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岐阜考察2 地理②

名古屋との関係性

岐阜県は7つの県と県境を共にしているが、最も重視されるのは南部に接する愛知県である。さらに厳密に言えば、愛知県の県庁所在地たる名古屋市である。

ここで名古屋市について簡単に触れておこう。名古屋市は尾張徳川家のお膝元として江戸時代から続く中部圏一の都市である。200万人を超える人口を有し、これは岐阜県民の総数を超える。市民は名古屋に籍があることに誇りを抱き、出身や所在地を聞かれれば概ね県名ではなく、名古屋と答える。この辺りは横浜市と神奈川県の関係に似ている。

トヨタを中心とした自動車産業の恩恵を受け、国内有数の経済規模を誇る。市民は名古屋市をして、東京と大阪に次ぐ日本第3の都市と自認しており、厚顔無恥にもその座に挑もうとする札幌、仙台、金沢、神戸、福岡と熾烈な煽り合いをしている。一方で経済規模は名古屋市と同等、人口は170万人以上勝る横浜市の存在に触れることはない。自分をNo.3以内に置き、ベストではないがベターであるという絶妙な自尊心を保つ名古屋市民一流の精神的健康法である。

中部圏はこの名古屋を中心として回っている。岐阜県もその例に漏れない。岐阜県における地政学は至って単純である。全ては名古屋からの距離で決まる。より名古屋に近ければ近いほどその価値は増す。これは県庁所在地である岐阜市が名古屋の真北にあり、電車で3駅の距離にあることからも窺い知れる。

私の郷里は岐阜市と幾分か離れたところにあり、名古屋からみて北東部に位置していた。路線は違ったが名古屋まで電車で概ね1時間ほどの距離であった。私の住んでいたところから西側、つまり名古屋方面へ行くことはより都市に近づくことを意味し、離れることは―――これは長野県に近づくことと同義だが―――山間部の僻地へ向かう趣があった。

岐阜県民は全て、名古屋を向いている。一方でこの事実は、岐阜県民の自県への興味の低さも露呈させる。岐阜県民は南部へ熱い視線を注ぎ、しばしば自県を含めそれ以外を顧みることを忘れる。

そもそも岐阜県は県内に日本アルプスを抱えて山地が多いため、県内の移動には制限が伴う。私の郷里から岐阜市へ行く場合、一旦名古屋へ出て岐阜市方面へ切り替えす必要があった。だが一方で、名古屋を経てまで岐阜市へ行く用事というものは中々ない。なぜなら、名古屋で大体のことが事足りてりてしまうからである。そのため私は岐阜に住んで20年以上、岐阜市へ行ったことがなかった。

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