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「2月の始まり、2回目のカラオケ、何度目かの朝帰り」2024年2月3日の日記

59-1

・今週の月曜日から先程まで、ルームメイトの元・クラスメイトがわたしたちの部屋に滞在していた。

・彼女はドイツからの留学生で、半期の留学を終え帰国したばかりなのだが、仲良くなった友人たちを訪ねて観光目的で戻ってきたそう。

・留学終了から2ヵ月も経っていないはずなのにふらっと立ち寄れる距離感が羨ましい。ロシアーウクライナ間の戦争を受け、フィンランド行きの航空便は現在通常のルートを迂回しなければならず、直行便でも10時間以上かかるからだ。

59-2

・今週に入ってから日照時間がどんどん延びている(それでも午後6時には真っ暗だけど)し、晴れの日も増え、太陽の大切さを実感。

・マイナス点を挙げるとすれば、太陽の光で先週の雪が大量に溶け、ますます滑りやすくなったことだ。今週だけでも転びかける人を複数人、大学の前の大階段で転倒し左足を痛めた様子の学生を見かけた。

・雪の降っていない道でさえもつまずくことの多いわたしは、この冬既に5回は転んでいるのだが、今週は遂に秘密兵器がやって来た。

・フィンランドで有名なホームセンターで、靴に貼り付けるタイプのスパイクを購入したのだ。
新しい靴となると最低60ユーロ(9600円ほど)、高品質のものでは100ユーロ(1万5000円)はするので手が出しにくいが、このスパイクは靴に着けるだけなので10ユーロ(1600円)とお買い得。

・しかも使用してみて分かったのだが、転ぶ気が全くしない。わたしの出身地は雪とはほぼ無縁の場所で、スパイクなんて使用したこともなかった。
正直仕組みも分からないまま半信半疑で購入したが、現在は機能面だけでなく精神も支えてくれる代物だ。

・わたしが購入したスパイクは、ペラペラのソールに片足ずつ4本の釘のようなものがついていて、段差をつけることで転びにくくするというものだ。
入室するとキュッキュッと独特な音が鳴るのでちょっと気恥ずかしいけれど、よくよく周囲を観察すると同じようなスパイク付きの靴を使用している学生は少なくない。

・「これで少しは転びにくくなってくれたら…!」という、ほんの思い付きで購入したからこそ、既に大きな働きを果たしてくれている上に、このスパイクを付けることで得られた安心感から、歩幅も心も広くなった。文明の利器、最高!

59-3

・今日は久しぶりに学食でサーモンが提供された。
IKEAの影響か、日本人にとって北欧とサーモンは非常に親和性が高いイメージを抱かれているけれど、実際生活してみるとサーモンを食べる機会はそんなに多くない。
現地とはいえ価格が非常に高く、刺身のような贅沢な食べ方は中々できないからだ。魚の棚の中では最も大きな面積を誇っているから不人気というわけではないが、調理法もそのままではなくスープにしたり、今回の学食ではパスタに入っていたりと、日本のそれとは異なっている。

・ちなみに、味はめちゃくちゃ美味しい。
これまでサーモンメインのスープ、パンケーキ(甘くない方)の上に添えられたもの、パンの上に載せた料理、そしてこの学食と食べてきたけれど、日本のものとは確実に違う「外国っぽさ」がする別の美味しさがある。
この文章を書いている今も思い出せはするが、形容する言葉が自分の中にはないのだ。調理法は生ではないからどちらかというと鮭フレークのようなパサパサした見た目なのに、中身は海の旨味が詰まっている。
フィンランドを訪ねた際はぜひ。

59-4

・とうとう2月に入ってしまい、帰国まであと3か月ということに驚愕。
年明け後は特に、毎日が2倍速になったかのように進んでいる。

・2月はフィンランド語で「Helmikuu(ヘルミクー)」という。
真珠のパール(Helmi)に月を表すKuuを合体した言葉だ。
降り積もる雪がキラキラと真珠のように光る様子から由来しているらしい。

・日本の2月「如月」はというと、重ね着を意味する衣更着(きさらぎ)や、草木が生え始めるという意味の生更木(きさらぎ)が由来という説があるらしい。
同じ日付でも思い描く光景が全く違っていると思うと、不思議な気分。

・今週の授業では英語でいう前置詞にあたる部分を学習した。
たとえば、フィンランド語で椅子は「tuoli(トゥオリ)」という。
Onを意味するlla、つまりTuolillaというと椅子の上を意味し、Inを意味するssa、Tuolissaと聞くと肘掛け椅子のように深く腰掛けられる椅子を指すらしい。

・場所や時期の位置が厳格な英語と比較してフィンランド語はゆるゆるで、その曖昧さが英語話者にとってはかえって分かりにくいらしい。
日本語でたとえるなら「こたつの上にみかんがある」「みかんがこたつの上にある」といった概念だから、日本人には優しい話だ。

59-5

・昨日は冒頭で触れたルームメイトの友人の滞在最終日だったため、久々にバーのカラオケで歌い、朝3時までクラブで踊りまくった。

・人の目を気にしてしまう方のわたしにとって、クラブは縁のない場所で、踊っている姿を別の視点から見ている自分がいる感覚のする、若干居心地の悪いところだった。

・しかし、前回とは異なり知り合いの日本人学生を見かけなかったため、他者の目をあまり気にすることなく純粋にノることができた気がする。
入店の時間がそもそも11時頃と遅く、深夜テンションもあったかも。
ただ2時を過ぎてからは眠気と爆音で記憶が曖昧(怪しい薬を摂取したわけでは決してない)で、4時に帰宅しシャワーを浴びて即入眠。
ライブは好きだし音楽にノるのは純粋に楽しいけれど、翌日の生活に影響を及ぼすという点が気に入らないんだと思う。

・ちなみにここで、ルームメイトの友人が30歳でかつヘビースモーカー、しかも今まで喫煙している姿を見たこともなかったルームメイトが見知らぬ人に煙草を貰いに行っている光景を目撃。
それをきっかけに連絡先を交換した男性から体の関係のお誘いDMがしきりに送られてくるスクリーンを見せてもらって、世界の広さを実感した。
性に合わないから中々立ち寄らない場所だが、ここで得られる実体験知も留学ならではで貴重なものだと思う。
でも時々の気晴らしくらいが、わたしにとっては丁度いい。

59-6

・個人的にグッときたのは、カラオケでKaty Perryの「Roar」を歌った時だ。
11月前半頃、初めてここでカラオケに行った時、アメリカからの留学生が披露したこの歌に感動し、そこでようやく洋楽を本格的に聴くようになった。

・フィンランドのカラオケは個室ではなくバーに1つずつしかないもので、共用の部屋なので既に歌っている集団に乱入したり、逆に乱入されることも多々ある。
そして「誰かの歌を聴く」というよりは「みんなで合唱」スタイルで、マイクを持っている人は聴衆に向かって歌手のような仕草をつけて歌う。

・わたしが感動したのは彼女の歌唱力もさることながらパフォーマンスと、それによって作り出された場の一体感で、自分を奮い立たせる力強さに溢れた歌詞にも感動し「Roar」は格別に思い入れのある曲だったのだ。

・あの時、それまで洋楽を何となく馬鹿にし目を背けていた自分を恥じて、積極的に自分の日常に洋楽を取り込むことで、サビしか知らなかった曲を今や大声で歌えるようになった。
短期間で、しかも留学のおかげで起きた明確な自分の変化を実感できたからこそ嬉しかったし、もっともっと好きな曲を増やしていこうと思えた。

・トゥルクでの生活はまだまだ新発見ばかりで、飽きそうにない。

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