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【こんな映画でした】617.[この女たちのすべてを語らないために]

2023年10月27日(金曜) [この女たちのすべてを語らないために](1964年 FOR ATT INTE TALA OM ALLA DESSA KVINNOR All These Women スウェーデン 80分)

 イングマール・ベルイマン監督作品。初カラー作品。コメディ。「偉大なる芸術家」を揶揄するもの。ここでの芸術家はチェリスト、もっとも聞こえてくるのはサンサーンスの「白鳥」ばかりで、演奏シーンはまったく出てこない。俳優も誰が演じているか分からない。なんせ顔を撮さないのだ。手と足(靴)だけなのだ。

 そのカリスマ的存在の男性には、妻と何人かの愛人がおり、同居している。その邸宅に伝記作家の男性が取材のために登場し、狂言回しとなる。

 ところがオープニングシーンは、この偉大なる芸術家の葬儀のシーン。「これらすべての女たち」が順に、彼に最後の別れの言葉を投げかける。もっとも、それはみな同じセリフであった。

 スウェーデン人の名前はなじみがないし、読み方もスウェーデン語読みとそれ以外が混在している。たとえばハリエット・アンデション(Harriet Andersson)は、ハリエット・アンデルセンといった具合である。あと女優陣は、ビビ・アンデショーン(Bibi Andersson)、エヴァ・ダールベック(Eva Dahlbeck)、イェートルド・フリード(Gertrud Fridh)、モーナ・マルム(Mona Malm)、バルブロ・ヨート・アヴ・オルネース(Barbro Hiort Af Ornas )、カーリン・カヴリ(Karin Kavli)。

 男優陣は狂言回しの伝記作家をヤール・キューレ(Jarl Kulle)、ほか秘書や執事にイェーオルイ・フンククヴィスト(Georg Funkquist)、ラース=オウェ・カールベルイ(Lars-Owe Carlber)、アラン・エドヴァル(Allan Edwall)、そして最後に出てくる若いチェリストをカール・ビルクヴィスト(Carl Billquist)。

 なお撮影は有名なスヴェン・ニクヴィスト(Sven Nykvist)。
 芸術というものは、一世一代限りだ。後継者がいて、そっくりそのまま演じられ続けていくというのは、完全には不可能だ。そして悲しいかな、この映画で指摘しているが、必ず彼らはいずれ忘れられる。伝記作家による本は残ったとしても、当の本人は忘れ去られていく。

 私などのような凡人は忘れられていくので、かえって安心である。なまじなことで歴史に名前を残すことになったら大変だ。たいていは「良いこと」でではないのだから。

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