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稲作創話「棚田物語」甲類04 「苗立て=もみ播き・芽出し・育苗」に大失敗して知った「稲作は、苗立て7分」の深奥

 今年は、大失敗したのです。前年度は、私の稲作20年史上最高の苗を頂いたというのに! 残念!

 で、失敗するとどうなるか。今回は、「苗立て」失敗の原因とその影響について、お届けします。これは、あなたの稲作にかなり参考になると、自負します。(毎回言っているだな!)

 まず、「苗立て」には、「籾播き、芽出し、育苗」と、3つの行程を孕みます(と、私は思っています)。それぞれで、注意すべきポイントが違うし、そもそもその実施場所も人によって違うし、「苗立て」ひいては「稲作」に対する思想が、違うと思うのです。それは、肥料を入れる入れない、農薬を使う使わないといった目に見えやすい違いよりも、より繊細で、より、微妙で、細やかなものなのです。
 
 だから、私は今回、大失敗をしてしまったのです。「苗立て」の心がいい加減、大雑把、雑だったのです。結果的に。
 そう、「原因は、結果の結果。」(ニーチェ)

 で、失敗の原因を先にまとめると、
① 籾取りのチョンボ。
② 気温が低かった? 
③ 玄米が粘りついた。
④ ひょっとして、塩水・温湯処理がまずかった、
⑤ 田に並べたときの水温が上がらなかた、の5点かも。

 まず、「籾播き」ですが、どんな籾をどこに蒔くか。

 種籾をどう取られていますか。
 私は、昨年まで、稲刈り前に良い稲をバインダーで刈り取って、その藁束のまま、倉庫の中に干しまして、2月頃、水につける前に足踏み脱穀機で落としていました。それが今年は、時間の関係で、コンバインで刈り取った籾を使ってしまったのです。 
 あの高速回転しているドラムに、体中滅多打ちにされて、茎である稲わらか叩き落とされ籾を、種に使ってしまったのです。確かに、10年近く前までは、そうしてました。それで何とか発芽していました。それが、今年は、おそらくここの殴り倒しされたことが大きく影響して、写真の通り。448穴あるうち、272穴しか発芽していないのが一目瞭然です。(数えました。他のポット苗も、こんな感じ)発芽率61パーセント。ポット苗箱の4割は、写真の通り土のままの状態を生んでしまったのです。籾も仕返し、私も手痛い仕打ちを受けることになりました。もっと、繊細に、手で摘んで、小さく束ねて、丁寧に干して種もみを取っている人もいるというのに。

 では、その籾を、どこに蒔くか。はい、土に蒔きます。が、その土は、どこにあるか? 大きく分けて二つ。箱の中か、箱の外か。箱の中だとマット苗箱か、私のようなポット苗箱(写真参照)。この場合多くは機械播きとなります。箱の外だと、畝立てされて水が入っていない田圃(乾田にするか、水苗にするかは、また、別の機会に考察します)。ここでも丁寧に満遍なく、均等にまかないと妙な苗が育ったり、ガラ空きの場所ができたりします。そして、
 で、二つ目の失敗の原因が、私が使っているみのる産業のポット苗用籾播き機の、籾を3,4粒受けて苗箱の床土が入れられた窪みに弾き跳ばすバネの不具合、と感じました。いえ、バネがバカのではありません。ここでも、コンバイン籾を使ったがために、玄米になったお米が多数籾種の中に混じていて、それが、普段はネットに入れて3か月ほど池の水に浸してますから、籾蒔くときにはほぼ、溶けて跡形もなくなっているのですが、今年は、溶け切らなかった。白い玄米のまま、種もみの中に残ってしまった。

 なぜか?
 水温が、例年と比べて低かったのでしょうか。このにっくき「玄米」が、種もみと一緒に機械に掛けられ弾き飛ばされずに粘りついて、本来次々と籾を掬い取る穴に居座って、万事休す。その穴は機能不能に陥って、籾を受けられずに、弾き飛ばすこともできずに、いたずらに回り続けていたということ。

 次に、ここからが「芽出し」作業。

トタン屋根の倉庫に、こんな苗箱運びの棚を4つ並べて、丸ごとビニールで覆って、高温多湿状態を作ります。

 蒔かれた籾種は、与えられた場所で目を出し始めます。そのための条件が、私は「高温多湿」だと思っています。籾種を蒔かれたポット苗箱(今年は、230枚)は、倉庫の中の4台の育苗棚(本来は、軽トラに積み込んで運搬するための3列8段のアルミ棚)に入れられて、保温用の厚手のビニールに覆われて、更にその周りをシルバーシートで覆って、天井にはトタン板載せて、下は水をたっぷりと貯めて、更に、空気を循環させるために扇風機を二台入れ込んで、完全密閉。
 そして、この育苗棚4台を入れ込んだ倉庫全体の空気循環のためにも、大型の扇風機を天井向けて回転させて、完了。後は、2週間、この状態のままで放置して、幸運を祈り、待つだけ。
昨年、田に出した苗。かなり良かったのに。

 最後に、「育苗」をもって「苗立て」とはなるのですが、私の場合、後は、代掻いた田圃に根切りシートを敷いて水を張り、並べるだけです。何の覆いも掛けません。水がより温かくなるように、水口から仕切り板で遠くに回し込んで苗に届くようにはしますが、この水温も低かった? 昨年は、水管理がしやすく、西日がよく当たっる別の田圃で育苗したのですが、田植えの前に、どうしても軽トラに乗せて運ばないといけない距離だったので、その手間を省く理由から田んぼを代えてみたのですが、それが災いした? とは考えにくいのですが、いかがでしょう。

昨年の苗。きれい! 水は抜いています。

 以上、失敗の原因の④以外を説明しました。④の塩水と温湯処理ですが、実は今まで、水選や軽い塩水処理はしていましたが、温湯処理(60度で10分)は全くしていませんでした。おバカ苗に対して気にしていませんでしたし、その他の病気も気が付いていないだけかもしれませんが、発生していないと思っていましたので・・・。
 ですから、この処理が雑で、発芽率が落ちたのかもしれませんが、分かりません。

 これが、今年の苗立てです。ご感想、ご意見、アドバイス、何でも頂けたら本当にうれしい。
 来年百姓、来年こそは!
 乾田苗代しようかな。でも、5反の手植えはできるかな。
 では、次は「田植え・補植・除草」について、ご報告したいします。

 今回も、お読みいただいて、ありがとうございました。


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