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シュークリームの皮

私には、3歳下の弟がいる。
これは弟が「メリケン粉」を「メロコンコ」
「キャラメル」を「キャメラル」としか言えなかった頃の話。

その頃さ、私の大好物はシュークリーム。
3時になると、おやつの時間。

テーブルの上にシュークリームが出されているともう、
もう、もう、それだけでにっこり。幸せ。
明日もいい子でいようと決心したりして。
若干うるんだ声で「おかーさん、食べていい??」って聞く
その瞬間さえも幸せだったの。

なのに、ふと横を見ると弟がもじもじしている。

どうしたのかなあ~。

私のシュークリームまで食べたいのかしら?
これは私の!!私のだよ!

でもおかーさんは、いっつも真ちゃんの言う事ばっかり聞くから、
欲しいって言ったら取り上げられちゃう。
お姉ちゃんのシュークリームまで欲しいなんて、
奴が言いださないうちに、早く、早く食べなくちゃ!

「・・・かこちゃん」

「なあに?」

大きな口をあけて、今まさにシュークリームにかぶりつこうとしている時に、弟が言った。

「・・・あのね、・・・僕、シュークリームの皮、嫌い」

え??

今、なんつった???

「僕ね、中だけ欲しい。皮、嫌い。」

そう、弟はシュークリームの外側が嫌いと言っているのだった。

ぱぁああああ~~~~~♪

「シュークリームの皮」は茶色だからね。ルックス的にね。
子供の弟には不味そうに見えていたんだろう。
・・・って言っている当時の私も子供の訳だが。

「いいよ!・・・じゃあ、かこちゃんが皮、食べてあげる!

真ちゃんは、中だけ食べたらいいよ!!」

「うん!」

「ちょっと待ってて!」

私はとりあえず、持っていた自分の分のシュークリームをお皿に置くと
弟のシュークリームを持ち上げた。

もぐもぐもぐもぐ

シュークリームの皮が嫌いなんて、ばっかじゃない?こんなに美味しいのに!あー美味しい。美味しい。

もぐもぐもぐもぐ

「真ちゃん、どうぞ。」

そこには無残にも皮を剥かれた白兎・・・じゃなくて、シュークリーム・・・ってかオンリークリーム。

「かこちゃん、ありがとう!」

「私、お姉ちゃんだからさ。
真ちゃん、これからシュークリームの時は、
ずっとかこちゃんが皮、食べてあげるからね。」

「うん!」

・・・・
・・・・

しかし
いい時代は続かないものですじゃ。

やがて弟が「メリケン粉」は「メリケン粉」
「キャラメル」は「キャラメル」と言えるようになって

そうして彼は気づいた。
気づいてしまった。

「シュークリームは、皮と一緒に食べると美味しい!」

・・・・

・・・・ちッ!

それから後ずーーーーーーーーーーっと、シュークリームを食べる度に
「俺は長いこと姉貴に美味しいとこ提供してきたんだから
もう1個、これは俺がもらってもいいよな??」

何を、言う。

一度お腹に入ったものは、返すも返さぬもない。

ああ、動物も人間もすべからく小さい頃って、可愛く、
そしてその時期は短いよなあ~~。


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