見出し画像

心の強制振動 映画評『スイス・アーミー・マン』

テスト
『孤独、帰らぬ想い、憧れ、友情、絶望。ユーモラスなシーンの引き波、美しいシーンの押し波が繰り返され徐々に大きくなって津波のように自分の感情も巻き込まれぐちゃぐちゃになってしまいました。こんなに映画館で泣いたのは初めてです。またこの映画に感情移入できる自分の感受性は、他のレビューとまったく違うので自分は特殊なのだなと思いました。他の人が味わえない貴重な体験ができて幸運でした。』

これは映画館で泣きじゃくった私が書いたアマゾンのレビューです。(現在は削除しています)この映画評は『スイス・アーミー・マン』が心に刺さりまくった私の心の叫びです。

『スイス・アーミー・マン』(原題:Swiss Army Man)は2016年のアメリカ合衆国のドラマ映画。監督・脚本はダニエル・シャイナートとダニエル・クワンからなるコンビ・ダニエルズが、主演はポール・ダノとダニエル・ラドクリフ。

ポール・ダノがオナラで推進する水上バイクになったダニエル・ラドクリフに乗って絶叫するという、私の笑いのツボにハマるキャッチーなCMで有名なこの映画。まさかこの映画であんなに泣くとは思いませんでした。

嗚咽する自分の感情の理由をインターネットで探した結果、自分の心の中で以下のような化学反応が起こったと考えられます。
メインプロットのポール・ダノ扮するハンクの望郷の想い、恋愛感情、孤独。
サブプロットのダニエル・ラドクリフが務めたメニーのスイスアーミーナイフのようなユーモラスな使い道。
メインプロットとサブプロットのシーンが美しい映像と音楽に乗って交互に演出されることによって、物理の力学でいう【強制振動】のような効果が私の心に生じたのだと思います。
(強制振動とは、バネのようにある周期で振動するものに、外から変位とは関係ない力を加える運動のことです。 たとえば、ブランコは漕がないとゆらゆら揺れて終わりですが、ブランコの揺れにあわせて漕ぐことによって、揺れを大きくすることができます。)インターネットの検索より。
笑う感情と感動する感情の間を行ったり来たりすることで、感情の波がどんどん大きくなっていくという唯一無二の体験・・・そして冒頭にあった津波に巻き込まれるような感情の現象。
この感情を揺さぶる構成は多分偶然できたものだろうな。常識を無視するクリエイター系なのでそこまで考えてないと思う。狙って作ったのであれば神。

心の揺れが大きくなった時のハンクとメニーの想いが重なった場面は映画史に残る名シーンだと思います。 
敢えてどことは書きませんが。

この感情にたどり着けるのは生理的嫌悪感が少ないだけでなく、許容範囲の広いユーモアのセンスと常識の無さ、疲れている心も必要。(オナラ、勃起、ゾンビの口から出てくる水を飲むなどのジャンクっぷり)

『長編6冊分のアイデアを1冊に凝縮、それでも足りずに6冊分の悪趣味と矛盾とまちがいをぶちこんで、ガラクタの山から芸術作品をつくりあげた』
これはアルフレッド・ベスターの歴史的名作SF『虎よ、虎よ!』のあまりにも有名な当時(1956年)の書評であるが、まさしく「スイス・アーミー・マン」にも言えることだと思う。

「褒められるだけの小説は退屈だ。けなされるだけの小説は陳腐だ。賛否両論の中にこそ傑作はある。」少年時代の頃に読んだ三島由紀夫の書評だったかな。(原文不明 詳細求む)
賛否両論ではない。賞賛と非難よりも絶賛と酷評。映像美と音楽、上記の感情を揺さぶるシーンが混然一体となったこの作品は時代を超えるカルト映画になると思う。 

ダニエルズの次作はA24史上No.1ヒットを記録したミシェル・ヨー主演『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 』が今年3月に日本公開されるそうで。フレドリック・ブラウンの発狂した宇宙っぽいのかなと期待している。・・・なんかアカデミー賞にノミネートされているw

#スイス・アーミー・マン     #スイス・アーミーマン      #スイスアーミーマン         #映画評
#強制振動
#エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?