タイドプール

潮が引いたあとに岩場に残った小さな海の事をタイドプールと言うそうだ、と知ったのはいつのことだったか。
小さな頃、母とお風呂に入ると決まって、母の鎖骨にお湯をためてもらっていた。
なんだかこっそり宝物を見せてもらってるような気がして、おそらく、あれは初めての背徳感だったんじゃないだろうか。
母は痩せていた。
もちろん体質もあったけれど、おそらく母1人子1人の生活に疲れてのことだったと思う。
それでも、とても美しい人だった。

お風呂の時間がとても好きだった。
アパートの狭いユニットバスに収まって、ハンカチでクラゲを作ったり、しっぽの色の変わる人魚のおもちゃで遊んだり。
そんなことばかり覚えている。
タイドプール。
その言葉を知ったとき、
母の鎖骨のようだな。そんなことを思った。

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