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【こんな映画でした】457.[ユリシーズの瞳]

2022年10月19日 (水曜) [ユリシーズの瞳](1995年 TO VLEMMA TOU ODYSSEA THE LOOK OF ULYSSES ULYSSES' GAZE フランス/イタリア/ギリシャ 170分)

 テオ・アンゲロプロス監督作品。これで国境三部作を見終わった。これが一番、分からなかった。つまりこの三作目は、予備知識がないと分かりづらい作品ということになるのではないか。

 とまれ主役はハーヴェイ・カイテル(撮影当時56歳)で、何本か観てきているので顔は覚えていた。相手役女優は4役あるがすべてマヤ・モルゲンステルン(撮影当時33歳)、初めて。

 監督は言っている。「この作品は今世紀の歴史を扱っているので、フラッシュバックの使用は必須でした。ともあれ、私の考えでは、過去は現在の一部分として絶対必要なものです。過去は忘れ去られておらず、現在において私たちがなすことすべてに影響します。私たちの生活のあらゆる瞬間は、過去と現在、現実と想像から成っており、それらすべてが一つのものに融合しているのです。」(1996年10月のインタビューより、DVDに同封されていたリーフレット所収)

 例えば主人公が故郷に戻ったシーンは、まず1944年のおそらく大晦日。集まってきた人たちで「1945年、おめでとう」と言っている。続くシークエンスで今度は「1948年、おめでとう」となり、さらに「1950年、おめでとう」となるのだ。そもそもオープニングシーンは1954年のことであった。マナキスが青い船を撮影中、息を引き取るところからパンして現在の主人公の映像となる。現在というのは、おそらく1994年のことだろう。あとでカセットテープに録音されたものが再生されるのだが、「1994年12月3日」と聞こえてくる。

 この映画は私たちアジアの人間には、予備知識が必要だろう。それもヨーロッパ史というのでは大きすぎるが、せいぜいユーゴスラビア史(今はもうないが)。ここでの民族紛争の凄まじさは、うっすらとしか知らない。この映画の後の話だが、1999年にNATO軍がここを空爆する事件もあった。

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