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追加のレンズたち2(2021年購入)

 昨年5月以来の投稿となりますが、この7ヶ月で更に増えたレンズのレビュー記事となります。ただ、まだ作例が十分ではないものもあるので、今後も追記予定です。作例は各レンズレビューの冒頭のtwitterの埋め込みだけでなく、関連の記述に画像のリンクを貼っていますので、そちらも適宜ご覧ください!
 なお、これまでの記事一覧・レビュー済レンズの一覧はこちら


1 カール・ツアイス Carl Zeiss

(1) Distagon 35mm f2.8 (MMJ)


 ヤシカ・コンタックスマウントのCarl Zeiss製のレンズ(ヤシコンZeiss)で広角側が欲しくなって購入(35mm/f1.4も50mm/f1.4も高騰し過ぎです汗)。無理のないf値で、同じMMJということで、以前レビューしたヤシコンZeissのSonnar 135mm/f2.8 (MMJ)や以下の(2)のPlanar100mm/f2 (MMJ)と同系統の(時代なりに)高コントラストな描写をしてくれます。

 ボケについてはf2.8なので過度な期待はしない方がいいですが、硬過ぎず適度で、風景を取り込みつつ被写体を撮影するのに十分なものとなっています。

 フレアやゴーストは、冬の午後の日差しを受けると出るには出ますが、狙って出すほどのものではありません。実際、以下の風景の作例の通り、冬の太陽が低い時期に、無理に逆光で撮影しましたが、かるい球状と画面周囲に帯状の虹のフレアが少し出たぐらいです。あまり目立たないので、作品に積極的に活かすのは難しそうです。
 フリンジは、輝度差の高いところで少し出ますが、修正不可能なほどではありません。。

 結論としては、これ単体で是が非でも手に入れなくてはいけないレンズではないのですが、他のヤシコンZeissと同系統の描写をするので、ヤシコンZeissを使っていて、様々な焦点距離で描写を統一したいけれども、広角側にお金をかけたくない人にとっては最適なチョイスだと思います。小さく、持ち運びも便利ですしね。ちなみに、こちらのブログでも、The 無難とされています笑

(2) Planar 100mm f2 (MMJ)

 ある中古販売店さんではヤシコンZeissの中で最も鋭いピントを誇るオールマイティなレンズと称され、一方でこちらのブログでは、その安定性・優秀さゆえに不満のあるレンズともされてもいます。しかも、本レンズは内面反射等の対策が強化され、一層性能が向上したMMJモデルになります。

 特徴としては、時代なりに、高コントラスト・高精細、フリンジが出ない、フレア・ゴーストも抑制されている、といったことでしょう。色もしっかりと出ます。なお、フレア・ゴーストはまあまあ綺麗ですが、ものすごいユニークなものではなく、そのために購入するほどのものではないという評価です。

 自分が手に入れたのも、ヤシコンZeiss Planar 85mm/1.4のハイレベルの代用品となったらいいな、という期待からです(ヤシコンZeiss Planar 85mm/1.4の描写は大好きですが、あの盛大に出るパープル・フリンジは耐えがたいです…)。

 実際、他のZeissレンズとの比較では、性能的にはヤシコンZeiss Planar 85mm/1.4以上コシナ製のPlanar 85mm/f1.4未満ぐらいかと。また、描写傾向としては、Sonnar 135mm/f2.8 (MMJ)に似ていますが、これはMMJだからでしょうか(ヤシコンPlanar 85mm/1.4やPlanar 135mm/2 (AEG)は明らかにフレア気味の腰高な描写です)。なお、フリンジもフレア・ゴーストも時間帯等の条件次第である程度出ますので、期待し過ぎない方が良いかと。すなわち、1980年製造という40年前のレンズにしては優秀といった評価になると思います。

 結論として、こちらのレンズが合う人は、現行レンズは高描写過ぎて苦手で、一方で緩すぎる描写のレンズも嫌だという方でしょう(ヤシコンZeiss Sonnar 135mm/ f2.8と同じですね)。一方で、上記Sonnar 135mmと異なるのが、ある程度のお値段がすることでしょうか。そこまでの値段をかけて、このレンズを手に入れるのかは要検討ですね。ヤシコンZeissに特段のこだわりがなければ、同じ焦点距離・f値のコシナのマクロプラナー100mm/f2(現行モデルはMilvus 100mm/f2)や別メーカーの現代レンズを手に入れた方が幸せかもしれません。

(3) Distagon 35mm f1.4 zf.2

 (準)広角から望遠までコシナ製Carl ZeissレンズのClassicシリーズで描写傾向を合わせたくて購入したレンズとなります。

 描写傾向としては、コシナPlanar85mmと同様に、高コントラストで暖色系の発色となります。また、気になるようなフレア・ゴーストも出ません。

 一方で、こちらのレビューでも指摘されている通り、パープル・フリンジは現代レンズとしては比較的盛大に出ます。加えて、こちらの写真でも、(センサー由来なのかレンズ由来なのか分かりませんが)浴衣の柄の発色が位置によってがらっと変わっております。

 Milvusの発売後にディスコンになったとはいえ、現代Zeissのレンズですので描写は素晴らしいのですが、現行のClassic ラインと特に描写を合わせたいのでなければ、あえて手に入れるほどでもないでしょう。そもそもPlanar50mmや85mmはClassicラインとして生き残っており、また現行のMilvusともレンズ設計が異なるにもかかわらず、本レンズがディスコンになった事実そのものが、Zeissとしては本レンズに満足していなかった証でしょう。

 なお、ヤシコンZeissやレンジファインダー用のzmレンズのDistagonは本レンズと同じ35mm/f1.4というスペックですが、レンズ構成が異なります。描写にどんな違いがあるのかは興味深いですが、特にヤシコンZeissは高騰しまくっており、20万円越えで、比較のためだけには少し手が出ない額です…zmレンズは、レンジファインダー用だけあって、レンズ設計に無理がなく(?)、MTF上の数値は格段に優れていますが、ミラーレスに装着すると、激しい周辺減光が発生するという評価も。それが為に、手放した方もいらっしゃるようです。ただし、どちらの方も評価自体はとても高いので、なおさら気になるレンズです。

(参考:MTFやレンズ構成図)
ヤシコンZeiss 35mm/1.4
コシナDistagon35mm/1.4 (zf)
コシナDistagon35mm/1.4 (zm)
Milvus 35mm/1.4
 ※昔のレンズについては、こちらからMTFデータ等を入手可能です(さすがに戦前・戦後直後のレンズはありませんが、ヤシコンやGレンズのデータも正式サイトから入手できます)。

画像1

(4) Milvus 35mm f1.4

 上記Distagon35mm/f1.4の発展形で、その弱点である色収差(フリンジ)を徹底的に潰したモデルとなります(公式自らが、「ZEISS Milvus1.4/35は、軸上及び倍率色収差を徹底的に見直し、カールツァイスの最高級レンズOtusに匹敵する色収差改善を実現」や「輪郭と輪郭の間の色収差を、ほぼ完全に除去しています」とするほど汗)。
 もちろん、その代償はサイズ・重量に表れます。前モデルのDistagon35mm/1.4は9群11枚(異常部分分散ガラス1枚・非球面レンズ1枚)のレンズで830gでしたが、このレンズは11群14枚(異常部分分散ガラス5枚・非球面レンズ1枚)で1134gと、1kg超え

 描写については、他のMilvusシリーズ、特に新設計の85mmと同じ傾向の、高精細でクリアな寒色系の描写となります。特段気になるフレアやゴーストは出ません。まさに高性能の現代レンズといったところ。ただ、歪曲は周辺部で少し出ます。といっても2%未満ではありますが、レンジファインダー用のzmマウントのDistagonの歪曲がかなり抑えられているだけに、これがフランジバックの長い一眼レフ用レンズの限界かな、とも思います。ミラーレス用のガチンコ新設計のレンズの出現が期待されますね(Sony Eマウント用のBatisはオートフォーカス搭載、Loxiaは携帯性に優れたモデルと、描写に全振りしたものがまだ無いので)。

 結論として、本レンズはZeissの現行の焦点距離35mmのレンズの中では最新・最良となりますので、Zeiss好きならば是非試してみてはいかがでしょうか。
 一方で、こちらの評価の通り、価格が高く・重くかさばり・マニュアルフォーカスなので、万人向きではなく、そんなものにそこまでお金を出すかというお話もありますが…汗

2 ミノルタ Minolta

(1) Auto Rokkor 55mm f1.8 (前期型)


 描写については、既に当方が所有しているMC Rokkor 58mm/f1.4と比べて、f値が少し暗い分だけ、開放では少ししっかりとした描写になります(MC 58mm/f1.4は少しにじむような描写)。
 色彩としては、少し暖色系でしょうか。ミノルタのオールドレンズ(オールドminolta)らしい独特の色合いが楽しめます。
 一方で、フレア・ゴーストはMC 58mm/f1.4と同じような控えめな色合いの虹が出ますが、こちらの方がよりしっかりと、派手に出る印象!秋冬の逆光がとても楽しくなります笑 フリンジもオールドminolta名物のグリーンのものが出ますが、どうしようもなく修正不可能なものは出ない印象です。

 お値段も手頃で、サイズも軽く・小さいので、状態のいいものと出会ったら、即座にキープすることをお勧めします!

画像2

(2) MC Tele Rokkor-PF 100mm f2

 少しレアなマニア向けのレンズ。ネットを漁っても、情報は少ないです。自分もebayで分解・清掃済のものを購入したのですが、これがどこまでオリジナルの状態を反映したものか定かではありません(もしかしたら清掃・再構築の過程で手違いが起こっているかもしれませんし、どこかで再コーティングもされているかもしれません;比較対象がないので、どのような状態がオリジナルか判別できないのです)。

 さて、描写の傾向としては、MC Tele Rokkor 100mm/f2.5の硬調な描写とは大きく異なり、こちらはかなり軟調、繊細でコントラストも低いです。
 色彩は暖色系になります。
 また、フレア・ゴーストについて、内面反射等(?)によるフレアで全体的に浮いた描写となりますが、f2.5モデル等の他のオールドminoltaのように分かりやすいゴーストが出る訳ではありません
 フリンジについては、他のオールドminoltaと比べて、若干出やすいですが、レタッチでなんとかなる範囲ではあります。
 他のオールドminoltaレンズとの比較では、MC 35mm/1.8、MC 58mm/1.2、MC 85mm/1.7、MC 135mm/2.8と同系統の色合い・描写となり、これらのレンズとは違和感が少なく組み合わせ可能です。
 なお、MC 85mm/1.7とは有効口径もレンズ枚数・組み合わせ(群)が同じですが、レンズ設計は異なるようです(85mmがダブルガウス型っぽく、100mmはテレゾナー型っぽい)。

 結論としては、無理をしてまで手に入れるほどの描写ではなく、似たような描写が欲しければ、比較的手に入りやすいMC 85mm/f1.7で十分でしょう(値段ほどのパフォーマンスがあるかは疑問、自分は好きですが)。

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(3) MD 50mm f1.7

 ミノルタのフィルムカメラX700を中古販売店で購入したら、たまたまカメラについてきたレンズ。

 オートフォーカス化前夜の比較的新しいレンズなので、安定した描写をするかと思いきや、テスト撮影ではゴーストは結構出ました(オレンジ色の帯が立ち上がってくる感じ)。

 実戦投入はまだですので、撮影次第、改めてアップします。


(4) MD 135mm f2.8

 オートフォーカス化前夜の比較的新しいレンズ。この時期には、更に明るいf2モデルも出ていたので、本モデルは普及版かと思われます。中古販売店で、良い状態のものがまあまあ手頃な値段で売っていたので、つい購入してしまいました。

 まだがちがちに使いこなしている訳ではありませんが、忠実な色合い・描写で、時代なりにさすがに安定感のある描写。その場の空気感をしっかりと描写してくれます。通常に撮影している分にはフレア・ゴーストも目立ったものは出ません(※2022/1/16追記 冒頭の作例の通り、冬の朝に撮影していたら、綺麗な虹が下方から立ち上がるように出てくれました!)。
 予想以上にパープル・フリンジが出ますが、これはフィルム時代のレンズなので致し方ないですね、レタッチで対処できる範囲です。
 サイズ・重さも、135mm/f2.8というスペックにしては、軽く・コンパクト。

 結論としては、特徴的な描写はなく、ぞっこんに惚れ込むようなものではありません(※2022/1/16追記 そんなことはありませんでした汗。コントラストも色彩も良好で、冬に撮影していると綺麗なフレアも出てくれました)が、値段も手頃で、描写も安定しているので、135mm/2.8をひとまず買っておきたい・バッグに忍ばせておきたいという人にとっては、最適なレンズだと思います。
なお、自分としては、もう少し特徴的な描写をするレンズの方が好みです汗 MDレンズって、だいたいこんな感じで安定感のあるものが多いのでしょうか…

※ 2022/1/3追記 適切な時間・日差しでとても綺麗な虹色のゴーストが出てくれました。135mmでここまで綺麗なゴーストが出るレンズは、自分が持っている限りではPlanar 135mm f2ぐらいなので、それだけで価値のあるレンズだと思います。しかも、1980年代のレンズらしく、色のりもコントラストも十分で、f2.8なので安い!おすすめのレンズかもしれません。

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3 ニコン Nikon

(1) AI Nikkor 50mm f2

 以前ご紹介したNikkor-H 50mm/f2の後継レンズで、4群6枚というダブルガウス型の基本構成を採用した(ニコンのレンズの中では)最終モデル※となります。こちらの記事で、これらのレンズの比較をしておりますので、是非ともご覧ください〜

 さて描写についてですが、1977年と比較的新しい(?)年代のレンズで、開放f値もf2と無理をしていないので、基本的には文句のつけようがありません。解像度・コントラストも良好ですし、昔のモデルと比べるとずいぶんゴースト・フレアも抑えられています。冬の太陽が低い時期に、太陽にむければ、上方から帯状のゴーストが出ますが、これもあえて無理をさせた場合に限ります。
 そのような意味では、他のレンズと比べれば、あまりオールドレンズ的な面白さはないかもしれません汗 ただ、描写の安定感から、フィルムには積極的に使っていきたいですね。

 ちなみに、風景写真は以下の通りです。やはり後年度のコーティングが発展した時代のレンズであるため、無理に太陽を入れるような構図でなければ、目立ったフレア・ゴーストも出なさそうです。また、初代の同じレンズ構成のNikkor-H Auto 50mm f2と比べると、ピントもシャープです。

(2) Nikkor-H Auto 85mm f1.8

 ゴースト・フレアについては、冬の日中ならば、綺麗な虹が出ますし、また、太陽に向ければ、球状の光に加えて、放射線状に虹が広がっていく感じです。一方で冒頭の作例では、立ち上がるような青いフレアが出ており、まだまだ使いこなしに研究が必要ですね汗
 フリンジについては、風景作例(自転車、フリンジ除去してません)の通り、かなり目立つ感じではなさそうです。
 色合いについては、逆光では少し淡いですが、順光では濃密な描写となります。ボケについては、この時代のニコンなので、後ボケは硬い感じがします。

(3) Nikkor-Q Auto 135mm f2.8

 解像度は高くないのですが、コントラストが高く、グラデーションを濃厚に描いてくれるレンズです。

 フレアやゴーストについては、真冬の昼間に風景を普通に撮影しているだけでは派手に出る感じではありません。夕方に真逆光で頑張ってやっと出る感じでしょうか(下の風景作例の通り)。玉ボケも、背景の距離感さえ気をつければ、まあまあ綺麗です!
 なお、フリンジについては、時代なりに出ますが、除去が不可能なほど出る感じではなさそうです。こちらの量販店さんの記事と同じ感想を持ちました。
後ボケは少し硬めです。
 結論としては、他の焦点距離のAuto Nikkorレンズと同系統の硬めの描写でありつつ、コントラスト高く、濃厚にグラデーションに描いてくれるので、Auto Nikkorレンズが好きならば、とてもおススメです!一方で、繊細な描写が好きならばMC Tele Rokkor 135mm/2.8、光を綺麗に捉えたければRollei Sonnar 135mm/ 2.8、濃厚な色とコントラストならばヤシコンSonnar 135mm/2.8がオススメです。

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