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「癌治療はCOVID-19死亡率に悪影響を及ぼさない」

TONOZUKAです。



癌治療はCOVID-19死亡率に悪影響を及ぼさない

以下引用

英国Birmingham大学のCsilla Varnai氏らは、2020年3月~8月にCOVID-19で入院した英国の癌患者を対象に、癌の種類や受けている化学療法や免疫治療がCOVID-19死亡率に影響を与えているかを調べるコホート研究を行い、血液がんや肺癌患者の死亡率は高いが、全身性の癌治療を受けていることは死亡リスクに悪影響を及ぼしていなかったと報告した。結果は2022年2月21日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 COVID-19パンデミックが始まった当初に、癌患者のCOVID-19関連死亡のリスクは、癌ではない患者の約2倍だと報告された。また、パンデミックにより癌治療に遅れが生じたこともあり、癌治療現場は、COVID-19の影響を最小限に抑えるために、治療および追跡戦略を変更せざるを得なくなった。

 UKコロナウイルス癌モニタリングプロジェクト(UKCCMP)は、2020年3月18日に開始された前向きコホート研究で、英国内の69病院が参加している。初期に収集されたデータは、COVID-19関連死亡への影響は、全身性の癌治療を受けているかどうかより、年齢や性別、併存疾患の方が大きいことを示唆していた。

 そこで著者らは、より大規模な患者コホートを対象として、全身性の癌治療、癌の種類、患者の人口統計学的特性(年齢、性別、BMI、人種と民族、喫煙歴)、併存疾患などの要因が、COVID-19を発症した活動性の癌患者の死亡率に及ぼす影響を検討することにした。

 対象は、2020年3月18日から8月1日までにUKCCMPに登録されていた活動性の癌の患者で、COVID-19と臨床的に診断され入院した18歳以上の人。対象期間には、ワクチンはまだ利用できなかったため、全員未接種だった。

 主要評価項目は、COVID-19による初回入院中の総死亡率とした。活動性の癌は、転移陽性、その時点で癌治療中、または過去12カ月間に癌治療を受けていた患者とした。また、SARS-CoV-2感染陽性となった時点で、直近の治療から4週間以内だった人を治療中とした。

 対象期間中にUKCCMPに登録された2786人(98%がRT-PCR検査で陽性だった)のうち、分析に必要なデータがそろっていた2515人を対象とした。1464人(58%)が男性で、年齢の中央値は72歳(四分位範囲62~80歳)だった。1463人(58%)は併存疾患を1つ以上保有していた。272人(11%)は黒人、東洋人またはそれ以外の少数民族の人々だった。

 1108人(44%)は軽症COVID-19で、701人(28%)は重症、539人(21%)は重篤だったが、119人(5%)はCOVID-19の症状を経験しなかった。計131人(5%)がICUに入院していた。

 初回入院中の死亡は計966人(38%)に発生していた。総死亡に関する追跡期間の中央値は7日(四分位範囲3~13日)だった。また、死者の51%に相当する493人は重篤だった。重篤となった癌患者のうち生き延びた人は46人(3%)に留まった。

患者特性、癌の特性、治療の種類と、COVID-19による初回入院中の死亡の関係を多変量解析により検討した。性別男性のオッズ比は1.53(95%信頼区間1.23-1.90)、高齢は1.04(1.03-1.05)、併存疾患あり1.92(1.57-2.34)は、COVID-19入院中の総死亡リスク増加と関係していた。

 個々の併存疾患についても検討した。入院中の総死亡リスクの上昇と関係していたのは、慢性腎臓病のオッズ比1.58(1.19-2.09)、心血管疾患1.26(1.03-1.55)だった。固形癌患者では、慢性腎臓病、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病が死亡リスク増加と関連していたが、血液がん患者では慢性腎臓病のみが有意な関係を示した(オッズ比1.81:1.10-2.97)。またBMI高値(1.03:1.004-1.07)と喫煙歴(1.17:1.03-1.34)も、死亡リスクの有意な増加と関連していた。

 癌治療とCOVID-19による初回入院中の死亡の関係を検討した。COVID-19診断前4週以内に化学療法を受けていた患者は587人で、臨床的な交絡因子(年齢、性別、併存疾患など)で調整すると、治療とCOVID-19関連死亡の間に有意な関係は見られなかった。化学療法を受けていなかった患者(治療を受けていなかった患者も含む)と比較したオッズ比は、0.82(0.62-1.07)、その間に癌治療を受けていなかった患者と比較すると0.70(0.52-0.94)だった。感度解析も複数行ったが、結果は変化しなかった。

 対象を固形癌患者に限定すると、406人が化学療法を受けていた。化学療法を受けていなかった(癌治療を受けていなかった患者を含む)人々と比較した総死亡のオッズ比は0.61(0.46-0.80)で、癌治療自体を受けていなかった患者と比較すると0.48(0.36-0.65)だった。

 COVID-19の診断前4週間以内に受けていた治療法別に比較すると、手術を受けた93人のオッズ比0.55(0.32-0.93)で、手術を受けていない患者よりも死亡リスクが低かった。その他の治療法は、免疫療法を受けた102人のオッズ比が0.62(0.37-1.02)、ホルモン療法を受けた250人が0.74(0.54-1.01)、放射線治療を受けた175人が0.90(0.64-1.28)など、いずれもその治療を受けなかった患者と比べ有意差がなかった。

 癌の種類と、COVID-19による入院中の死亡の関係を検討した。大腸癌を除いた消化器癌の患者を基準にしたところ、血液がん患者の死亡リスクは有意に高いことが示された。急性白血病と骨髄異形成症候群の患者はオッズ比2.16(1.30-3.60)、骨髄腫または形質細胞腫瘍の患者は1.53(1.04-2.26)で、死亡リスクが高かった。肺癌患者もオッズ比1.58(1.1-2.25)でリスクが高かった。それ以外の癌患者では、総死亡リスクの有意な増加は見られなかった。

 これらの結果から著者らは、活動性の癌に対して最近実施した全身性の癌治療は、COVID-19死亡率を増加させていなかったと結論している。癌の種類では、血液がんと肺癌患者がCOVID-19で入院した場合の死亡リスクが高かった。この研究はCancer Research UKなどの支援を受けている。

 原題は「Mortality Among Adults With Cancer Undergoing Chemotherapy or Immunotherapy and Infected With COVID-19」、概要はJAMA Network Open誌のウェブサイトで閲覧できる。


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