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ピカソとその時代 in 国立西洋美術館

こんにちは。

国立西洋美術館で開催されている、
ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展に行ってきました。

かっこよい

ベルクグリューンさんはドイツのコレクターさんです。前衛美術を多く収集していた方で、現在はベルリンにその人の名前を冠した美術館があります。

今回はその美術館が改装工事に入るため、各国で展覧会に回ってくれているようです。

20世紀を代表する前衛美術のアーティスト、
ピカソ、クレー、アンリ・マティス、ジャコメッティなどの作品が展示されています。
1900年代のヨーロッパを生きた作家ということは、二度の世界大戦やナチスによるユダヤ人の迫害、ナチスによる前衛美術の否定の時代を生きた作家の作品です。

いろんな表現をするアーティストたちがピカソをはじめ、同時期の作家たちがお互いに影響しあっていたことがわかる展示でした。

前衛美術と戦争

前衛美術は、印象派から始まりキュビズム、フォービズム、シュールレアリスム、抽象表現など19世紀から20世紀に生まれた芸術革命の総称です。
写真が1850年あたりに出てきてから「見たままを描く」ことから「自分の内面や世界観を描く」ことが求められるようになり、画家を取り巻く環境も大きく変わった年代です。

20世紀は世界大戦真っ只中の不安定な時代でした。ナチスドイツの支配下では古典的な美術が「正しい美術」として多くの絵が略奪されています。一方で、前衛美術は退廃芸術として否定されていました。精神に訴えかけるような芸術は危険だと感じていたのでしょうか。特にユダヤ人芸術家はヨーロッパを離れ、亡命しなければなりませんでした。コレクターのベルクグリューンもユダヤ人として迫害の対象となり、祖国を離れアメリカに移住し、再びヨーロッパに戻ってきたのは戦後のことになります。

その時代の暗い空気感は絵にも大きな影響があるようで、暗い色の作品が多かったように思います。小さな絵が多かったのもの影響しているのでしょうか。
戦争が終わり、その反動なのか、ピカソの晩年の作品は色が元気がハツラツとしていて元気が出てくるような作品でした。

戦後、ジャコメッティとピカソ


呉を舞台にした「この世界の片隅に」という映画のワンシーンを思い出しました。
終戦した夜、お父さんが「もういらないね」と灯りの周りにつけていた布を取り払って、夜景に人家の灯りが戻りました。(灯火管制と呼ぶらしい)

大切なものを失いながら生きていた時代、混沌とした泥土のような戦争が終わり、ピカソも分厚い黒い布をとったような気持ちだったのかな。

ピカソはその後もアメリカで活躍し続けます。

楽しそうな赤


ナチスによる迫害によって否定された前衛美術の作品を、現代のドイツに展示する意味について、音声ガイドで国立西洋美術館の館長 田中正之さんが話していました。
同じ表現しか認められないような世の中で起きた悲劇、そして芸術の破壊や追放。その地でかつて否定された多様な表現の自由を認めた大規模な美術館を構えることに大きな意義があると。
忘れてはいけない、たった数十年前の出来事と、今の社会について考えさせられました。

マティスの切り紙絵展

色彩の魔術師マティスは、フォービスムといえばマティスと名前が出るほどの色の概念を覆した人です。後期は切り紙の表現に移行していたんですね。
とってもびっくりしました。
思い浮かべる切り絵とは表現が違いましたが、同じ紙を切るものとしてとても興味深いです。ハサミを使っていたのかな。

切り絵の背景の配色はテーマとなるお花やイメージを決めて行っています。
今の和紙による色つけをしばらく続けているので、今年の公募に出す作品では、もっといろんな表現や配色を試していきたいと思っていました。
マティスの作品をもっとたくさん見て、色の先入観などをぶち壊したいです。

いろいろな前衛美術の流れを見て、マティスやセザンヌが好きなのかなとぼんやり思いました。もっと見てみたいと思いました。

アンリ・マティスの切り紙絵展 1953年
この作品好きでした。


10年前バルセロナでのピカソ美術館

ピカソとの縁は幼少期に遡ります。
実家にずっとピカソの絵が飾られていて、「わっかんないなー」と思いながら大きくなりました。
記憶がある限りずっとリビングに鎮座している大きなピカソの絵「闘牛」のレプリカは我が家の変遷を眺めてきました。

2013年にスペインのバルセロナにいった時にピカソ美術館に行きました。ピカソも何もわからないけれど、美術館に行けば何かわかるかもしれないと思ったからです。

少年時代に描いていた素敵な作品が青くなり、形もどんどん崩れていって、色も形も破壊されていき、「わっかんないなー」どころか脳みその普段使わない部位を刺激されるからなのか晩年の作品あたりで気持ち悪くなってしまったことを覚えています。
見終わった後、売店側のベンチにうずくまってしばらく動けなくなりました。(寝てたのかもしれない)
父にマグカップを買って帰りました。

このタイプのピカソが好きみたいです。


その時よりピカソやその時代に生まれた数多の表現の面白さを感じることができたのは、10年で何かしら成長をしたからなのか、人生の経験を積んだからなのか。はたまた、彼の人生の間に作り出してきた膨大な作品のなかの心に引っかかるものに出会えたからなのか。
今回も帰りの電車でぐっすり寝てしまったので、脳みそが疲れるのは変わっていないみたいです。

あの頃よりも、きっと。



グッズ情報

気になった作品のポストカードを買って帰るようにしていますが、今回はやたらたくさん買ってしまいました。。。
様々な年代のピカソの展示がありましたが、改めてポストカードコーナーで作品の表現の分厚さを実感しました。「ピカソよくわからないなー」と思っていましたが、この作品の多さや人に影響を与えるいろんな表現を生涯かけて創作し続けていることがピカソのすごいところなのかな、と改めて思いました。

青の時代 ピカソ
戦時中のピカソ
戦後のピカソ


可愛いアンリ・マティスのグラスも買ってしまいました。
グッズにすると可愛い。刺繍などもとっても可愛かったです。

注ぐものによって背景の色を変えられる〜色彩の魔術〜


展示情報

ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展
国立西洋美術館
2022/10/08-2023/1/22

入場時間ごとの事前予約が必要です。土曜日のお昼に行ったので結構な人でした。
前に美術館の前を通った時に朝イチの回でも結構な人が入場待ちの列をなしていたので、どの時間に行っても結構混んでるのかも。


前衛美術は難しいし疲れるけど、楽しいと思います。
次にピカソに出会う時も別の作品で別の画風で脳みそを刺激してくるのでしょう。
その時を楽しみにしています。またねピカソ。

切り絵作家 ひら子

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