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【日記】また飛行機に乗って

天気の良い平日、休みを取ってまた飛行機に乗るべく電車で空港に向かった。車窓から絵本のクリスマスみたいにこんもりと雪を被った家々が見える。美しいけれど車内は混雑しており大きなトランクの観光客などでごった返していた。みんな旅行したいんだな。わたしもしたいよ。

自分も飛行機に乗るのだけれど行き先は実家。目的は遠距離介護。これを旅行とは呼びたくない。移動だ。
寝たきりだった親は空に還ったが、認知症もなく自分で歩き食べている方の親は相変わらず一人暮らしだ。時々入院しながらそれでも不死鳥のごとく復活している。遠距離にいる娘としてはヘルパーさんに頭が上がらない。

今回は老人を正月にひとりにしてしまった。だって言い訳になるけれどわたし自身もこの間まで入院していたのである。飛行機なんて乗れる状態じゃなかった。さらにこれから再手術も控えているのだが、現在のところ身体はそれなりに動くし、動いてかまわないので90代の顔を見に行く。何をするわけでもないけれどね。

何度も介護で行き来し、仏事も有り、新千歳空港のショップ&レストランガイドをいつか書きたいなと思うくらいには頻繁にこのあたりを訪れている。その中でも行きに必ず寄るのがここ、文教堂書店。JRの改札(B1)を出てANA側のエスカレーターに乗ると1階にある。

新千歳の空港ビル1階は複雑な構造をしていて、
ここにたどり着くのは到着ロビーからだと難しい。

本屋を見ると「何か買わなければ!」という気持ちになる森野だが、それは本が好きとかそういうポジティブな気持ちばかりではなく、買わないとどんどん本屋がなくなっていく恐怖感も大きい。読む本は持っていてもさらに買う。だけど持ち歩きが大変だから文庫本で薄めのを選ぶ。ホラーは苦手でなるべくほのぼのエッセイ系を。

この文教堂も以前は書籍の占める割合がかなり大きかったのに、最近では本が少なくなり文具や雑貨、ちょっとかわいいモノなどが増えた。シマエナガグッズとか。そうしないとやっていけないのだろうか。それでも入ってすぐの所に北海道の作家を代わる代わる紹介するコーナーがあったり、雑貨や文具の棚に関連する本が陳列してあるなど、結構攻めている本屋さんである。全身で応援したい。今回は迷いに迷って武田百合子を買った。「川上弘美 選」というのが決定打になった。きっと読んだことのある文章もたくさん含まれているんだろうな。

武田百合子の随筆集。選者は川上弘美。文春文庫


ところで当然のことながら1月の北海道は雪が積もっている。
搭乗して機内から望むと遠くに見える山も真っ白である。何という名なのかわからなかったのでググってみた。どうも樽前山たるまえさん風不死岳ふっぷしだけみたい。(間違っていたら教えて下さい)
空港では飛行機と滑走路の方角を向いていることが多いから、こんなに山が見えるなんて長年通っていて初めて気がついた。

機内から見た山々

白い山に別れを告げて飛行機は飛び立ってゆく。先日の羽田の事故を思い出し、とても真面目に機内安全ビデオを見た。

  
昼の便だったので空弁を買って持ち込んだ。
お店は国内線の制限区域内(保安検査場を通った後の区域)にある「北の味覚 すず花」というお寿司屋さん。保安検査場を入ってANA側、つまり搭乗口の数字が小さい側にずーっと歩いて行くとある。すず花さんの近くに雪印パーラーの小さい売店もあって飲み物やソフトクリームを売っている。この雪印パーラーは国内線制限区域内で2番目にコーヒーが安い。一番安いのは逆方向のJAL側をずーーーっと歩いて行った先、スカイマークの搭乗口に近いローソンのコーヒーだ。おっと余談でした。

さてこのお寿司屋さん、イートインもあるがいつもつい買ってしまうのが画像の北海手まり寿司。約1000円。空港売店ということを考慮してもコスパが良い。味も良い。

サーモンと鯖とエビとイクラ。
お値段は同じでイクラの代わりにウニのバージョンもある。

こうやって空弁を食べていると、無料飲み物のワゴンが出てくる時間でなくてもCAさんが気づいてさっと紙おしぼりをくれたりする。このへんがJALとかANAはサービスが良い。これに慣れてしまうと精神が贅沢な客になってしまうので、(こういうのが普通ではないぞ)と自分に言い聞かせるようにしている。
 

さて、ふだんはうとうと眠ったりするのにこの日に限って眠れなかった。機内Wi-Fiを繋ぎぼんやりと雑誌をながめる。ふと気づいたら日本アルプスの上空を横切っていた。いつも通るルートなのに見ていないことが多い。座席が通路側だと見えないし。

でもこの日はたまたま窓側で、雲海から頭を出して屹立する山脈のあまりの美しさに息を呑んで見入った。白い峰々もやいばのような稜線もなんて美しいんだろう。写真ではとても伝えきれない。

乗ったのはANA

高度はどのくらいだったのか、ゆっくりゆっくりと山々を通り過ぎていく。機内の地図では穂高や乗鞍の名前が出ていたので北アルプスらしい。note友だちがあの下あたりに住んでいるのかななどと想像する。
おーいおーい、わたしはここだよ。心で手を振る。

  
その後、事故もなく早めに到着したのでホッとした。飛行機って遅れることはあっても早く着くことってあまりない。ひとりで旅してきたのに、どうしてもひとり時間が欲しくて、親が待っているのはわかっていたが30分だけ自分に許してスタバでまったりした。ほうじ茶ラテのつもりで行ったのに見たらあったのでつい頼んでしまったジャンドゥーヤ・チョコレート・モカ。

サイズはショート

もっちりしたクリームの下から、ベースはコーヒーのはずなのになぜかチョコレートドリンクみたいな温かい飲み物が出てきて大変結構だった。どうもバレンタイン期間の新商品として出たばかりらしい。出会えてラッキーだったかも。

 
そんな道草もしながら実家に帰って、また少し小さくなった親と出会う。わたしの顔を見て喜んでくれる。仕事もあるのでいつも3日くらいしか滞在できないのだが、あと何度、こうやって元気に話が出来るのだろう。自分が先にくたばらないように気をつけなくては、と冗談ではなくマジで思った。

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