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4,不器用だけど一生懸命なBIメンバー


4.不器用だけど一生懸命な人達、BIメンバー

こうしてキングコングの障害者雇用が始まった。一人、また一人と就職者が入って来た。健常の従業員と障害のある従業員が2人1組でペアを組み、協力しながら業務を進める。お互いの良かったところをミーティングで言語化することも繰り返し行っていった。大小様々な、トラブルとも言える出来事が次々と起こったが、それを上回るエネルギーがキングコングには沸き始めていた。なんとなく店全体が新しいことをしている感じでうっすらとワクワク感に包まれてきていた。

ちょうどその頃、社長、店長、私のそれぞれが違和感を感じ始めていた。最初は誰も口にしなかったが、今後のこと、先のことを見通す必要がある会議ではそのことが話題にのぼる回数が徐々に増えていった。

違和感のそれは呼称であった。「障害者の従業員」という言葉は、はたして合っているのだろうか?

我々は確かに障害者雇用を始めようと思い、ハローワークにも障害者求人を出していた。だが、我々は障害者という人と働きたいのか?そうではなかった。たとえ障害があっても、関わりや環境の工夫で仕事のパートナーになっていけるという思いがあったから、障害者雇用を行っているのだ。カナコがそうだったように、我々も皆、障害者としてではなく同じ仕事をするパートナーとして認識するようになっていた。

どうにも障害者と一括りにしてそう呼ぶことに抵抗を感じたが、一方でそう呼ばないように努力することもどうかと意見が出た。キングコングは障害福祉事業も活用しており、彼らが障害者として働いていることに違いはなく、また書類上障害者という呼称も必要になる。それをわざわざ障害者と呼ばないほうが偏見なのではないか・・・

こうなると全員思考停止になり、どの視点から見るのか、どこまで考えるのかという複雑な論議を避けるようになってくる。これではいけないと思い、社長にそもそもなぜこの取り組みを始めようと思ったのか、あらためて原点をたずねた。社長の答えは「不器用だけど一生懸命な彼らと一緒に働きたかったから」だった。

不器用だけど一生懸命。なんともしっくりくる言葉に、その場にいたメンバー全員が納得した。キングコングで働いている障害のある従業員は障害者と呼ばずに、不器用だけど(B)一生懸命(I)の頭文字をとってBIメンバーと呼ぶことにした。多くの関係者には笑われたが、我々はこの言葉をとても気に入っている。今では企業理念にもこのBI精神という言葉を入れているくらいだ。

不器用だけど一生懸命は、福祉関係者にはなかなかピンとこないようだが、企業経営者には刺さるようだ。「この言葉気に入りました。うちの会社は器用で一生懸命じゃない従業員が多くて困っているんです。まさに私が求めていたのはBI精神でした」と言われたこともある。その他にも似たような言葉はよく頂く。

現代は、器用にこなすことを期待される社会だ。
でも、人間らしく豊かということは、そういうことだろうか?
不器用でもいいじゃないか、一生懸命だったらいいじゃないか!!

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