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古神道の教え~「今中(今、この瞬間を生きる)」   

 人気テレビ番組の一つに「ポツンと一軒家」があります。
 日本各地の人里離れた、なぜそこに?と思うような場所にポツンと存在する一軒家を衛星写真だけを手掛かりにして調査するトーク番組です。
 実際、地元の人達から情報を集め、現地に赴き、そこに住む人物の人生(どんな人か、なぜ、そこで暮らしているのか)などに迫ります。
 テレビ番組なので、「脚色」もあるかもしれませんが、自分の暮らしとの差が大きいだけに、毎回、学びがあり、時にうらやましいなあという思いになる時もあります。
 
 中には、一軒家に「一人」で暮らしている方もいます。

 さみしくないのかな?
 不安じゃないのかな?
 先々の事は心配じゃないのかな?

などと、疑問に思うこともありますが、ある方は、こんなこと言っていました。 

草むしりしていたら、大丈夫だよ。

 草むしりとすると不安が消える!?
 この言葉を聞いて、私はトイレ掃除のことが思い浮かびました。
 特に、便器を磨いていると、不思議なほど、心の中のおしゃべりが消えて「静寂さ」が生まれます。「おしゃべり」と言うより、不安や心配、後悔、怒り・・・。だいたい、ネガティブな感情が多いのですが、便器をごしごし磨いているとそんな感情が消えていきます。「草むしり」も同じことではないかなとピンときました。
 
 

どちらにも共通するのは「動くこと」。そして、「目の前の事に集中する状態」です。

体を動かすと、「思考」が止まります。もちろん、全く何も考えない状態になることは無理ですが、あちこち、あれこれと心に浮かぶネガティブな思いがなくなっていきます。かわりに、目の前の事・・・例えば、草の事だったり、便器のことだったり・・・を考え、今、どうやってきれいにしようかなどと、そのものの事に集中しています。すると、「不安」などから解放されます。
 
 ネガティブな感情は、先々の不安や心配と言う「未来の事」や後悔や罪悪感という「過去の事」に囚われた時に起きてきます。

 逆に言うと、「今、ここ」から離れてしまった時に、ネガティブな感情が大きくなります。

トイレ掃除が「うつ病」にも効果があると言われるのは、この不安の解放も影響しているのではないかと思われます。
 
 救急医療を専門とする東京大学名誉教授である矢作直樹さん。
 「人は死なない」「おかげさまで生きる」など、魂やスピリチュアルに関連する著書もたくさん書かれています。
 
 そんな矢作さんが

古神道に伝わる言葉として「中今(なかいま)」

を紹介しています。古神道的には、次のような意味があるそうです。

 いまこの瞬間こそ真実であり、過去も未来も実体がない
 過去、現在、未来、すべては今の連続に過ぎない

流れる時間の中心点は、今であるという発想であり、過去や未来は、現在の中にすべて「織り込まれた状態」です。
 
 実際、矢作先生は小学校3年生との時に交通事故に遭い死にかけたそうです。何とか一命をとりとめましたが、入院生活の中で、強烈なめまいが続き苦しい日々が続きました。
 そんな時に、「ちょっと意識をそらして、楽しげなことを思い浮かべることで、苦痛を乗り越えた」工夫をしました。
 こうやって「今、この瞬間を生きる」、最初の「中今」体験したそうです。
 
 草むしりもトイレ掃除(便器を磨くこと)も、体の動きを通して、目の前の事に集中できるきっかけになります。体の動きが止まると「思考」が活発になります。すると、どうしても、未来や過去に「飛ぶ」ことになっていまい、今、目の前のことから心が離れてしまいます。そして、ネガティブ感情を大きくする原因になります。

 そういえば、画家などのクリエイターに長生きをする人が多いのは、作品を手掛ける中で、目の前の事に集中することが心の健康や生きる意欲につながるからかもしれません。

  また、ロシアの文豪トルストイは

「過去も未来も存在しない、あるのは現在という瞬間だけ」

という言葉を遺しています。
 お釈迦様も「人生の長さはどれぐらいか?」と言う問いに、

「人生は一刹那(いちせつな)一刹那。その連続だ。」

と答えたそうです。
 お釈迦さまが決めた「時間」でいうと、一拍子の中に65刹那が入っているそうです。そう、1秒にも満ちません。たしか、ビデオが1秒に60コマぐらいというので、一刹那というのはビデオの1コマ分とも言い換えられます。そして、それが私たちの「人生の長さ」となります。その一刹那、一刹那の連続で生きていることになります。
 あるいは、別の言い方をするとまばたき1回分です。
 まばたきを1回すると人生が1回終わる。
 また、目を開いたら、別の人生です。

古今東西を問わず、「中今」「今、ここの瞬間を生きる」というのは、人類共通の考え方であり、上手に生きるコツなのかもしれません。

 
 そう考えると、

日々、心に湧き上がる不安や後悔は、頭の中でつくり出した「幻」ともいえます。あるいは、不安や後悔を感じるのは、心が「今、ここ」から離れてしまった状態ともいえます。

 生きている以上、「辛い出来事」「困った事」を経験するのは避けられませんが、その経験にとらわれ、いつまでもネガティブな気持ちで自分の心を一杯にしていたら、今生に残された時間がもったいないと思いました。

  ネガティブな感情に飲み込まれそうなときは、草むしり、トイレ掃除など、手を動かして「今、ここ」を生きるといいのかもしれません。


 
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです。

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