夜になってから


キッチンの蛍光灯の光を落とすとあたりが真っ暗になった。
まだ、日が照っている時から電気をつけていたから日が落ちたことに気づかなかったのだ。部屋で改めて夜を感じる。私は暗闇の中、寝室まで足を進めた。温もりがない、ひんやりと冷たいフローリングに足裏の皮膚が触れるたび、私の意識はゆるやかに寝る準備をはじめ、疲れた身体は癒しを求め始めた。数歩あるくと、薄暗い部屋に白いシーツだけがぼんやり浮き出ててくる。
このあたりだろうと私は全身の力を抜き、ベットに飛び込む。いつも飛び込むベットだ。間違うはずはない。私の体重を受け止めたマットレスは強く沈む。中のスプリンクラーが反発し押し返せるぶん力強く押し返し、ベットが2、3回軋みをあげた。ギイギイ。その弾みで、眠気が振り落とされることはなかった。
枕には水気を含んだシャンプーの甘い匂いが覆い被さり、顔辺りを漂ってさらなる眠りを誘う。
清潔な匂いを少し、堪能したあと、仰向けになる為、まず上半の身体を捻って、捩れを戻すように、下半身を後から捻った。
癖のように左足首のくるぶしで、右足の凝り固まった脹脛を上から下へとマッサージして刺激する。そして、組み替えて、左足も同じように刺激した。じんわり両足の血行がよくなるのがわかる。
まだ、少し眠りにつくのは早い気がした。右手を伸ばし寝室の電気のリモコンを探りあてて、寝室の照明をつけた。
ピッという発信音を合図についた照明はやはり少し眩しく光った。照明の光量を下げて、眩んだ目を4.5回しばたたかせて。その光に目を慣らした。その慣れも虚しく。光量が下がる段階に合わせて瞼が重くなる。瞬きするたびに、瞼に熱い疲労が広がる。
身体の疲れがベットに広がっていく感覚がする。
まだ、眩しさで眩んでいるのか、眠気で瞼が重いのか、虚な目で明日起きる時間を決めて、アラームのセットをする。どうやら今日は動画とかで、無理矢理目を疲れさせて眠りにつかなくても良さそうだ。いい睡眠がとれそう。
背中に挟まっている違和感の線を手繰り寄せて引っ張り出し、携帯電話を充電する。
携帯を頭上にある棚に置く。慣れた目をまた暗闇へと戻す。そしてさらなる暗闇へ。
スーッと息を吸い込むと、部屋を満たしていた夜気が今度は体に雪崩れ込む。
息を吐いた時私は宙に浮いていた

おやすみなさい


2021/8/2

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