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詩みたいな【オマケの日】#シロクマ文芸部

お題「閏年」から始まる物語

【オマケの日】(383文字)


閏年が好き。
オマケの日があるから。
しかもその日は誕生日。

さて
二十九日の朝。
まずは
珈琲を淹れてぼうっとする。
大好きな時間。

ふと
休日にいろいろやっても
あとから振り返るといつも
朝の珈琲時間がいちばんよかった。
そう思うことに気づく。

なーんだ
結局なにもしなくてよかったってこと。

そもそも
閏年は暦と季節のズレを修正するためにあるのだから
この日は、ただ在ればいい。

ということは
その日にいる私も、ただ在ればいい。
誕生日なら、なおさら。

さて
外は雨。

私の耳は雨音を聞く。
私の手は珈琲カップを持ち上げる。
私の口は珈琲をひとくち飲む。
私の鼻は珈琲の香りをかぐ。
私の舌は珈琲をあじわう。

珈琲を飲む私を見ている私。
微笑むのを感じる私。

ただ
ここに在り
満たされて生きている私……

そうやって
私は何時までも、ぼうっとしていた。
なにもしないで。

……雨上がりの夕刻。
暦と季節が重なり合う。

オマケの日は
最高の日。


© 2024/2/24 ikue.m


小牧幸助さんの『シロクマ文芸部』イベントに参加させていただきました☆

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