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創作童話

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創作した童話を載せています。お読みいただけたら嬉しいです。
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記事一覧

ぼくの名前は茜5

ぼくの名前は茜5

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 この時からぼくたちは、毎年春と秋にある競技会をめざして、毎日練習した。
 朝夕2回のおさんぽの時も、ご主人様の横について歩く。歩きながら道端で、クンクンしないで、公園につくまでまっすぐに歩く。「止まれ」と言われたら「ピッ」と止まる。「走れ」と言われたら走る。合図通りにしないと叱られる。出来ると、ごほうびのおやつをもらった。叱られもしたけど、競技会の練習は、楽しく充実していた

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ぼくの名前は茜4

ぼくの名前は茜4

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いよいよ競技会の日が来た。お出かけ用のハウスに入り、車に乗って1時間すると、広い運動場に降ろされた。みたことのないほどたくさんの人と、犬がいた。ミニピンだけじゃなくて、シェパードやテリアもいた。
 先生は、ぼくに、「いつも通りやればいい」「よーし、よーし。」と言った。
 でもご主人様はちょっといつもと違ってみえた。きんちょうしているみたいだった。
 次がぼくの番になった時にド

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ぼくの名前は茜3

ぼくの名前は茜3

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四月、桜の花も終わり、新緑がまぶしい季節になっていた。街路樹は、萌黄色に光ってみえる。

 うちの庭も、サーモンピンクのジャーマンアイリスの花が満開だ。誇らしげにこっちを見ている。
 ある時、ぼくたちの家に、1人のお客様がやってきた。その人は、ぼくたちのしつけを教えてくれる先生だった。先生は、ぼくたちのご主人様と、なにやら話をしているようだ。
 しばらくすると、ご主人様がやっ

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ぼくの名前は茜2

ぼくの名前は茜2

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ぼくたちミニチュアピンシャーは、ドーベルマンピンシャーとよく似ている。そのために、ドーベルマンピンシャーを小型化したと思われているようだ。でもそれは、少し違っている。古くからドイツにいる、スタンダードピンシャーという中型の狩猟犬をご存じだろうか。2百年から3百年前ぼくたちは、ドーベルマンピンシャーではなく、スタンダードピンシャーを小型に品種改良して作られたのだ。
 ドーベルマ

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ぼくの名前は茜1

ぼくの名前は茜1

ぼくはオスの小型犬で、犬の種類はミニチュアピンシャーである。
 生まれてから今年で、13年になる。
 多くの人は、ミニチュアピンシャーのことを、ミニピンと呼んでいる。
 さらにミニピンは、だいたい3種類の色のタイプに分かれる。ぼくと同じ赤毛の子は、レッドという。黒毛に赤茶色の斑点がある子は、ブラックタン。そして、チョコレート色ベースの子が、チョコレートタンだ。珍しいものでは、ブルーの子もいる。

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