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音楽が1番好きと言った分際で

音楽が一番好きだ、音楽は生活の一部だ、
No Music No Lifeと豪語したのに
とんでもない失態をしたことがある。

音楽と真剣に向きあっている人を
馬鹿にしてしまったのだ。

2度も。

中学の音楽の授業の時、『We Are The World』の
ミュージックビデオとメイキングビデオを
鑑賞する時間があった。

マイケル・ジャクソン率いる、名だたるアーティストが
参加して制作された楽曲である。

スティーヴィー・ワンダーやシンディ・ローパーなど
そうそうたるメンバーがそろっている。

映像の中のアーティスト全員が輝いていた。

音楽のよさにも、アーティストそれぞれの
個性にも私は目が釘付けになっていた。

そんな中、あるアーティストが歌っている時に、
くすくすと笑い声が聞こえてきた。

クラスメイトがものまねしていたのだ。

ものまねされていたアーティストは、
ブルース・スプリングスティーン。

米国のロック界を代表する重鎮として活躍していた
アーティストだ。

先生の目を盗み、ものまねしているクラスメイトを
よく見てみる。

表情、歌い方といい、よく特徴をとらえていた。

これまでの感動がふっとび、
私も笑いそうになっていた。

ものまねしているクラスメイトに完全に
引っ張られている。

映像の内容が入ってこない。

笑いをこらえるのに必死だった。

このビデオ鑑賞は数回行われたのたが、
毎回、ブルース・スプリングスティーンが
歌う番になると、くすくすと笑い声が聞こえていた。

毎回、先生の目を盗み、ものまねしている
クラスメイトの方を見て、笑いをこらえている。

もはや、自ら笑いにいっていた。

音楽が一番すきだと豪語した分際で、
音楽と真剣に向き合っている人を
笑おうとしている。

これは許されるべきことではない。

大人になっても同じ過ちを繰り返した。

べろんべろんに酔っぱらって同期と一緒に
帰っていたときのこと。

弾き語りをしている一人の路上ミュージシャンが
目に入った。

何を思ったか、千鳥足でそのミュージシャンの
隣へ歩み寄り、私はエアギターをやっていたのだ。

しらふの人間からすると、
見るに堪えない行為だっただろう。

私はただの迷惑な酔っ払いにすぎなかった。

音楽と真剣に向き合っている人を
またもや馬鹿にしてしまっていた。

音楽は生活の一部だと豪語したくせに、
音楽で生きている人を馬鹿にしている。

心底自分が情けなかった。

あの時のミュージシャンは今、何を
しているのだろうか。

彼が作った音楽をたくさんの人に
聴いてもらえていたら、なによりなのだが。

そして、もう二度と同じ過ちを繰り返さないよう、
過去の失態を胸に刻み生きていくのだ。

ノーミュージック、ノーライフなのだ。


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