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デスノート Light up the NEW worldを観た〜馬鹿の頭脳戦、でもブロマンス映画としては最高峰の話〜

「ノートが銃に勝てるわけねえだろ」
そんな……。


実写化大成功作品の続編で、東出昌大、池松壮亮、菅田将暉と最高のキャストを呼び、たくさんお金をかけてできた馬鹿の頭脳戦、デスノート
Light up the NEW worldの話をします。


原作では描かれなかった「人間界で同時に存在していいデスノートは6冊まで」というルールに踏み込んだ本作の舞台は映画版デスノートの10年後の世界。
各地で失われたはずのデスノートを使った犯罪が多発したことから、東京でキラ逮捕に向けて奮闘する熱血刑事・三島(東出)を始め、デスノート対策本部が編成される。
Lの遺伝子と意志を受け継いだミステリアスな探偵・竜崎(池松)も加わり、キラの信奉者・紫苑(菅田)やウォール街の投資家、尊厳死を患者に与えるロシアの医者など様々な敵を相手取った頭脳戦が始まる!

実際は頭脳戦じゃない。
作戦を2分で忘れる脳筋どもがボコボコ死んだり、お子様ケータイ以下のセキュリティの本部がハッキングされり、キラの不在で日和ったボンクラや前作キャラが愚行を重ねるB級映画だ。

隕石みたいにデスノートが宇宙から降ってくる劣化版君の名はみたいなオープニングでもうヤバさがわかる。前前前世から探したキラの後継者がこのザマか。
むしろ0からまた脚本を始めてくれ。

挙げ句の果てに竜崎の口から「ノートが銃に勝てるわけねえだろ」という根底を揺るがす発言が飛び出す。だったら、最初からエクスペンダブルズとか呼びなよ!


これは死神がデスノートを馬鹿に持たせたらどうなるかというお題でやる大喜利大会だ。
でも、見所がまるでない訳じゃない。プロットの粗をエモーションなシーンで誤魔化すのは駄目なB級映画がよくやることだけど、このデスノートLNWはエモい関係性だけはめちゃくちゃ上手なのだ。

正義感が強く暴走しがちな三島と、アウトローな天才に見えて病と弱さを抱えた竜崎の凹凸バディムービーとして、そして、ダブルフェイスや新しき世界のような秘密と使命を抱えた男たちのブロマンスとして観ればすごく面白い。

普通の人間はキラやLほど頭が良くない。(ちょっと度合いがひどいにしても)作中人物だってそうだ。
天才になれず、でも、天才の影を追うしかなかった、普通の人間たちの運命が重なった結果がこの物語だと思う。
主人公のある真実が明かされて、名前というデスノートに深く関わるテーマが尚更強調されるのもそういうことだろう。

終盤、キラ対策のため偽名を使っていた主人公コンビが本名を明かし、「平凡な名前だ」と笑い合うシーンがある。月やLと違って、名もない凡庸な人間たちは他人に情も持ってしまう。そういった面では、前作より個としての人間の命を奪うことの罪と罰が強調されていたように感じて面白かった。

運命に翻弄された人間たちが一緒に駆け抜けたわずかな時間の結末は、映画の出来自体がどうでも少し心が動かされてしまう。


ここから少しネタバレ↓
脚本はともかく、随所のモチーフには拘りが見られるのがこの映画。
そのひとつが三島の部屋に飾られている絵画、ベックリンの死の島だ。
死の島は全部で5枚あり、3番目の作品には絵の中の墓標に画家自身のイニシャルが記されている。“三島創”という偽名は、自分の本名を捨てて、名前で死を招くデスノートの捜査に準ずるという彼が築いた自身の墓標なんじゃないだろうか。
ベックリンは対になる生の島という絵も描いており、合わせると絵画は6枚で、デスノートの数と一緒だし、三島に託されたキラからひとの命を救うための捜査ノートが生の象徴とも考えられる。
↑ここまでネタバレ


デスノートの続編だと思うと純然たるクソ映画だけど、バディムービーやブロマンスとして観ればとても面白い不思議な映画だと思う。
デスノートじゃなく、普通に1クールの刑事ドラマでできなかったものかな……いや、無理だな。

普通に潜入捜査もののブロマンスが観たいひとはハートブルーとかを観ましょう。

追記:(ネタバレ)

GYAOの配信を観て思い出したこと。

竜崎はいつもデスノートを持つとき、Lを意識して片手で摘むように持っていたけど、ラストで三島に捜査ノートを渡すときだけは手で握っている。  

Lの後継者の座を手放す直前、あの独房でだけふたりは誰の名前も背負わない個人になれたのかなと思った。

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