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羽田衝突事故 不都合な真実

朝日新聞デジタルによるとストップバーライト(停止線灯)は昨年の12月27日から停止した訳ではなく、昨年4月からメインテナンスの為、停止していたことが国土交通省への取材で分かったそうです。国土交通大臣の言うことだけを伝えるのでなく、ちゃんと取材している記者もいるのだと少し安心しました。ただ「事故当時は使用条件に合わなかった」と言う国土交通省のヘンテコな回答をそのまま報道するだけで、疑問や突っ込みがないところは少し残念でした。

停止線灯とは滑走路への誤進入を防ぐ為のシステムで国際民間空港条約で「夜間などに活用することで誤進入防止策の一つになりうる」としています。このシステムはC滑走路でも1998年から設置されていました。それが昨年の4月から実質的に運用停止となっていたのです。国土交通省によるとこのシステムは視程600メートル以下(霧などで先が見にくい)または管制官が必要と判断した場合に使われるそうです。しかし、国際条約では夜間または視程550メートル以下としていて夜間には使うことが前提になっているのです。夜間は視程がほぼ無いのですから本来なら夜間に使うのは当然の話です。しかし昨年4月から羽田空港では実質的にこのシステムが使われていなかったのです。上に書いた国土交通省のヘンテコな回答とは「仮にシステムが運用中だったとしても事故当日は視程が5000メートル以上あったのでシステムの使用条件に合わなかった」と言うものでした。確かに昼間であれば視程5000メートルなら使用条件に合わないでしょう。でも「灯」とはそもそも夜間に使うものであって視界が悪い昼間も条件が合えば使うことが出来ると言うルールのはずです。

このシステムは今回起こったような「無線の聞き取り間違い」を防ぐ為のものでもあるそうで、離陸許可が出るまでは赤い停止線が灯っていてパイロットは心理的にも滑走路に進入することに抵抗があると思います。管制官は滑走路への侵入を無線で許可すると同時に手動でボタンを押します。すると赤い停止線が消灯し自動的に誘導路の中心線が点灯することになっているそうです。これが事故当日運用されていれば、海保機の機長だって停止線の点灯を不思議に思い、管制塔に再確認をしたに違いありません。昨年4月に開始したシステムメインテナンスが9ヶ月経った今でも終わっておらず、使用出来ないと言うのは一体どういうことなのでしょうか?単にメインテナンス修理などに時間がかかっているだけなのでしょうか?それとも予算が足りなくて来年度まわしになっているのでしょうか?いずれにしてもこの事故当日、このシステムを担当する国土交通省の幹部は青ざめたことでしょう。なんと言い訳すべきか考えたはずで、まずは海保機の機長のせいにすることを画策しました。でも事故当時の動画によって管制官は1分近く滑走路への誤侵入を見逃していたことがばれてしまいました。そこで国土交通省は組織防衛の為、管制官一人に責任を被せることにしたのでしょう。管制官がレーダーを見ていなかったと言う情報をマスコミに漏らすと新聞などは一斉に管制官のミスを報道し始めました。更にC滑走路の再開に合わせ斉藤大臣は常時レーダーを監視する人を配置するとして、「管制官のミスを際立たせる対策」を打ち出しているのです。これでは一般の人がこのニュースを聞けば、海保機機長の無線聞き取りミスと管制官のレーダー監視ミスが重なった不幸な事故だと思ってしまいます。

本来は現場個人の問題ではなく、組織や幹部の問題なのに国土交通省は今だに責任回避に必死です。彼らの人命軽視、危機感のなさが表面化するような事実は政府にとって極めて「不都合な真実」であり、無茶苦茶なルールであろうと何が何でも「ルール通り」だと言い張り、自らの非を認めることなど決してないのです。

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