゃん。
リビングのただならぬ気配に、パパもリビングへやって来ました。
「娘ちゃん、調子悪いなら今日は家で休んでたら?イオンはいつでも行けるから。」
パパにも物を投げます。そしてパパに拘束されています。
どうしたらいいのだろう。イメージと違うな。いろいろ。

しかしその後も、○ばかり書き続けました。どんなにイライラしても、号泣しても、物や人に当たっても、毎日○です。緑のシールばかりが減っていきます。
「今日△じゃない?」「○じゃないでしょ?」なんて、あんまりダメ出しするのもどうかと思うし、言いにくいし、だいたい私が決めることじゃないはずだし、本人が○を書くなら、それを信じて尊重したいんだけど…。したいんだけど…。
ここまでくると、私は完全に娘ちゃんの申告を疑っていました。なぜ○以外を書かないのか?なぜ自分の不調を認めないのか?
『自分で決めたプランなら守りますよ。だから本人が自分でプランを考えないといけないんです。』
ドクターの言葉が浮かびます。そう言われたから全部一緒に考えました。本人と一緒に考えたプランのはずです。なぜなんだ。
これじゃあ、プランをやってる意味ないんじゃない?プランを活用したウィンウィン生活どころか、プランのせいで逆にギスギスしてきていないか?プランを書く瞬間に生じる緊張感すごいし。

私はドクターへ相談しました。
娘ちゃんにはちょっと聞かれたくなかったので、先に退出してもらいました。
ドクターと1vs1です。
「はい、お母さんどうされました~?(ニコニコ)」
「クライシスプランを始めましたが、いつも○なんです!どんなに調子が悪かろうが、いつも○なんです!こちらからしたらどう見ても△や×なのに、○書くんです!自分で決めたプラン内容なのに、休息することもしないし。私達に心配かけないように○にしている気もします。これはどういうことでしょう?どうしたらいいですか!?プランが機能しません!!!」
ドクターはじっと私の話を聞いてくれています。いつも感じるこのドクターと私の温度差は一体…。
ドクターは少し考えた後、こう言いました。
「調子が悪そうだと心配なので周りはすぐに休め休めと言ってしまいますよね。でもみんないろいろな日がありますので。
それから全部○のときだけが緑なんですか?△や×を書いたら、”即学校はお休み”とされたらなかなか正直には書けませんよね。△や×がいくつかあったって緑にして、学校へ行けると分かれば、安心して△や×を書けるんじゃないですか?」
ハッ!そうか!
パーフェクトだけが緑じゃない、気が付きませんでした。私も、たぶん娘ちゃんも、たぶんパパも。そう思っていたが故にこのようなことに…。
△を1こ書いただけでいちいち周りが休め休めと過剰反応したら、そりゃ書きにくいよね。納得過ぎて笑えてきました。
せっかく作ったプランを活かしたい気持ちもありました。なんか都合の良いイメージばかり持ってしまっていたなぁ。反省です。

私は家に帰って娘ちゃんに伝えました。
「全部が○じゃなくてもさ、ひとつやふたつ△や×があってもさ、緑にしようか。緑か黄かはさ、その時話し合って決めようか。△ひとつですぐに学校休めとか言われたら嫌だよね。学校行きたいからやってるのに。ごめんね。
明日からはもっと気楽にやろう。
ママはこれ良いプランだと思ってるよ。とにかく続けてみない?」
「…ウン」
あきらめません。
相変わらずどんなにイライラしているように見えても○を書く娘ちゃんなのですが、まずは自己申告を大切にすることにしました。
本人が〇だっていうのなら、○なのです。それを認めます。○にだってきっと色々な種類の〇があります。私が書く側ならそう思います。
「本当に○かい!?」とか、そういうのもなしです。もし私が言われたら嫌だからです。
とにかく力を抜いて続けてみました。
すると、ある日△をつける日がありました。
『はぁッ!!△だ!!△が登場した!』(←心の声)
△がついたのに、なぜだか嬉しいような気持ちになるのは何故でしょう。△をつけると逆に冷静な判断が出来るんだから調子がいいんじゃないかと思うくらいです。
「そっか、今日は気分は△なんだね。そういう日もあるよね。ひとつくらいなら緑だよ。学校行こう。(ニコニコ)」
これです。これの積み重ねです。

それから数か月に1回程度ですが、たまーーーに○以外の表記をするようになりました。不穏は続くともちろん良くないですが、単発なら見送るようにしました。あと娘ちゃんて几帳面で、チェックする時は毎日チェック項目をきちんと読んでから書くんです。チェック項目は変わらないので、毎日のことなので「はいはい~」ってかんじで読まずにサラサラーって書いちゃいそうなものですが、読む姿を見る度に偉いなと思います。
少し調子が悪くてもママに言うほどじゃないかな、みたいな微妙なコンディションの時、口で言わなくてもさり気なく△を書けば、お互いに暗黙で理解しあえることあります。

クライシスプランを始めて気づけば1年半が経ちました。毎日登校やお出かけ前のお約束です。
手探りでやっていた”クライシスプラン”ですが、なんとなく生活の一部になっています。正確に書くことよりも、ただ1日1回やるということだけを目標にしています。うっかり書かずに外出し、帰って来てから書くこともあります。あちゃー。そんなのもありです。
プランを書くその瞬間、娘ちゃんは自分を見つめ直しているわけです。1日1回のそのほんの数秒が、きっと娘ちゃんを助けてくれるはずです。ズルズルと不調の波に飲み込まれてしまわないように。
このまま続けていき、いつか紙自体がなくとも空で自分に問えるようになるといいです。親亡き後のことまでまだ頭が回りませんが、いつまでも私がチェック表を用意するわけではないでしょう。
だってこの疾患は治らないのです。一生向き合っていかなくてはならないのです。自分で自分をケアし、不調を回避できる術をたくさん持っていた方が良いはずです。クライシスプランはそのひとつでしかないですが、立ち上げにこんな茶番がありました。

娘ちゃんからしたらこんなだったかも知れない。
心配性なんだな。わたし。

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