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8、ずっと一緒に働きたい しずくさん

8、ずっと一緒に働きたい しずくさん

2019年1月、嵐の活動休止という衝撃的なニュースが日本を揺るがした。そしてここキングコングにもその衝撃を受けている人がいる。しずくさん(本人の希望仮名)は嵐のファンなのだ。その日、出勤したしずくさんは口数が少なかった。このニュースに触れると、「そうなんです、残念です」と硬い笑いを浮かべ身体をねじった。一緒に東京のジャニーズショップへ行った時の話をしながら少し気分を盛り上げた。

そうあれは、2015年の春だった。私と店長としずくさんは茨城県作業療法士会から講演のお招きを受け、三人で出張した。一足先に帰った店長を尻目に、私としずくさんは東京観光を楽しんだのだった。しずくさんのリクエストで、スカイツリーともんじゃ焼き、そしてジャニーズショップ。しずくさんはジャニーズ好きなのだ。嵐のメンバーの中でも特に桜井君が面白くて好きと言う。かっこいいのはマツジュンらしい。

今回はそんなしずくさんについて紹介したい。茨城での講演で彼女が読み上げた原稿を掲載していいとの事なので、皆さんにも読んでいただく事とする。

それでは、キングコングの看板娘であるしずくさんに、これまでの道のりを案内してもらおう。

2015年6月13日 公益社団法人茨城県作業療法士会主催
第6回市民公開講座「キングコングの挑戦~障害者雇用で耕される企業文化~」より

皆さまこんにちは。
沖縄県沖縄市から来ました株式会社NSPキングコングのホールスタッフをしておりますしずくと申します。
本日は茨城に呼んで頂き本当にありがとうございます。
私は今年で21才になりました。
私の好きな時間は、音楽を聴いている時です。
特に好きな音楽は、嵐やゆずの曲が好きです。
私の好きな色は、水色・ピンク・オレンジの鮮やかな感じの色が好きです。
好きな言葉は一期一会です。
では、この辺で私の自己紹介を終わります。

これから、今までの私の気付きをお話ししたいと思います。
私は小学生の頃から中学校2年の頃まで周りの生徒達にいじめられていました。私が滑舌が悪いのと、はっきりと自分の言いたい事を言えない所をよくからかわれました。それがあって私は中学校2年生の時まで学校を休みがちでした。そして中学校2年生の終わりに先生のすすめで、中学3年生の間は特別支援学級で授業を受けました。高校も両親と先生と相談して沖縄高等特別支援学校に進学する事になりました。

沖縄高等特別支援学校では全寮制で授業が終わると男子寮と女子寮に分かれて集団生活をします。規律はとても厳しかったですが、友達もたくさんできて楽しかったです。
授業の方では3年間で合計6回の体験実習がありました。1年生の時には飲食業、2年生の時にはスーパーとケーキ屋さんをそれぞれ体験しました。スーパーの時は品出しや店内でお菓子などを棚に並べていったりバックヤードでキャベツやレタスの袋詰めをやらせてもらいましたが、覚えるのが大変でした。

そしてついに高校3年生の実習が株式会社NSPキングコングに決まりました。実習の時は、朝の準備、ホールの作業を教えてもらいながら頑張っていましたがなかなか上手くできませんでした。先輩たちのスピードが早くて、店長も怖くて、焦っていつも失敗ばかりしていました。どうやったら失敗しなくなるのかと考えて、私は先輩のマネをしようと思いました。物の持ち方、運び方、話し方等細かく全部マネしようと思いましたが、それをマネして練習している間に10日間の実習が終ってしまいました。実習の終わりに私は先輩から1通の手紙をもらいました。それには「もっと私と一緒に働きたかった」と書かれていました。その手紙をもらって私はとても嬉しくて、また1回目の実習でやり残した事が悔しくて、2回目の実習もキングコングを希望しました。

2回目の実習は、1回目と違い緊張もなく自分の課題に集中して努力できたと思います。少しずつできる事も増えてきて、時間内に終わらせることも多くなってきて、さらにお客様とも少しですがお話し出来るようになったので楽しかったです。

高校3年間での6回の体験実習をしましたが、やっぱり私はサービス業で接客する事が好きで自分にあってると思ったのでキングコングに就職希望を出しました。

スタッフと訓練で一番変わった事は、前までは店長とか他のスタッフにほめられるのが嬉しかったんですが、今はお客様にほめられる方がもっと嬉しいという事です。自分がした事でお客様から「ありがとう」と言われるとやる気が出てきてもっと頑張ろうという気持ちになります。また色んな人とコミュニケーションを取るのが好きになりました。学校の時は友達同士だけで話をしていましたが、あの時よりも今はたくさんの人と話ができるので楽しいです。

私が今マネする事以外に頑張っている事は、1日の気づきをノートに書く事です。キングコングでは勉強会の中で1週間の気づきを発表する時間があります。その時、私はあまり話せなかったので、先輩から1日1日ノートに気づきを書いてみたらと言われ今もずっとそれを続けています。

キングコングで働きはじめてからは、休みの日には家族で買い物に行く時は、私が車を運転します。家族の為に洗濯ものを干したり、たたんだり、たまにご飯もつくったりします。先月、キャベツの炒め物を作りました。一番お母さんが喜んでくれました。

今思うと私は、社会に出て仕事をするという事はきつくて大変で我慢しないといけないと思っていました。実際に、私の友達は毎日同じことの繰り返しをやっている事にきついと言っています。でも私は、仕事は本当は楽しくてウキウキするものだと思います。もちろん大変な事もありますが、一つ一つできる事が増えると楽しくなってくるし、「ありがとう」と沢山の人に言ってもらえるからです。

私は将来NSPのスタッフになりたいと思っていましたが、平成26年に福祉雇用を卒業して夢がかないました。今は勤務時間を伸ばしてディナータイムの時間まで仕事ができるようになりました。レジ打ちの業務を覚えるのを頑張っています。次の夢は一人暮らしをする事です。部屋に嵐のポスターをはりたいと思っています。それを目標にこれからも頑張っていきたいです。

これが、しずくさんが講演で話した内容だ。

この文章であるように、しずくさんは働く喜びを感じながら働いているように見える。時には従業員同士の衝突で泣く事もあるが、悔しそうな表情をして踏ん張る姿もまたしずくさんの強さの一つだ。今ではお客様に名前を覚えられているのはしずくさんが一番多いと思う。まさに看板娘だ。

しずくさんが店長よりもお客様に褒められる事に喜びを感じるようになったのは、目線が店長や他のスタッフではなくお客様の方を向くようになり、自分のしている作業が「訓練」から真の意味での「仕事」に変化したという事だと思う。

これにはキングコングの従業員が全員参加で毎週行っている勉強会も影響している。経営戦略を勉強したり、意見交換したりと幅広い内容を扱う勉強会だが、このおかげで支援する側とされる側という構図ではなく、共に目線を揃えてお客様の方を見る事が可能になったのだ。これが、不器用だけど一生懸命(BI)精神を残しながらも戦力化できた秘訣だと思う。

次回はその勉強会について詳しく報告したい。乞うご期待。

#キングコング #KINGKONG #障害者雇用 #焼肉 #沖縄

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