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みなさん、こんにちは、近大小児科の永谷です!

今回も皆様から外来でよく頂く質問にお答えするシリーズ “教えて!近大先生〜幼児編”をお送りします。

今回のご質問は

「1歳半健診ってなにを診るの??」

です。早速ですが結論から述べます。

「1歳半健診では身体測定・診察により、発達を評価し病気の有無をみます」

となります。

1歳半健診で行われることを3つに分けてご説明します。

①    身体測定
②    内科診察
③    歯科健診

1歳半健診は満1歳6か月を超え、満2歳に達しない幼児を対象として公費で行われます。1歳半~2歳は、「発達発育の質的な変化」を評価する上で鍵となる年齢なのです!!
質的とはどういうことかを含めて詳しく説明していきますね。

①    身体測定
体型が乳児型から幼児型に
体重は10kgを超え、身長はおおむね75cmをこえてきます。頭位より胸囲の方が大きくなるのが特徴です。4頭身から5頭身への変化の時期です。この時期の身体発育の異常は発達の異常を伴うことも少なくないため、神経疾患などを疑う手掛かりになります。栄養面では95%以上の子どもで3回食が確立しています。しかし、約8%程度ではまだ母乳を続けている人もいます。

②   内科診察
主に小児科医が次のようなポイントに注意して診察を行います。
歩行の獲得
99%以上の子どもが独り歩きをできるようになります。歩行の姿勢も変化し、歩行開始時に両手を上にあげるハイガード(high guard)から両手を下に下げるローガード(low guard)に変化します。転びやすさや段差を乗り越えられるかどうか、方向変換ができるかどうかなども確認します。靴を履いて歩く子どもも多くみられます。この時期での独り歩きが不可能な場合や、歩けていたのに歩けなくなった、など発達の退行を示唆する症状は精密検査の対象となります。

微細運動が可能に:
両手の親指、人差し指が分離して動くようになり、指をつかって物をつまむ、ひねるなどの動作が可能になってきます。指差しをする、人差し指を立てるなどもできるようになります。スプーンも使えるようになります。積み木を積むことで評価する場合もあります。

立体視が可能に:
立位が可能となると、目の位置が高くなり目線も上になります。これにより立体視が可能になります。まだ視力は0.25~0.6程度です。両目の視線が合うかが重要であり、斜視の早期発見にもつながります。斜視があれば精密検査の対象となります。
        
非言語的コミュニケーションの習得:
相手と視線を合わせる、身振りや動作の意味を理解して真似をする、それらを使用して自分の要求を伝える、相手の表情や声のトーンを理解する、指差しをする、などの表情や動作を中心としたコミュニケーションがあげられます。

言語的コミュニケーションの芽生え:
“話す”“聞く”“読む”“書く”の4つのうち“話す”“聞く”の音声言語が出てきます。意味のある単語がどれくらい出てきているかをみます。「ワンワン」「パパ、ママ」「バイバイ」が最初に出現する単語で多いものになります。あいさつを含む簡単な日常会話の理解は90%以上の子どもで可能になっていることが多く、指示に従えるかどうかで言語理解の評価をします。単語数には個人差はありますが、おおよそ5語以上はでていることが多いです。

おわかりいただけましたか?ただ身長が伸びるだけではなく、プロポーションが変化している、歩けるかどうかだけでなく、歩き方がどうか、単語を話すだけでなく、コミュニケーションできるかどうかといったことが「発達発育の質的な変化」なのです。

これらの他にも、けいれんの既往、アレルギーの有無、予防接種の進行状況なども質問させていただき、児の健康にかかわる項目をチェックします。

※1歳半で終わっているべき予防接種はロタ2回目または3回目、ヒブ4回目、肺炎球菌4回目、B型肝炎3回目、4種混合4回目、BCG、MR1回目、水痘2回目、プラス任意接種のおたふく1回目となります。

③    歯科健診
この時期では平均15本程度の乳歯が生えています。すでに約10%の子どもに虫歯が認められます。なので、スポーツドリンクやジュースなどの甘味飲料の摂取状況なども質問させていただきます。この時期まで長期におしゃぶりを使用している場合や、指吸いをしている場合も唾液の流れなどが関係し、虫歯の発生リスクが高くなります。この歯科健診を一生自分の歯で食べていくための習慣を作るきっかけにして欲しいのです。

ここまでのお話で「1歳半健診ってなにを診るの??」の答えが「1歳半健診では身体測定・診察により、発達を評価し病気の有無をみます」となった理由をお分かりいただけたでしょうか。

近畿大学病院小児科では「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。

参考図書:
・新版 乳幼児健診ハンドブック 成育基本法から健診の実際まで

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