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【こんな映画でした】460.[心中天網島]

2021年11月18日 (木曜) [心中天網島](1969年 103分)

 篠田正浩監督作品。岩下志麻(撮影当時28歳)と中村吉右衛門(撮影当時25歳)とによる。一度映画館で観ていると思うが、忘れている。初めて観るような感じであった。中味は重くしんどい。途中、休憩を入れて観た。

 岩下志麻が紙屋の女房おさん、そして遊女・小春の二役。いかにも女房、いかにも遊女という風情がある。紙屋治兵衛役の吉右衛門はまだ若い感じ。それが功を奏している。どうしようもない馬鹿な男を演じている。

 このような男女間の愛情に関しては、女性のほうが何枚も上手だ。男は叶わない。底が浅いというか、薄っぺらである。悲しいことだが、致し方ない。それにしても女性の情愛は深いものというべきか。

 オープニングシーンが文楽の人形とその人形遣いの人たちが出てくるので、少々驚かされる。人間が演じるはずなのに、と。もっとも、この原作、近松門左衛門のそれがこの人形浄瑠璃のためのものなのだと思い出したのだが。

 そしていよいよ人間の出番。既にラストの結末を予期させるシーンからである。橋の上から覗いてみた男女の心中は、それこそこの二人のものだったのか、はたまた別の二人のものだったのか。判然としなかった。

 いずれにせよこの二人もそのような最期の姿を晒すことになるのだが。ただ女は刀で殺され、男は首を吊って死ぬことに。

 この映画の空間が非現実的なものであるとして、文楽における黒衣が出てくるのと、彼らの居る畳の部分がすべて本物の畳ではなく、あたかもカーペットのようなもので、そこに変体仮名で文字が記されているというもの。何と書いてあるのか、私には分からないのだが。

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