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掌編小説【うさぎ】♯毎週ショートショートnote

お題「運試し」「擬人化」

【うさぎ】(410文字)

初詣を終えて鳥居を出た僕の前に、兎が飛び出してきた。
「あたしを擬人化してほしいの」
「今年は君の年なんだから、そのままでいいじゃないか」
「毎年恒例の『運試し擬人化』なの。去年の虎さんは声をかけた人を食べちゃったから擬人化できなくてアウトだったのよ」
「アウトって、どうなるの?」
僕は興味をそそられて聞いてみたが、兎は悲しそうに首を横に振るだけだった。とりあえず、僕に声をかけたのが虎じゃなかった事に感謝すべきなんだろう。
「擬人化って言われてもどうしたらいいのか」
「あたしを人間の女だと思ってくれたらいいのよ」
それなら、と僕は兎を連れて帰った。家に帰ると兎は器用にお雑煮を作ってくれた。夜には一緒にベッドで眠った。僕たちは愛し合うようになり楽しく暮らした。
「あたし、運がよかった」
兎はうれしそうに言った。

一年後、兎と一緒に初詣に行ったら鳥居の外で龍に声をかけられた。
「俺を擬人化してくれ」
龍を息子にするのは大変だな、と思った。

おわり

(2022/12/27 作)

上記の『たらはかに』様の12/25~12/31のイベントに参加させていただきました☆
でもまだ年末でしたっけ…(;・∀・)なんかもうお正月気分。
そういえば、たらはかに様、一周年おめでとうございます!
わたくし、参加し始めてからまだ二か月の超新参者ですが、来年もよろしくお願いいたします☆

おもしろい!と思っていただける記事があれば、サポートはありがたく受け取らせていただきます。創作活動のための心の糧とさせていただきます☆