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『〈主婦〉の学校』座談会〜「#ゆるゆるお父さん遠足」の皆さんが語る「主婦は文化」

10/16より『〈主婦〉の学校』というアイスランド映画を劇場公開する。
1942年からアイスランドに実在する、男女共学の家政学校に迫ったドキュメンタリーだ。この学校は良き主婦になるためではなく、自分のために行く学校。「自分ごとの、家しごと。」というキャッチコピーをつけたのも、家事を自分ごととして考える全ての人に観て貰いたいと思っているからだ。

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しかし、なかなか映画館に観に来て貰えないが、本当は映画を観て欲しいと思う人たちがいる。この映画だったらそれはどんな人たちか?映画のタイトルとビジュアルの雰囲気から敬遠するのは男性だろう。家しごとに全く関心がない人は可能性がないが、家事が好きな男性も最近は増えているし、そんな人たちには出来れば観て欲しい。しかし試写で観て貰おうにも、こちらからの働きかけが難しいなぁと思っていたら、あるご縁があった。それも試写を観て貰うだけでなく、その後にオンライン座談会まで開催して貰えるという有難いお話。今回ご協力いただいたのは「 #ゆるゆるお父さん遠足 」の皆さんだ。

サイトトップに「お父さんたちが気軽に声を掛け合える そんな世界があってもいいよね」とあり、家事や育児に積極的なお父さんたちがリアルでもオンラインでもゆるゆるとつながる世界が広がっている。今回は運営主要メンバーの中から6名の方にご参加頂いた。たろっくすさんのファシリのもと、ぐでちちさん、rikuパパさん、着太郎さん、子育てとーさんさん、kabut64さんに、それぞれの率直な感想から始まって、自由に対話をしてもらった。皆さん、とても言葉が豊かなので、様々なキーワードが出てくる、出てくる。

「主婦の学校」の第一印象から

「この学校での時間はまるでおとぎ話のよう。そういう時間を10代後半や20代で過ごせるのは幸せなこと。それも題材が、ある意味、生きる力につながる家事なのが面白い」
「この学校が教えていることは『生きるために必要なスキル』から『生活を豊かにするためのスキル』に変わっていったのかも。家庭科でもそうだけど、ただやり方を教えるだけだったらYouTubeで十分事足りるしね」
「学校や学生の雰囲気にふわっとしたゆとり、贅沢さがある。正直最初イラっとしたくらい(笑)。彼らはモラトリアムを選べる余裕があるし、必要に迫られて家事を学んでいる感じがしない」
ボーイスカウトや合宿みたいに一定集団でクローズドの共同体験をすることに似ていて、そういう仲間とか想い出にノスタルジーを感じた」
「意外と古さが残っているように見えたこの学校がジェンダー平等社会と言われるアイスランドの現状とどうリンクしているのかが気になった」
「この学校の学習には育児がない。(学校の)家庭科で学んでいるのか?」
「そもそも映画のタイトルに主婦か!と構えたけどね(笑)」

家事というより「文化」を学んでいる

「この学校は家庭生活をベースにした伝統的な文化を学ぶ場なのでは。うちの地元もそうだけど、文化は家庭や地域で継承されてきたものだったよね。今はこの学校のように専門の学校がそれを担っているのかもしれない」
「確かに学校で実践的に家庭文化をつないでいくことには意味がある。なんでも自分で1回やってみないとなかなか腑に落ちないものだし。スタート地点からモノが作られていく過程を実践的に学ぶのは大切なことだよね」
「生活を通じて、そういう1本の線を学んでいくという意味では、家庭の役割が大きい。良い悪いは置いておいて、生活をメインで担っていたのが主婦だとすると、主婦の役割は重要だよね」
「つい主婦の機能的なことに目が逸れてしまっているけど、主婦は「文化」であり歴史の一部として語られるものなのかもしれない」

手しごとってやりたい?お金があったら家事はやらない?

「いや、むしろお金があったら仕事をセーブして家事育児にがっちり取り組みたいかもなぁ」
「自分は掃除が苦手だった。でも結婚してから必要に迫られてやるようになり、そこにリセットしたり工夫したりする楽しさを見出せるようになってから、苦ではなくなった。映画の中でも、最初は出来なかった手しごとに楽しさを見つけてからはウキウキしてたし」
「自分が苦手だと思いこんでいたことに意外とハマったりするのも、生活を通じて起こることだったりするよね」
「でも、ワンオペだったり、生活に追われていると、この学校で教えているような手しごとをする余裕がないのも事実だよね。手の込んだローストビーフより、とりあえず焼肉のたれで焼く!みたいな」
「ただ、そんな中でも効率的にこなすことだったり、違う楽しさを見出して何とかやっていくのが家事なのかもしれない」

1人じゃなく、誰かと体験するから楽しくなる

「家事自体は楽しくなくても、学校で誰かと一緒にやることで楽しくなるのかもね。出来る喜びとかポジティブな思い出が残って、その後、1人になっても家事に向き合えるようになる。そうなったら学校としては成功だよね」
「今、黙食がつらいって話があるよね。みんなと一緒だったらやり過ごせるのにそれが出来ないのがつらい。共同で体験することの重要性は人間の豊かさに通じるのかも」
家事をしないってセルフネグレクトでしょ。たとえそれに陥ったとしても、楽しかった経験があれば、自分を変えることができるかもしれない」

〈主婦〉とはなにか。主婦や家事のイメージが変わった?

「家事はただこなすだけだと思っていたけど、取り組み方や考え方を変えると主体的な面白さや楽しさがあるものだなと。家事は奥が深い!」
「みんなと話しているなかで、主婦は家庭の文化を継承してきた存在だと思えるようになって、ネガティブからポジティブなイメージに変わった。映画を観て色々考えたし、主婦っていいなと思えるきっかけにもなるのでは」
主婦自体が文化だと思うと、自然なことなんだなと。この学校は主婦が担ってきた文化を学ぶ場。ノスタルジーを感じたのも郷愁だけじゃなく、背景にある主婦という文化に対する憧れがあるのかもしれない」
「主婦という言葉にはネガティブなイメージがあった。学校でおとぎ話のようにやっていた主婦的なことがポジティブに変換されるといいよね。男女関係なく、自分の中に『リトル主婦』がいると、生きていくのに役立ったり助けてくれたりするのでは。主婦や家事のイメージがより良くなった」
「元々、主婦にネガティブなイメージはなく(むしろ主婦自身がネガテイブに感じているのでは)、主婦の豊かさ、生活の中で楽しみを感じる余裕や余白を求めていく必要があることを感じたその中で、主婦という領域の生活を支えている部分を見つめる体験は今の時代だからこそ必要なのかも」

これまでこの映画を様々な人たちに観て貰って話を聞いてきたが、出会ったことのなかった視点での語りが興味深かった。ジェンダーギャップに対するアジアと非アジアの違いなど、もう少し聞いてみたいトピックも色々。
#ゆるゆるお父さん遠足 の皆さま、ありがとうございました!またぜひ。
(文責:kinologue)


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