アウトレイジ

アウトレイジ最終章

「洗濯物干した!」

「ばっかじゃないの??
これからでっかい台風来るっていうのに!」

「だから、来る前に、乾かないかなあ~って思って。」

「・・・そういうとこよね。」

「・・・」

「おかずです!」

「ずーこです!!」

「アウトレイジ最終章」

「これは、映画館で観たのよね。」

「そうそう。わたくし、このシリーズ、妙に好きでさ。
だから、絶対映画館で観たいって思って、出かけて行ったんだけれど。」

「うんうん。」

「田舎の映画館は
哀しいかな、ガラガラで
カップルシートで、ふんぞりかえるわたくしと

・・・・・
・・・・・

わたくしと

・・・・・
・・・・・

わたくし。

・・・・・
・・・・・」

「・・・それ、絵的に、アウトレイジよりもアウトレイジよね。」

「・・・どういうことよ。」

「・・・そういうことよ。」

「まあ、映画館ジャックしたような状況で
たった一人
わたくしが観た「アウトレイジ 最終章」。」

「うん。」

「男はやくざ、女は娼婦を演じさせると様になるし、
いい演技ができる。
役者を「化けさせる」なら、やくざか娼婦・・・とか聞くけれど、

「化ける」もなにも
有名どころ多数ご出演。

その有名どころも含めて
まあ、とにかく出てくる役者たち全員が
み~んな「嬉しそう」で「いきいきしている」ことが、おかしい。」

「嬉しそう、かー。」

「そう、嬉しそうなの。

出てくるのは男ばっかりで
女は添え物以下。

見事な男性映画よ。」

「うんうん」

「で、この手の映画に、なぜか面白いのが多いのよね。

とにかく。

西田敏行、本望でしょう。
見事な顔面演技。
悪くてゲスで、だけどチャーム。

ピエール瀧のむちむちした身体が醸し出す変態感、
大森の子分感。
白竜の非情な共感力。

キャスティングがいいし、
もう一度言うけど、みんなほんっとうに嬉しそうなのww。」

「そうなんだー」

「圧倒的な暴力描写の中で
ぞっとするより、いつしか笑えて来るのは
その役者の「嬉しさ」によるものなのかしらねえ。」

「確かにこのシリーズの暴力って
痛いとか、激しいだけじゃないのよね。」

「舐めるように撮られている車のエロさ。」

「あ、本当に車はこれでもかってくらい、エロかった!!!」

「そう、改めて、車ってエロいもんだったよな~って思ったし、
こういう風に撮るたけしの心中を思うよね。」

「そうね~。」

「そして同じように
怒号と暴力描写が爆発している
「パルプフィクション」に、ないもののことを思うじゃない?。」

「あたし、「アウトレイジ 最終章」エンドマークの出た後
なんだか
きゅーっとしちゃった。」

「あら。」

「映画を撮るという
大がかりで、派手な遊び。

たけしは大いに遊んで
仲間も沢山いて、
成果も出しているというのに、
この寂寥の余韻はなんだろうって思ってさ~~。

余韻に捕まって
揺さぶられて

ウェットで乾いた死生観の中の
たけしの老いと
孤独を想ったの。」

「うん。」

「主人公の最後の終わり方に
ものすごく納得させられたわ。

その事実だけでも
観る価値ありの1本ざんした。」

「・・なんていうか、たけしの描く暴力って
派手で残酷なだけじゃないよね。

暴力=コミュニケーションっていう
もうもう、どうしようもないぎりぎりの切なさがある。」

「そうね」

「老いるってことを、ここまで描いちゃったたけしが、
今後どうなっていくのか・・・見届けたいって思ったわ。」

「うん。」

「あーなんか、切ないわ。・・・あーた、一発殴っていい??」

「!!!!!!!!!!!!!何言いだすのよ!!」

「だってー。
暴力のコミュニケーション」

「あーたは、言葉の暴力だけで充分よっ!!!」

「・・・あら。」



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